代表小林と取締役中俣が語る、事業と組織の両輪で改革を続けるオルビスが目指す「働きがいのある組織」とは
JOB&CULTURE
2018年から第二期創業期としてリブランディングを行い、事業と組織の両面で大胆な改革を進めてきたオルビス。事業面では、スキンケアに特化した「ビューティーブランド」として、組織面では、「未来志向」で「オープンマインド」なカルチャーの実現に向けて、共に“組織全体の構造改革”に取り組んできました。
リブランディングにて、ブランドのパーセプションチェンジ(消費者の認識変化)を経たオルビスが目指す次のステージは、お客様とさらに「深く、長い」関係を構築すること。さらなる顧客価値の最大化を目指し、組織・事業の構造改革をよりスピーディーに推進するため、2023年には取締役(戦略人事・DX推進担当)として中俣博之氏が就任。
代表小林と、取締役(戦略人事・DX推進担当) の中俣が、オルビスが抱える組織課題とその解決の糸口について、オルビスの現在と未来を見据えながら語り合います。
“組織の強さ”がこれからのオルビスの成長のカギ
――まずは、中俣さんがオルビスに参画した経緯をお聞かせください。
小林:構造改革の成果が出始めたタイミングで、さらなるドライブをかけられるような強さを持つ必要性を感じていました。完成度が高い戦略をいかに組織全体で実行に移すか、スピード感やその精度を上げることといった組織のエグゼキューション(実行力)を強化したかったんです。
目的は、経営戦略と組織のエグゼキューションを密接に結び付け、成果創出すること。そのため経営全体を見て組織をどうしていくべきかを意思決定できる経営人材を迎えたいと考えたとき、中俣さんの名前が浮かびました。経営だけではなく複数社の社外取締役も担い、多方面にわたる広い知見と経験を持つ中俣さんにジョインいただければ、成し遂げたいことが実現できると確信してオファーしたんです。
中俣:話をいただいた時は正直驚きましたが、オルビスの抱える課題や今後のビジョンを聞いて、すぐに興味を持ちました。
ジョインを決めた理由は3つあって。まず、創業から37年目を迎える伝統ある企業がベンチャー出身の私に声を掛けてくれたことに本気度を感じました。単なる表面的な変革のアピールではなく、本当に新しいことにチャレンジする覚悟が感じられたのです。
次に、経営陣との対話で若さと勢いを感じたこと。オルビスの役員や部長層と話をした時、予想以上に若く、エネルギッシュな印象を受けました。この若さと勢いが、私のような外部の人間を受け入れ、新しい変革を実現できる土壌になると確信しました。
最後に、実際オルビスの商品を使ってみて、その価値を体感したこと。単なるビジネスではなく、人々の生活を豊かにする価値を提供している会社だと実感できたんです。
――ここ1~2年で、組織として成長したと感じる点は?
小林:組織が「目的と成果ドリブンなマインドセット」を強く持つようになったことです。会議やSlackでのやり取りも、目的や成果に向けてストレートに進むようになりました。以前は様々な調整や配慮が必要だった場面でも、今では全員が同じ目的に向かって直線的に進むことができています。
特に重要だと感じているのは、「タスクコンフリクトとリレーションコンフリクトを混同しない」という考え方が組織に浸透してきたこと。タスクに関して異なる意見をぶつけ合うことは大歓迎ですが、それが人間関係の対立につながることは避けたい。この区別が明確になったことで、より建設的な議論ができるようになりました。
中俣:私から見ても、オルビスは社内の雰囲気がとても良いと感じます。良い会社は雰囲気が良く、それは業績の伸びとも密接に関係しています。オルビスは今、その好循環に入っている。
特にオルビスのビジネスモデルや企業文化を考えると、この循環は非常に重要。顧客に価値を提供し、喜んでいただくことが直接的に業績につながる。その実感が社員のモチベーションを高め、さらなる顧客価値の創出につながっていく。この文化が根付いてきていることを強く肌で感じています。
――組織力強化のためには、優秀なリーダーの存在が欠かせませんが、重視しているマインドセットはありますか?
小林:ポテンシャルのある人材には積極的にチャンスを与えていきたいと思っています。特に、「自分事化」ができる人、つまり責任感が強く、自分でコントロールできる部分を見極めて改善できる人材は、ポテンシャルが高いと判断しています。
経営者の間でよく使われる「雨が降るのも自分のせい」という言葉があって。これは、雨が降ったことで来客数が減り、業績が上がらなかったことを外部環境のせいにせず、自分でコントロールできる部分を最大限活用して成果を出す姿勢を表しています。このような「自分事化」のマインドセットを持つ人は、論理的に問題を分析し、改善策を見出す能力が高いと捉えていますね。
中俣:私が注目しているのは、エネルギーレベルの高い人。周囲を巻き込み、ポジティブな循環を生み出せる人こそ、リーダーの素質があると考えます。 もう少し解像度高く説明すると、その人の周りに自然と人が集まってくる、会議でみんながその人の発言を注目して聞いている、といった特徴がありますね。自分でエネルギーを生み出し、それを周囲に分け与えられる人。つまり、人の心に火を灯せる人。そういう人がリーダーになることで、組織全体のエネルギーレベルが上がり、結果として業績向上にもつながっていくと思います。
成長を加速させていく“新しい教育プログラム”とは
――人材育成のための新しい教育プログラムを導入するそうですね。具体的な内容と、育成に注力する背景もあわせて聞かせてください。
中俣:さらなる組織力強化のため、現在マネジメントキャンプ(以下マネキャン)という新しい取り組みを始めています。これは、マネジメント経験のない人材に1年間の短期集中でマネジメントにチャレンジしてもらう制度です。
具体的には、マネジメントの潜在能力がありそうな人材を選び、アシスタントマネジャーという役職で実際のマネジメント業務を経験してもらいます。その過程で、HRチームが定期的にフィードバックを行い、成長をサポートするだけでなく、経営陣も含めて会社全体でこの取り組みを支援していく仕組みです。
小林:マネキャンへの期待は非常に大きいですね。これからの時代、組織力の重要性がますます高まっていくと考えています。AI時代において、戦略の差別化が難しくなる中、組織力こそが競争優位の源泉になると考えています。
かつての日本型経営では、年功序列や終身雇用のもと、戦略の重要性が圧倒的に高かった。しかし、AIやチャットGPTの登場により、情報の非対称性が急速に失われつつあります。そうなると、戦略レベルの差異化が難しくなり、むしろ組織の強さこそが勝負を分けることになると感じています。
つまり、優秀なマネジャーを育成し、強い組織を作ることが、オルビスが選ばれ続けるための必須条件なのです。マネキャンは、まさにこの課題に正面から取り組む施策だと考えています。
――従来の人材育成プログラムとの一番の違いはどの辺りでしょうか?
中俣:今までのオルビスはマネジメントを任せられるという確信がある社員をマネジャーに任命していたのですが、この考えを捨てます。マネキャンの特徴的な点は、「アサインファースト」という考え方を採用していること。ここが最重要ポイントです。つまり、まずはチャレンジの機会を与え、そこから成長を促すというアプローチです。
人は実際にやってみないと、リーダーとしての適性はわからない。だからこそ、可能性のある人材には積極的にチャンスを与え、その過程で成長を促していくべきだと考えます。もちろん、リスクはあります。でも、成功する確率が失敗する確率をわずかでも上回っていれば、そこには挑戦する価値があると信じています。問題が起きたとしても、それを解決していく過程こそが、真の成長につながると。
小林:ポテンシャルのある人材の育成には力を入れていくべきですね。教育に力を入れる理由は、変数要素の強い「人(従業員)」が最終的には企業競争力の源泉になると考えているからです。戦略や技術は模倣されやすくなっていますが、人材の質と組織力は簡単には真似できません。だからこそ、人材育成と組織改革に注力しているのです。
――オルビスへ入社する方へ期待することや、伝えたい想いはありますか?
小林:中途入社の方を含むすべての社員に求めることは、「自分事化」ができること、顧客解像度を高められること、そしてバリューチェーン全体を見渡せる視点を持つことです。特に中途入社の方には、専門性を活かしつつ、会社全体の価値向上にどう貢献できるかを考えてほしいですね。
中俣:そうですね。中途入社の方にはより専門性や経験を期待する部分はありますが、その専門性をいかにオルビスのバリューチェーンの中で活かせるかを常に考えてほしいと思います。自分の担当領域だけでなく、その前後の工程も含めて全体最適を考えられる人材が、真の意味で会社に貢献できるのだと考えています。
また、顧客解像度を高めるという点は特に重要です。オルビスの目的は顧客価値の創出にあります。そのためには、お客様のことを深く理解し、その悩みや願望に寄り添うことが不可欠です。どんな職種であっても、最終的にはお客様にどのような価値を提供できるのかを考え抜く姿勢を持ってほしいですね。
小林:まさにその通りです。そして、これらすべては「自分事化」につながっています。会社の目標を自分の目標として捉え、お客様の喜びを自分の喜びとして感じられる。そんな社員が増えていくことで、オルビスはさらに強い組織になっていくと確信しています。
我々経営陣は、社員一人ひとりが成長を実感でき、その成長が会社の成長と直結するような環境づくりに全力を尽くします。マネキャンはその一つの形ですが、今後もさまざまな施策を通じて、人材育成と組織強化に取り組んでいきたいと思います。
Profile
小林 琢磨(Kobayashi Takuma)
2002年 株式会社ポーラへ入社。2010年 グループの社内ベンチャーで起ち上げた敏感肌専門ブランド株式会社DECENCIA代表取締役社長。 同ブランドを50億のビジネスに導いた後、2017年 オルビス(株)マーケティング担当取締役、2018年 代表取締役社長に就任し、リブランディング、構造改革、組織変革を実行。ポーラ・オルビスホールディングス取締役を兼務。
中俣 博之(Nakamata Hiroyuki)
2019年に(株)STARTを創業。グループ全体ではインターネット決済事業、メディカル事業(病院経営)やD2C事業、ベンチャー投資事業などを展開。グループ外ではSHOWROOM社やデータX社など、上場企業からスタートアップまで6社の社外取締役を兼任。同社創業以前は、DeNAのゲーム部門の事業部長、LITALICO社の経営企画/HR/新規事業/マーケティング担当の取締役などを歴任。2016年東証マザーズ、2017年東証一部に上場。2023年8月よりオルビス(株)に取締役(戦略人事担当)として参画。