2025.1.29

“やらなきゃ”よりも“やりたい”を伝えたい 近藤春菜

PROJECT

ことなるわたしたち

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

アーティスト山瀬まゆみがファシリテーターを務める「ことなるわたしたち」。芸人の近藤春菜さんを迎えた二人の対談の前編はこちらから。後編は、芸人として、アーティストとして、共通する表現者としての仕事への考え、関わり方を語り合う。

SNSを始めて広がった表現の場

山瀬まゆみ(以降 山瀬)_私にとってのInstagramは、自分の活動情報を発信していく役割でポストしていることが多いんですけど、その先にこうして春菜さんがたまたま見つけてくださって、出会うことができて、お話しできる機会も得られた。春菜さんはInstagramを表現の場のひとつとして使っているようですね。コンテンツとしてテレビなど他のメディアとの線引きはしているんですか?

近藤春菜(以降 近藤)_Instagramはコロナ禍になってトークライブができなくなってしまった代わりとして、インスタライブを活用することがきっかけで始めました。SNSにはテレビとは違う繋がりが広がる可能性を感じたので。はじめた当時、たまたま友人周りで、深夜の授乳タイムが本当に大変だっていう話を聞くようになったんです。深夜に孤独を感じてしまって、社会と閉ざされているような気がするというある母親たちの話を聞いて。それで深夜の2~3時とかに “授乳ライブ”っていうのを始めてみたんです。そしたら、コメント欄で、ママたちがコミュニケーションを取るようになったり、卒乳された方が別のママさんにアドバイスをコメントで書いてくれたりして。私のアカウントを通してフォロワーさん同士で繋がっていくっていう実感があって、やってみてすごい良かったなと思って。

山瀬_その反応は嬉しいですね。YouTubeを同時に始めなかった理由はあったんですか?

自分たちの性分に合わないことは無理しないと決めた

近藤_YouTubeは再生回数とか、フォロワー数とか、そういう数字に囚われるのが自分たちの性格に合わないと思っていました。本職にも影響が出てしまいそうと思ってしまって。なので、いざYouTubeを始めるときには数字に囚われないやり方をすればいいんじゃないかってところがスタート地点でした。それで、はるかと二人で話し合って始めることにしました。
バラエティは用意してくれてる場所があって、求められてる自分のキャラクターを理解し、やっていくという感じなんです。そこがSNSとは全然違うから、どちらもすごい好きですね。今はいろんな表現の場があって、ありがたいなと思っています。

山瀬_私の仕事は絵を描くことなので、自分が作品を作っている時はとにかく、どれだけ自分が正直に作品と向き合えるか、というのが重要で。オーディエンスのことを考えて作品を作るという経験があまりないんですよね。基本的に制作中は自分との対話が多いので。性格としても、自分がこう思ったら、こう言うんだっていう気持ちが強くて。生真面目というか、なんか曲がったことがあまり好きじゃないので、例えば誰かが自分にとって全然理解できないことを言ってきたら、ちゃんとそこは話し合うなりして、納得したいと思ってしまいます。

近藤_そのスタイルはすごいかっこいいな、って思います。自分の意見で突き進んでいて。それって、海外生活みたいのも関係しますか?

山瀬_元々の性格の方が強いですかね。でも、海外経験も少しは影響しているかもしれません。春菜さんは性格的にはどうですか?

近藤_私は性格で言うと、山瀬さんとは真逆で、子どもの頃からはあんまり意見を言えないタイプなんです。本当に気が小さいんで。だから養成所に入るときも、勇気を出してえいやって感じでした。 でもそんなノミの心臓だからこそ気づけるところもあって、ツッコミ役としては役立っているんです。

「スッキリ」出演の5年間は、自分と向き合って自分の言葉を伝えられた時期

山瀬_ノミの心臓(笑)。そういう性格から、情報番組のMCをするのは大変だったんじゃないんですか? ある種、自分の意見を伝えることが仕事のようなものですよね?

近藤_本当に大変でした。ただ、5年間続けて良かったと思うことは、自分と向き合うようになれたことです。バラエティだと自分の意見と真逆でも、面白い方に舵を切ることがあるんですけど、情報番組はそうじゃない。自分はどう思ってるのか。なにかあったときに、じゃあ私は誰に寄り添いたいと思うのか。そういう風に、自分はどうなの? って問うようにすることがすごく多くなりました。自分の考えとか、自分の言葉っていうのが、不可欠で、だからこそ自分を理解できるようになったのは大きかったですね。

根拠はない。でも確信的な自信があった中学時代

山瀬_でも、いまだにノミの心臓なんですよね?(笑)。そうおっしゃるわりには、バラエティだけにとらわれず、テレビでも、SNSでも、チャレンジの場を広げて、表現の場を増やしているから、やっぱり度胸を感じてしまうのですが。

近藤_気が小さいくせに、 面白い、これが好き、という気持ちが超えてくると、すぐ“やります”ってなっちゃうんですよ(笑)。それから、昔から変に自信を持っているところもあって。中学生の時に、何のツテも根拠もないのに、芸人になるって思っていたし、なんの根拠もないのに、安室奈美恵さんには仕事で会うって思っていた。でも確信的なくらい、自信があったんですよ(笑)。結果、どちらも実現できたので。

山瀬_なんかもう、すごいですね。言霊みたいな感じですね!

近藤_想いが強ければ、叶うんだなって。

山瀬_それでいうと、今まだ叶ってないけど、この先の確信的な強い気持ちってあるんですか?

近藤_え、確信的な?(笑)。かなり大きなことを言ってしまいますけど、お仕事で言うと、いつか紅白の司会をしたいと思ってます。

山瀬_春菜さんなら全然ありそうな話に聞こえますけど?

近藤_いやいや。今の事務所の社長から、いつか春菜さんに紅白の司会をやってほしいんですよ、って初めて言ってもらった時は “そんなんできるわけないじゃん、言ってらぁ”って思ったんです。でも、できるならやってみたいって、だんだんと思うようになって。

近藤_大好きな音楽の番組ですし、祖父母、3世代で見てきた日本のお祭りみたいな番組なので、その司会ができるなんてすごいことだなって。それで、この世界にいるなら0ではないよな、みたいな考えに次第になってきて。こんな私にそんな大それた事をいつかやってほしいって言ってくれる人に、「できましたよ」そう言いたい気持ちが生まれてきたんです。どういう形かわかんないですけど、いつかできたらいいなって思ってます。

背伸びをするなら、本当にやりたいと思ったことへ気持ちを向ける

山瀬_夢というか、想像する未来がなににも囚われてないのが凄いですよね。バラエティだけではなく、垣根を超えた夢のスケールもあって。

近藤_ある時から、こうあるべき、ということに囚われすぎなくてもいいじゃんって思えるようになったんです。これはコロナの影響も大きかったかもしれません。自分で発信できるもの、表現する場所が増えて、いろんな形で笑いって届けられるし、自分が楽しくて、無理じゃないやり方もある。バラエティ番組のMCをやる、冠番組を持たせていただく。これはとてもありがたいのですが、一方で、自分が自由にできることをやる、その感覚の大切さにも気づけたので。

山瀬_死ぬまでには紅白の司会はやってみたいんですね?

近藤_バラエティの司会とはちょっとまたひとつ違う、夢の舞台じゃないですか。でも恥ずかしいから、ずっと言ってなかったけど。

山瀬_でも、実際に言葉にして発するって大事じゃないですか?

近藤_そうですね。自分でもそう思います。この人に会いたいって思うだけではなく、この人が好きって言ってたら、お会いできる環境に少しでも近づけると思うんです。今日の取材も、自分の好きなアーティストの山瀬さんに会えて、ありがたいです。だから好きっていうこと、ポジティブなことを発信するってめっちゃ大事だと思います。 誰かが絶対、頭の片隅に残してくれるじゃないですか。引き寄せられていく感じ。そういうのを信じていきたいですね。


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Profile

近藤春菜 Haruna Kondo

2003年、相方「箕輪はるか」とハリセンボンを結成し2004年にデビュー。 「M-1グランプリ」で2007年と2009年に決勝進出を果たす。 NHK「土スタ」、TBS「モニタリング」を始め、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」、「悪女」/ テレビ朝日「星降る夜に」/TBS「ラストマン」/テレビ東京「ブラックポストマン」等、 バラエティや俳優の幅広い分野で活動している。

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。。

Photo Taro Hirano / Text Chie Arakawa / Edit Chie Arakawa, Ryo Muramatsu

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