かぎ針で編み物をする朝 haru.×上出遼平【前編】

月曜、朝のさかだち

『月曜、朝のさかだち』シーズン2、第4回目のゲストはテレビディレクター・プロデューサー・作家の上出遼平さんをお迎えしています。この日の朝活は、代々木公園で編み物。haru.さんは普段から編み物をすることがあるそうで、今回はharu.さんを講師に上出さんがかぎ針を使い編み物に挑戦しました。基本的な編み方を教えてもらい、まずは編む練習からスタート。説明しながらクマのストラップにつける小さなマフラーを作るharu.さんを横に、上出さんは少々苦戦……。「力加減が難しくて、ギュンギュンに詰まっちゃう」と、慣れない手の動きに苦戦しながら、「スケジュールもそうだけど、人生もギュンギュンにしちゃうんだよね」と編み物を人生に例えて話す上出さん。ひたすら編み進めると、だんだんとコツを掴んできたのか、「カギを通す輪を探すのに時間がかかってたけど、そこを適当にすることでどんどん進んでいける!」と、短時間で自分なりの編み進め方を習得していました。haru.さんはあっという間にミニマフラーを作り終え、クマにプレゼント。 編みながら人生を振り返ったり、日頃のストレスから離れたりと、編み物の目的や方法は自由。ぜひ皆さんも2025年、編み物に挑戦してみてくださいね。

記事の前編では朝活を振り返りながら、上出さんが2024年12月に俳優の仲野太賀さんと写真家の阿部裕介さんとの旅を記録した本『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』*①についてや旅の裏話をお話しいただきました。
本編へ進む前に、まずは視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!

上出遼平さんに聞きたいコト
Q.人生最良の選択はなんですか!?
A.タバコを吸わなかったこと。
Q.人生最大の挫折、もしくは絶望・失敗などはありますか?
A.全部忘れました。
Q.「これがなきゃダメ」は恋愛的な面もなんですかね?? 大橋さんと過ごす時間について聞きたいです!
A.「この人がいなきゃダメ!」は辛いですよね。依存が深まってしまうので。 「この人がいなくても平気、でもいてくれたらもっと楽しい」くらいがちょうどいいと思います。
Q.1番好きな料理は何ですか?「食」に対してこだわりがあればお伺いしたいです!
A.春巻き。

『MIDNIGHT PIZZA CLUB』の旅のはじまり
haru._今朝は上出さんと編み物をしてきました。かぎ編みという、先がフックみたいになっているかぎ針という一本の棒で編んでいくスタイルの編み物をしたんですけど、上出さんどうでしたか?
上出遼平(以下:上出)_楽しかったです。やったことないと思ってたけど、やっているうちに昔やったことあったなって過去の記憶が少しずつ蘇ってきました。中学生の頃に、当時付き合ってた彼女に白いマフラーを作ろうとしたことがあります。でも、さっき見てもらってわかったと思うけど、ギュンギュンにしちゃうんだよね。
haru._上出さんの癖ですね。編み目をギュッと強く編んじゃうんですよね。「まるで人生のよう」って上出さん言ってた。
上出_スケジュールとかもギュッとしたいんだよね。
haru._そんなイメージがあります。いつもどこかに行ってますよね。
上出_ゆっくりするっていうことを15年ぐらいしていない気がします。
haru._そうなるとルーティンとかって作れるんですか?
上出_ルーティンは全くないです。何時に起きるとかもないし。
haru._朝に白湯を飲むとかもない?
上出_変なホテルに泊まることもしょっちゅうだから無理なんですよね。
haru._私はそういうルーティンに支えられてるところが結構あるんです。同じ時間に起きたり、朝は白湯を飲んだり。あと基本的に同じものを食べることが多いです。
上出_何を食べるの?
haru._パックに入った茹でてある里芋を繰り返し食べることで安心するんです。
上出_里芋を食べ始めたきっかけは?
haru._整体に行ったときに、先生から「あなたは里芋が身体にあってる」って言われて、それから食べています。
上出_そうすると調子いいんだ?そういうルーティンっていいなと思うんだけど、それこそ1週間どこかに行きますってなると崩れちゃうじゃん。それがむしろ怖くならない?
haru._そうですよね……。だから上出さんはそういうルーティンってたぶん無いんだろうなって思っています。
上出_そうなんですよ。これが無きゃダメっていうものを減らしてきた人生なんです。これ無しじゃ不安って、結局不安じゃないですか。そういうものを一つずつ潰していきました。もともと超潔癖だったんですけど、それも一生懸命克服して、今では1週間同じ服を着ています。だからルーティンもないんです。
haru._そんな上出さんなので、今日も編み物っていう朝活をぶつけてみても、たぶん受け入れてくれるだろうなと思ったんです。
上出_めっちゃよかったですよ。難しいけどね。
haru._今日は一番簡単なやつを教えたんですけど(笑)。移動も多いと思うので、移動中にマフラーとか編んでたらすごくいいんじゃないかな。
上出_いいですよね。落ち着くし。メンタルが編み目に出ちゃうじゃないですか。リラックスできてる瞬間はゆったり作れるんですけど、さっきみたいに3人同時に話しかけられるみたいな瞬間にギュギュギュってなっちゃう。そういう心の状況が可視化されるのはいいかもしれないですね。色々作って、後々振り返ったときに、「ああいうときに作ったから、こんな感じなんだな」とかがわかりそうだし、それがおもしろそうだなって思いました。
haru._毛糸の色でも、そのときの気分がわかりますしね。今日は私が上出さんに黄色の毛糸を選んで持ってきました。なぜかと言うと、最近『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』という本を出されたんですけど、その本の表紙が綺麗な黄色なんです。それに合わせて黄色の毛糸を選びました。この本について少し紹介してほしいです。
上出_この本は役者の仲野太賀*②くんと写真家の阿部裕介*③くんと僕との三人で旅サークルを始めたことがきっかけに生まれたんです。僕もそうなんですけど、3人とも学校でサークルとかに所属していなかったので、いまだに憧れがあって。みんな旅が好きだし、阿部ちゃんも僕も山登りをするし、太賀くんもこのチームを作る前に僕と一緒にアラスカに行って山にハマっていたんです。なので山歩きをベースとした旅をするチームを作ろうと、2024年2月に始まりました。 ネパールにランタン谷っていう場所があって、阿部ちゃんがそこに何度も行っているのもあって、僕たちを連れて行ってくれたんです。そのときの珍道中が本になっています。
haru._阿部裕介さんは以前この番組にもゲストで来てくれたことがあるんです。楽しくキックボクシングをしたり、写真を撮るとはどう言うことなのかを真剣にお話ししてくれました。
上出_そもそも僕と阿部ちゃんが出会ったのはharu.のおかげだからね。
haru._そう言っても過言ではないですよね。
上出_それが事実です。
haru._『MIDNIGHT PIZZA CLUB』を読むと、阿部ちゃんと出会ったきっかけも書いてありますよね。2020年に私が上出さんに取材をさせてもらったんですけど、そのときに阿部ちゃんと出会ったということが書かれていて、「そうだった!」って思い出しました。私は大事な瞬間に立ち会ってたんですね。
上出_本当よ。本に書かれている内容は大丈夫だった?
haru._はい。この番組もそうなんですけど、初めましてのゲストに結構無茶なことをさせるのが私は好きなんです。
上出_あ、好きでやってるんだ?
haru._そうなんです(笑)。初めての取材のときも、上出さんと初めましてなのに、雪山に一緒に行ってスノーボードをさせるっていう企画だったんですよね。
上出_10年ぶりとかのスノボでしたよ。
haru._そうでしたよね。いつも変なことをさせちゃってるなと思いながら、あれがきっかけで阿部ちゃんと上出さんは出会ったんですね。
上出_本来自分がやらないことを外圧でやらされるって、その瞬間はどないやねんっていうこともあるけど、振り返るとよかったなってなることばかりですよね。
haru._そう言ってもらえてよかった。でも上出さんって、そういうことを受け入れてくれるような方なんです。『MIDNIGHT PIZZA CLUB』はサークル結成当時から本にすることは決まっていたんですか?
上出_いや、決まってなかったです。結成のきっかけは、僕が今ニューヨークに住んでて、阿部ちゃんがたまたまニューヨークで仕事があるということだったので、ホテルは高いからうちに泊まってて。そしたら太賀くんがノンアポでニューヨークの僕の家に突撃してきたんです。マジでノンアポだったんで、びっくりですよ。それで3人ですごい盛り上がっちゃって、旅をガンガンしていこうぜってなったんです。そのときは基本的には遊びで旅をするだけっていう気持ちだったんですけど、太賀くんも阿部ちゃんも写真が撮れるし、僕も映像や文章でアウトプットできるから、何かしらの形でやろうとなりました。
最終的に、みんな本が好きだから、本を作ろうと決まったんです。僕もそうだけど、みんな本を読んでワクワクして旅に出た経験があるんですよ。それって自分にとってすごく楽しい体験だったから、今度はワクワクさせる側になりたいなっていう思いが三人に共通していて、こういう形になりました。
haru._大成功ですね。旅の記録の本ってたくさんあると思うけど、いつもどこか遠い感覚で読んでるんです。「こんなことができてすごいな」みたいな感じなんですけど、みんなの勢いだったりが上出さんの描写力によって映像を見ているような感覚になりました。まるで自分もチームの一員になったような臨場感で楽しめました。
上出_嬉しいな。
haru._上出さんの文章にあわせて、阿部ちゃんや太賀さんが撮った写真も挿入されていて、文章を読んで想像していたイメージが、実際の写真で見れることで、「こんな感じだったんだ!」って思えてすごく楽しかったです。旅っていいなってすごく思いました。
上出_言われたいこと全部言ってくれました。
haru._一緒にいきたい。友達と旅に行くことを大人になってからあまりやったことがなくて、そういうのもいいのかもなって思いました。しかも遊びを仕事にしちゃう感じとかも、上出さんたちだからできるんだなって思っていて。「もっと気楽に仕事も作っていいよね」っていうのを思い出した感じがしました。
上出_本当に、僕も大人になってからこんなふうに友達と旅をすることなんてなかったし、それは太賀くんが突然家に来るとか、阿部ちゃんが欲望に従順とか、そういういろんな奇跡的な要素が合わさってできたことだなと思います。
haru._プロモーションもすごかったですよね。毎日いろんなところから、『MIDNIGHT PIZZA CLUB』が本を出しますっていう記事が出てたし、ピザ屋さんとのコラボやアパレルが出るとか、多方面に『MIDNIGHT PIZZA CLUB』が轟いていた。この規模感で遊べるのはいいなって思いましたね。
上出_それこそ本職じゃないからできたっていう気もする。やりたいことを全部やったら、やりすぎて、最終的に手がつけられない状態になっちゃったんだけど、そういうふうに見えていたならやってよかった。
haru._見ていてワクワクしました。本にも書いてあるけど、旅にORBISのプロダクトを持って行ってくれてるんですよね。それもあって今日は来てもらいたかったんです。
上出_ヒマラヤって標高が高いからすごく乾燥しているし、日差しが強いんです。山登りって乾燥と日差しが大敵なんですよ。プッシュ式の「オルビス ミスター エッセンスローション」(医薬部外品)*④を持って行ったんですが、化粧水自体の粘度も結構高いから、間違ってちょっとこぼしても大丈夫。旅に持っていくものとして、軽ければ軽い方がいいんですけど、これはワンプッシュで十分だったから、すごく旅に向いているなと思いました。
haru._今後も旅のお供にしてくれますか?
上出_もちのろんです。日焼け止めもめっちゃいいんですよ。太賀くんは連ドラの合間を縫って旅に来ていたので、日焼けをしちゃうと絵として繋がらなくなっちゃうから、日焼け止めをかなり塗っていたんです。ORBISさんの日焼け止め*⑤は白く浮いたりせず、我々大絶賛でした。
限界に追い込まれると出てくる 隠せない人間性がおもしろい
haru._本に出てくる阿部ちゃんのお話がめっちゃおもしろかったです(笑)。衝撃を受けたのが、阿部ちゃんのパートナーのさおりんごさんが3人のために歩きながら食べられる行動食を用意してくださったエピソードがあるじゃないですか。そのお礼に阿部ちゃんがさおりんごさんにPayPayで1万円を送金したっていう。
上出_やばいですよね。山登りでは日が出ているうちになるべく歩かないといけないから、お昼ご飯を食べることってあまりなくて、行動食っていう歩きながら食べられるものを食べるんです。それを今回阿部ちゃんのパートナーのさおりんごが用意してくれたんですけど、出発直前に阿部ちゃんとさおりんごが少し揉めていたらしく、そんななかでも3人分の行動食を用意してくれていたことに阿部ちゃんは感動していたんです。その感謝を伝えたいと、PayPayで1万円を送金してたんですけど、おかしいよね?でも、いいことをしたみたいな顔で言うんですよ。夫婦間でお礼のPayPay送金って、僕は一生ないんじゃないかな……。
haru._そういう、ちょいちょい出てくる仲間たちのエピソードがおもしろくて、声を出して笑いました(笑)。
上出_僕の描写力がどうこうではなく、阿部ちゃんがナチュラルにおもしろいんですよ。
haru._私も阿部ちゃんがさおりんごさんにプロポーズしたときになぜか居合わせていたんです。阿部ちゃんと仕事で五島列島に行っていたんですけど、「今からプロポーズするから撮影終わり」って言われて、プロポーズ直後の写真を私が撮りました(笑)。
上出_しかもさおりんごは現地集合だったんでしょ?普通一緒に行くとかするのに。
haru._私と阿部ちゃんは仕事で行ってたんですよ?
上出_仕事で行ったところに彼女を呼び出してプロポーズでしょう?常軌を逸してますよね。でもピュアですよね。仕事だからこうみたいなことがないんですよね。俺は五島列島が好き。ここを見せたい。プロポーズする。結婚する。PayPayする。ここまで全部繋がってるんですよ。すぐ阿部ちゃんの話になっちゃう。
haru._今日は上出さんの回なのに(笑)。
上出_どうしてもこの本でも太賀くんの話をしたかったんですよ。やっぱ主役だから。
haru._でもみんなが主役って感じがしますよね。阿部ちゃんが若干強めかな。
上出_そうそう。僕がリラックスして書いちゃうと阿部ちゃんが100%になっちゃうから、意識的に太賀くんのことを書いてて。だいぶ阿部ちゃん要素を減らしてこれなんです。
haru._でもバランスのいい3人ですよね。阿部ちゃんがすごく進んでいくのかと思ったら、繊細な面もあって、逆に太賀さんがどんどん行っちゃうみたいな。
上出_そうなのよ。三者三様で、みんなキャラクターが全然違うの。でも唯一、受け入れる体制だけは全員整ってる。それがすごく重要なことなんですよね。その体制が整っていない人が一人でもいるとボロボロになると思う。
haru._上出さんが旅に出るときに大事にしているマインドっていうのはそこですか?
上出_別に意識はしていないんですよ。自分の正解が正解だとは思わないようにするっていうのは、旅だけじゃなくて、ありとあらゆる局面で身についているスタンスだと思うんです。でも3人ともそういうタイプで。僕はいろんな取材を経て身につけてきたけど、彼らは自然とできるんだろうなと思います。
haru._でもみんないろんな現場に行くし、現場にはいろんな人がいますからね。太賀さんも、待ち時間とかも長いだろうから、その間にいろいろ見ているのかも。
上出_グロテスクな世界だからね。それにああやっていろんな役をやっていると、いろんな人の気持ちを自然に考えるようになるんだろうなと思います。自分じゃない誰かを演じるって、教育的にもすごく大事そうだなとぼんやりと思っていました。他者から世界がどう見えているのか、そういうことって演じてみるといろいろと分かるんじゃないかな。
haru._学校でそういう授業がもっとあったらいいですよね。
上出_そう思う。ロールプレイングって国によっては学校でやるじゃないですか。ドイツではなかったですか?
haru._ありましたね。
上出_でも日本でもやるよね。学芸会とか。
haru._確かにそうですね。でも私は人間の役が回ってこなくて、風と木ならやったことある。自分でやるだけじゃなくて、知ってる人が演劇をして全然違う姿になるのを見て衝撃を受けたりもするんです。目の前の人を知った気になりがちだけど、いろんな表情をするんだなとか思って、人の演劇を見るのもいいなと思います。
上出_しかも、それまで見てたその人っていうのは、一個の人を演じている形でしかないっていうこともきっとあるもんね。100%ピュアなその人っていうのは、どうしたって出てこないわけだから。
haru._多面体ですよね。旅の間二人とずっと一緒じゃないですか。そのなかで新しい一面って見つけましたか?
上出_「そんなやつだったのか!」みたいなのはないけど、標高が高くなって頭が痛いとか、足が痛いとかなっていくと、余裕がなくなって演じたい自分を演じられなくなる。そうなってくるといろんな部分が出てきておもしろいんだよね。僕は本を書くから、早くこいつらの人間的な部分が出てこいと思って見てる。だから旅はおもしろいよね。仲良くなるし。
haru._『MIDNIGHT PIZZA CLUB』として2回目ももう行ってるんですよね?
上出_そうそう。第一弾でネパールに行って、第二弾ではアメリカのある山域を歩きました。第二弾は本当に悪夢のような1週間でしたよ。
haru._それもまた本にまとまるんですか?
上出_まとまります。もうすでに講談社からは締切に関して連絡が来ています。
haru._楽しみだな。
上出_全然違う旅でしたよ。第二弾は本当に辛くて、太賀くんブチギレてる。全く雪がないと思ってたら、お腹ぐらいまで雪が積もってたっていう出発だったんです。ネパールは阿部ちゃんプレゼンツだったんですけど、アメリカは僕がプレゼンツだったんですよ。僕が二人に「雪はないから大丈夫」って言っていたのに、山に近づくにつれて景色がだんだん白くなっていくのを見て震えていました。スニーカーで来ちゃってたから、毎晩凍傷になるんじゃないかって思うくらい寒かったです。
haru._今回もさおりんごさんの行動食はあるんですか?
上出_あります。それなしじゃ僕たち歩けなくなってるので。
haru._食べ物の描写もすごく好きでした。宿でのご飯のことも細かく書かれていますよね。
上出_旅とご飯って大切だからね。
haru._上出さんといえばご飯っていうイメージもあるので。アップルモモめっちゃ気になっています。
上出_めっちゃうまいんですよ。モモっていうのはチベット文化圏の伝統料理で、一口餃子みたいなやつ。ベジモモとかビーフモモとかいろんな種類があるんだけど、アップルモモっていうやつがあったので頼んでみたんです。そしたらそれだけ一口サイズじゃなくてめっちゃ大きくて。擦りりんごと角切りりんごが入ったモモを揚げたもの。外はカリッとしてるんだけど、生地はモチモチ。それがすごく美味しかったんです。
haru._めっちゃ食べたい。
上出_この前やった出版イベントで原宿のPIZZA SLICE*⑥さんとのコラボレーションで再現してもらったやつを出したんです。みんなが食べやすいように小さめにしたんですけど、再現度もすごく高くて、すぐに売り切れちゃいました。作るのは難しくないから、やってみてもいいかもね。
haru._餃子生地にりんごを入れて揚げればいいのかな?
上出_薄いフライパンで揚げる感じ。山奥の民宿だから食材がすごく限られているんですよ。どの宿も同じ食材しかないんだけど、それぞれいろんな料理を作っていて。甘いものを作りたいと思ったときに、モモっていう伝統料理を工夫したんだろうね。スニッカーズモモっていうのもあった。カロリー爆弾ですよね。
haru._スニッカーズはあるんですね。
上出_不思議ですよね。
haru._りんごは他の料理にも使われているんですか?
上出_西洋のお客さんが多いからだと思うんですけど、オートミールをお粥みたいにして、角切りのりんごとハチミツをのせたものがありましたね。りんごは保存がきくので結構使われていましたね。
haru._キッチンがめっちゃ綺麗なのも、「そうなんだ!」と思いました。
上出_びっくりした!毎日いろんな山小屋に行くんだけど、どこもキッチンがすごく綺麗だったの。棚に食器類がずらっと並んでるんだけど、嘘かと思うくらい綺麗に並んでるんですよ。でも、全部使い古されている食器たちっていうのが、みたことない光景だった。食器屋さんとかに行って綺麗に並べられてるものって、全部新品じゃないですか。でも、山小屋に並べられてる食器たちは色が剥げてたりしてるんだけど、真横の窓から入ってくる光に照らされててめっちゃ綺麗でした。
haru._キッチンは綺麗にしておくっていうこだわりがあるんですかね。
上出_でも確かに、山に関するものって整理整頓されていることが多いんですよね。散らかっていると、すぐに必要なものが出てこないなどのリスクがあるかもしれない。それに、本当に必要なものしかそこにはないから、散らかしてられないってこともあるのかも。
haru._散らかりようがないんですね。まじで『MIDNIGHT PIZZA CLUB』、何冊も出してほしい。
上出_一生出します。これでさ、50歳とか60歳になっても出せたらいいよね。ジジイの旅。
haru._だんだんこっちが本職みたいになっちゃうかも(笑)。これからも『MIDNIGHT PIZZA CLUB』は続いていくということなので、ぜひ皆さんも最初の一冊を手に取ってほしいですね。
対談記事は後編に続きます。後編では、生活の拠点をニューヨークに移した上出さんのニューヨークでの暮らしについて、長年テレビ局で勤めていた上出さんが考える自分の幸せなキャリアと人生についてたっぷりお話しいただきました。2人の対談はPodcastでも配信中ですので、あわせて楽しんでみてください。
それでは今週も、行ってらっしゃい。
俳優・仲野太賀、TVディレクター・上出遼平、写真家・阿部裕介による旅本シリーズ第一弾。「ミッドナイト・ピッツァ・クラブ(MPC)」――真冬のニューヨークで天啓がごとく授かった名に導かれるようにして旅立った3人。ネパールはランタン谷を歩く一週間がはじまった。カトマンズを爆走する四輪駆動車、激痛を生む毒の葉、標高2440mにあるホットシャワー、地震で一度壊滅した村で韻を踏み続ける青年、ヒマラヤの甘露「アップルモモ」、回転するマニ車、見え隠れする陰謀の影(!?)数々の危機を乗り越え、出会いと別れを繰り返した先、3人を待ち受けていた光景とは――?これは、食って歩いて歌って寝て、泣いて笑って怒り狂う男たちの、汗と泥と愛にまみれた旅物語。(講談社)
*②仲野太賀
1993年東京都生まれ。俳優。2006年デビュー。連続テレビ小説「虎に翼」でヒロインの夫・佐田優三役を演じて大きな注目を浴び、その後「新宿野戦病院」で主演の高峰亨役を演じて話題に。近年の主な出演作に、ドラマ「いちばんすきな花」、「初恋の悪魔」、「拾われた男」、映画『十一人の賊軍』、『すばらしき世界』、『あの頃。』など。待機作に映画『本心』、『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』がある。2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」では主演を務める。
*③阿部裕介
1989年東京都生まれ。写真家。青山学院大学経営学部卒業。大学在学中よりアジア、ヨーロッパを旅する。旅で得た情報を頼りに、ネパール大地震の被災地支援(2015年)、女性強制労働問題「ライ麦畑にかこまれて」や、パキスタンの辺境に住む人々の普遍的な生活「清く美しく、そして強く」を対象に撮影している。日本での活動に、家族写真のシリーズ「ある家族」がある。
▼『月曜、朝のさかだち』阿部裕介さん出演回の記事はこちら
https://corp.orbis.co.jp/article/gas05/
https://corp.orbis.co.jp/article/gas06/
*④オルビス ミスター エッセンスローション(医薬部外品)
※ニキビ・肌荒れを防ぐ
オルビスから提供させていただきました。
https://www.orbis.co.jp/small/15010202/?adid=orbisis
*⑤ORBISの日焼け止め
販売名:オルビス リンクル ブライト UV プロテクター
※シワを改善する、美白=メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ
オルビスから提供させていただきました。
https://www.orbis.co.jp/small/1161018/?adid=orbisis
*⑥PIZZA SLICE
床に白いタイルの装飾をあしらい、木のテーブルを配した開放感のある店内で、スライスしたアメリカンピザを堪能できる店。東京都渋谷区神宮前5-17-25 B1F
Profile
上出遼平
1989年東京都生まれ。テレビディレクター、プロデューサー、作家。2011年にテレビ東京に入社。ドキュメンタリー番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画・演出から撮影、編集と、制作の全工程を手掛ける。2019年に同番組7月15日放送分が第57回ギャラクシー賞優秀賞を受賞。幅広いジャンルで才能を発揮している。著書に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』『歩山録』『ありえない仕事術正しい“正義”の使い方』がある。