自分を客観視できて開かれる道がある 近藤春菜

ことなるわたしたち

アーティスト山瀬まゆみがファシリテーターを務める「ことなるわたしたち」。今回のゲストはバラエティだけでなく、多くの番組で活躍をする芸人、近藤春菜さん。山瀬の知らないところで実は近藤さんが作品やコラボアイテムをご購入されているという事実を聞きつけ、対談をオファー。プライベートの時間で山瀬との繋がりを持った近藤さんの素顔に迫る。
直感、感覚を大事に、好きなものを広げていく

近藤春菜(以降 近藤)_私が山瀬さんのことを知ったのは、Instagramだったと思います。ちょうどその頃、引っ越して、新しい家に絵を飾りたいなと思ったのがきっかけで。絵も、字とかもすごいかわいいなと思って。その後、ナイキさんとか、いろんなブランドさんと洋服のコラボレーションもされている方なんだっていうのも知って。個展にも伺わせてもらって、コラボレーションされている洋服もネットでいくつか購入させてもらいました。最近は「This is never that」の店舗で山瀬さんの絵をシルクスクリーンできるワークショップがあると知って、これ行きたいって思って(笑)、実際行ってきたんですよ。
山瀬まゆみ(以降 山瀬)_そこのギャラリーの人、びっくりしてました。本人きた!って連絡いただいて(笑)。私もびっくりしました。
近藤_その場で洋服に自分でポイントを決めてシルクを刷るんですけど、センスを問われるというか。でも自分の好きな感じで、自分を信じようって思って。異様な緊張感がありましたね(笑)。

近藤_私はあまりアートに詳しくないので、山瀬さんの作品はピュアな気持ちで素直に可愛いと感じて、好きになりました。ミュージシャンでもアーティストでも、私はファンになってしまうと色々と掘り下げてはいくので、事前情報もあまりなくて。むしろ先入観もないところから向き合うことが多いので、直感というか感覚的に出会って、そこからファンになっていくって感じなんですね。

山瀬_作品から好きになってもらえるなんて、すごく嬉しいです。アーティストはもちろん作品を観てもらうものですが、自分自身がメディアに出ていく機会も多々あるので、今の時代は作品との出合いはさまざまあると思うんです。それこそ、この連載もそうですが、絵を描く仕事ではなくても私が今までやっていた編集という経歴も繋がって“山瀬まゆみ”として引き受ける事もありますし。一時は自分が出ていくことに葛藤を持っていたこともありましたし、もちろん周りの反応を気にしてしまうこともあります。でも、そういう考え方をそもそもなくした、フラットな世界にしていきたいとは思いますよね。近藤さんは芸人というお仕事をされていて、葛藤のようなものを感じたことはありますか?
女性が少ない世界はプラスに働く。自分をどれだけ客観視できるかが重要

近藤_葛藤と呼べるか分かりませんけど、“この世界は男性社会だから女性が少なくて大変でしょ?”って聞かれることがあるんですけど、むしろ私は、それがプラスに働いているところがあると思うんです。そもそも女性というだけで目立つっていうのがあって。私もはるか(箕輪はるか)も、養成所の頃から注目はされていました。
そもそも、養成所に入った時、同じ年に700人入学した中で、女性は20名くらいしかいなかったんですね。最初、男性と女性は別のクラスに分けられていて、最初はそこにはるかはいなかったんですよ。何日か経ってから、自分たちのクラスに新しく入ってきたのがはるかで。この人なんだろうって思ってたら、体型もあってか、東南アジアから来た留学生の男の子みたいな見た目をしてたんで、事務所の人に男だと思われて、男の人しかいないクラスに入れられてたんですよ(笑)。

山瀬_え、事務所の人にはるかさん、言わなかったんですか?
近藤_いや、言ったらしいんですけど、“あなたは男性ですよ”って。いや、なんで自分のことをあなたに言われなきゃいけないのって。自分が1番自分を知ってるのにって(笑)。でもしばらくそのままだったらしく(笑)。やっぱお笑いの学校だなっていうか。すごいなって。
男性女性というよりも、自分をどれだけ客観視して、理解して、自分のキャラクターに合った答えとかを出せるか、そんな世界なので。男女というより、あなたは自分のことをわかってますか? っていうことが一番大事な世界なんじゃないかなって思っています。
それって周りから教えてもらうこともいっぱいあって。私も養成所に入ったばかりの時に、1個上のスタッフもされていた先輩から、 “そこのおばちゃん”って指されたことがあって。当時私は20歳でしたし、もちろんそんなことこれまで言われたことなかったから、誰のこと? みたいな感じで。 “いや、私な?”って(笑)、突っ込みだした時に、 他人からはこうやって見えているんだな、っていうのを知るようになるっていう。
起きた出来事は、自分の受け止め方、切り替え方次第

山瀬_でも、そうやって最初に“おばちゃん”って言われたら、まずはショックを受けるのが普通の気持ちじゃないかな、って思うんですけど。お笑いって、そういうところに挑める強い心があるのがすごいところだなって思うんですが、そういうことをすぐ受け入れるまでには色々と葛藤があったんですか? それとも、すでに持っていたものだったんですか?
近藤_ 私は子どもの頃から人が笑ってくれたり、面白いって言ってくれることに、快感を覚えるくらい嬉しくて。ただ、子ども同士の関わり方って言葉にフィルターかけないから、ちょっとぽっちゃりしてた私に対して男子から“ブタ”って言われた事もあったし。それは嫌だなっていうのはあったんですよ。それに気づいた先生が、帰りの会で、“近藤さんはブタじゃありません”っていうんですよ。それ、わかってるよって(笑)。子どもの頃は本当に嫌でしたよ。

でも、“お笑い”に出合って、それを自分のアイデンティティとまでは言わないものの、なんて言うんですかね、自分の個性として受け入れて、返した時にこんなに人が笑うんだ、みたいな。なんか嫌だったものがプラスに変わるみたいなものを体験した時に、面白いなっていうか。そういう考え方に変換できるようになって、良かったなって思うんです。 何事も捉え方次第というか、受け止め方次第だし、切り替え方次第なんです。嫌なことが起こっても、これがあるから次のいいことがあるのだとか、思えるじゃないですか。そう学べた芸人という仕事は最高だなって、今思っています。
――後編に続く
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今日の一皿

山瀬が、フリーランスで編集者の仕事をしていた20代の頃、頻繁に通っていたBar&リカーショップ「418KAMIYAMA LiquorStore & Bar」。2年前のリニューアルに伴い、ショップロゴは山瀬が描きおろした。店内にはコラボレーションTシャツやスウェットも。クラフトビールのラインナップはかなり幅広い。今回は人気チーズバーガーを食べながらの対談となった。店内でタップビールやワインなどを飲めるカウンターもあり。

Profile
近藤春菜 Haruna Kondo
2003年、相方「箕輪はるか」とハリセンボンを結成し2004年にデビュー。 「M-1グランプリ」で2007年と2009年に決勝進出を果たす。 NHK「土スタ」、TBS「モニタリング」を始め、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」、「悪女」/ テレビ朝日「星降る夜に」/TBS「ラストマン」/テレビ東京「ブラックポストマン」等、 バラエティや俳優の幅広い分野で活動している。
山瀬まゆみ Mayumi Yamase
1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。。