マネジャーになる前に「チームを率いること」を知る。 “すっぴん”で向き合うマネジメント育成プログラムとは

JOB&CULTURE

こんにちは。採用広報の仁尾です。
事業成長に合わせて組織の在り方も進化してきたオルビスでは、近年は、組織の実行力強化に向けて人材教育の変革に取り組んでいます。
その象徴と言えるのが、2024年にスタートしたマネジメント育成プログラム「マネジメントキャンプ(通称:マネキャン)」。従来のように「確実に任せられる人にマネジメントを託す」やり方ではなく、「ポテンシャルある人にまずはチャレンジの場を与える」という、アサインメント・ファーストの方針に舵を切った取り組みです。
今回は、その中核を担う「すっぴんチームキャンプ(STC)」にフォーカスし、立案者であるHR統括部長の岡田さんと、参加者のお二人に話を聞きました。オルビスが挑む“人を起点にした組織づくり”の最前線を、ぜひご覧ください。
成果を出すチームに欠かせない、“関係性”という土台
最初に話を聞いたのは、「マネジメントキャンプ(以下、マネキャン)」の立案者であるHR本部長の岡田さん。
2018年のリブランディング以降、事業と組織の両輪で変革を進めてきたオルビス。
その中で、「社員一人ひとりの力をどうすれば最大限引き出せるか?」という問いに向き合いながら、制度設計や人材育成の改革を率いてきた人物です。
マネキャンは、その一環として生まれた“アサインファースト”型の育成プログラム。マネジメントの可能性をもつ社員に1年間アシスタントマネジャー(以下、AM)として実務を通じた成長の機会を提供し、「まずやってみる」ことで学びを深めてもらうのが狙いです。
参考記事:『代表小林と取締役中俣が語る、事業と組織の両輪で改革を続けるオルビスが目指す「働きがいのある組織」とは』
そのマネキャンの中で「チームの関係性を意識的に育てる」ための場として設けられた場が、「すっぴんチームキャンプ(以下、STC)」です。
――まずは「すっぴんチームキャンプ」とはどんな取り組みなのか、お聞かせください。
岡田:STCは、一言でいうと「チームの関係性を意識的に育てる」ための場です。マネキャンの参加者であるAMに対し、同じチームのメンバーから率直なフィードバックをもらい、それを受けて自身の行動を見直し、宣言し、実行する。単に“振り返る場”ではなく、信頼関係を築き直すプロセスをあらかじめ設計したプログラムなんです。
プロジェクト名の“すっぴん”には、役割や肩書を一度脇に置いて、ありのままの自分をさらけ出して対話する、という意味が込められています。
私は、チームが成果を出すうえで一番大事なのは「信頼関係」だと思っています。どんなにいい戦略があっても、関係性ができていないとチームは動かない。だからこそ、“チームの空気”を意図的につくる。メンバーと率直に向き合う時間を設けるために、STCを企画しました。

――具体的な内容について伺えますか?
岡田:具体的には、メンバーからAMに向けたフィードバックの場をつくり、AMはその声をすべて受け取ったうえで、「どこをどう変えるか」を言葉にし、実行していきます。強みは自信につなげてもらい、課題にはしっかり向き合いながら行動を変えていく。そういうプロセスを通して、チームもAMも一体になっていってほしいという想いを込めています。
――成果を出す上で「一番大事なのは信頼関係」という考えについて詳しく教えてください。
岡田:いくら戦略が正しくても、どんなにスキルのある人がいても、うまくいかないチームはあります。その多くの要因が「関係性の弱さ」なんです。組織のパフォーマンスを支えるのは、結局“人と人”です。どんなに戦略があっても、関係性が弱いと動かない。だから、“この人たちとならやれる”って思える関係を、どう意識的につくっていくか。その問いから、STCは生まれました。
私が、2018年から今までの組織改革で「軸」としてきたのは、“人が育つサイクル”を組織の中にどう根づかせるか、ということです。何かを経験して、それをちゃんと振り返って、「これはなぜうまくいったのか」「どこに改善の余地があったのか」といった示唆を引き出す。そして、その気づきを次の経験に活かしていく。このサイクルが回り始めると、経験そのものが“上質な学び”になっていきます。人も、組織も、そうやって進化していくと考えています。
ただ、自分ひとりで振り返っても、気づけるポイントには限界がある。だからこそ、近くで見てくれている人からのフィードバックには、すごく価値があると感じています。
たとえば、遠くの人からの抽象的なアドバイスよりも、すぐそばで見ていた仲間からの「こういうところ、良かったよ」「あの場面はこうした方がもっと良くなると思う」といったコメントのほうが、断然リアルで、自分ごととして受け取れる。それがちゃんと“誠実に、相手のことを思って伝えられる関係”の中で行われたとき、フィードバックは単なる評価じゃなくて、学びと成長の起点になるんです。
STCや、メンバーが上司のふるまいを匿名でフィードバックする機会である『グループクエスト』という社内で実施しているサーベイの仕組みも、そうした信頼の中での対話を“意図的につくる”仕組みのひとつです。

「支援」のつもりが、「干渉」になっていた
ここからは、実際にSTCに参加し、アシスタントマネジャーを経て現在はマネジャーとして活躍するCRM統括部の西口さんと、同グループの春田さんに話を聞きました。お二人が所属するCRM統括部は、オルビスの売上の約6割を担う通販事業において、CRM戦略の立案・実行を推進する重要なチーム。
その中で西口さんは、お客様一人ひとりに向き合うコミュニケーション施策であるセグメント分析やキャンペーン設計、LTVの最大化に向けたプロモーションなどを推進。マーケティング戦略の中核を担いながら、施策の実行まで一気通貫で担当しています。マネジメントに強い志向があったわけではなかったものの、「チームとして成果を出すには必要な挑戦だ」と考え、マネキャンへの参加を決めました。

左:CRM統括部One to Oneグループ グループマネジャー 西口赳史
右:同グループ アシスタントマネジャー 春田祐美
―― STCに参加して、どんな気づきがありましたか?
西口:一番大きかったのは、自分の“支援”が、実は“干渉”だったと気づけたことです。僕は、メンバーが迷わないようにと効率化を重視して、「やること」だけを抜き出して伝えていました。背景や仕事の目的、その先につながる未来までは話していなかったんです。
加えて、効率化のため、業務の優先順位も示して指示を出していました。一人ひとりが効率よく動けるように、効率的に成果に結びつくように、と皆にとってのベストを考えたつもりだったのですが、メンバーからは「信頼されていないのかと思った」と言われて。すごくショックでした。
春田:STCでは、HRがファシリテーターとして介在してくれたおかげで、メンバー一人ひとりが本音を話すことができました。でも何より印象的だったのは、フィードバックを受けたあとの西口さんの「宣言」と「行動」の変化。そのスピードと実行力に、チーム全体が驚かされました。普段の会話でも「西口さん変わったね、宣言を実行しているね」と声が挙がるほどでした。
――具体的にどのように変えたのでしょうか?
西口:例えば、指示を出す前に「どんな進め方がしたい?」と聞く、「どこから手をつけようか?」と一緒に考える、など行動を一つ一つ意識的に変えました。以前は、仕事を依頼するときに「こう伝えればスムーズに進むだろう」と、自分のやり方をそのまま相手に押しつけていた部分があったんです。
でも、STCで本音の声を聞いて、そこから自分のアプローチを変えたことで、相談の回数や質が明らかに変わりました。メンバーから「施策の効果を最大化するにはどうしたらいいと思いますか?」と、自然に相談が寄せられるようになって。ただの報告や確認ではなく、成果を一緒に高めていく“対話”が生まれてきた実感があります。

―― チームに生まれた変化はありますか?
西口:ありましたね。もともと数字や成果に対する意識は高いチームでしたし、各自の責任感も強かったと思います。でも、どこか“与えられたタスクをこなす”意識が中心だったかもしれません。それが今は、「チームとしてどう価値を出すか」へと視点が広がってきた。たとえば、他グループの動きにアンテナを張って「連携したほうがよさそう」と声をかけ合ったり、困っているメンバーに自然と手を差し伸べたり。そういう行動が当たり前になってきました。
春田:STCの前までは、正直、西口さんと将来のことを深く話す機会って多くなかったんです。CRMは通販事業の売上を担う重要な部署なので、どうしても「まずは足元の業務をやりきる」という意識が強くて、守りに入りがちなところがあったと思います。
でも、STCをきっかけにチームの関係性が変わって、西口さんが「このチームをこうしていきたい」「春田さんにはこういう期待をしている」と、未来のビジョンを語ってくれるようになって。そうした姿を見て、私も「このチームのためにもっと役に立ちたい」と考えるようになりました。

「完璧さ」ではなく「受け止める力」へ
―― マネジメントに対する考え方も変わりましたか?
西口:はい。以前は「マネジャー=完璧な人」という印象でした。でも、STCを経て、今は、弱さを見せてもいいし、本音でぶつかることこそ信頼につながる、と思えています。加えてもう一つ、自分の中で変わったと感じているのは、「受容力」です。
マネジメントを経験する前は、自分が主体で動く場面が多かったので、自分の価値観の中で物事を進めるのが自然だったんです。たとえば、資料作成ひとつでも「こういう構成が正解でしょ」とか、「スピードを優先すべき」とか、どこか“正解”を自分の中だけで決めてしまっていたと思います。
でも、メンバーにはそれぞれの考えや仕事の進め方、感じ方がある。「なぜここに時間をかけたいのか」「どんな意図でこの順番で進めたいのか」。そういった背景をちゃんと聞くようになって、はじめて「正解はひとつじゃない」と気づかされました。
今は、「この人の強みをどう引き出すか?」という視点に切り替わっています。そう考えるようになってから、人の短所だと思っていたところが個性だと気づけたし、多様性を受け止める余裕が生まれたと思います。以前のように“型”にはめるのではなく、その人に合ったアプローチを一緒に見つける。それがマネジメントなんだと、実感しています。

春田:私も、STCに参加して以降の西口さんの変化には、本当に驚かされました。メンバーに対しても、「こうしてほしい」と一方的に伝えるのではなく、「どうしたら良くなると思う?」と一緒に考えるスタンスがどんどん強まっていって。まさに、“引き出す”マネジメントに変わっていった印象があります。
今は、私自身も「チームを支える存在になりたい」と思うようになって、2025年からAMにチャレンジしています。本音を伝え合うのは、簡単なことではないと思います。でも、私も西口さんのように、一人ひとりの価値観や考え方を受け止めながら、真摯に向き合っていきたいです。そして、その気持ちがチームの力を引き出す力に繋がれば嬉しいです。
本音で話す。受け止める。信頼が生まれる。
サーバント・リーダーとして、チームの力を引き出したい
―― 最後に西口さんが、目指しているマネジメント像について聞かせてください。
西口:メンバー全員が「自分の仕事に誇りを持てるチーム」をつくりたいですね。そのためには、メンバー一人ひとりが成果に主体的に向き合える環境を整えることが必要だと思っています。
僕はその土台を支える“サーバント・リーダー”でありたいと思っています。チームの力を引き出すために、支える、寄り添う、そして一緒に考える。そんなマネジメントを続けていきたいと思っています。
チームが変われば、組織が変わる。その起点に「人」がいる。
―― あらためて、岡田さんがこのプログラムに込めた想いを教えてください。
岡田:オルビスのマネジメント育成プログラムは、いわゆるマネジメントスキルを座学で教える場ではありません。大切にしているのは、「人と人との関係性」に向き合う姿勢と、それを土台にした実践と変化です。人は、経験とフィードバックを通じて成長します。だからこそ、最初から完璧を求めずにまずは“やってみる”という文化を大切にしています。
これまでのマネジメントは、目標管理や評価といった「型」を教えることが中心でした。でも今、組織に求められているのは、「成果を出せるチーム」をどうつくるか。その答えは、関係性の中にあると考えています。
マネキャンは、挑戦と育成を両立させるプログラムです。ポテンシャルを信じて機会を与え、実務を通して「チームと向き合う」経験を重ねることで、AM自身が変わり、チームが変わり、やがて組織全体の実行力も変わっていく。
STCを通じて本音で話し合える土壌が育まれたチームには、自然と“良い空気”が流れるようになります。互いの強みを活かし合い、補い合いながら、大きな成果を生み出していける。そんな循環を、今後も広げていきたいと思っています。
マネジャーとは、チームの力を引き出す存在。だからこそ、オルビスはこれからも「人を起点にしたマネジメント」を追求し、組織の未来を創っていきたいです。

Profile
岡田悠希(Okada Yuki)
HR統括部部長。2008年ポーラ入社後、2018年からオルビスにて、リブランディングと両軸で戦略人事として採用ブランディング、組織開発、人事制度改革を立て続けに主導。オルビスが掲げる「スマートエイジング®」の提供価値のもと、一人ひとりが自分らしく働ける組織づくりを目指す。2024年より(株)リクルート リクルートワークス研究所発行「Works」の編集アドバイザリーボードを務める。
西口赳史(Nishiguchi Takefumi)
2017年新卒入社。人事部を経て、2022年からCRM統括部に所属。2025年1月からCRM統括部One to Oneグループのグループマネジャーに就任し、One to One戦略の立案から実行までを指揮。
春田祐美(Haruta Yumi)
2019年11月中途入社。CRM統括部One to Oneグループのアシスタントマネジャー。総合通販会社、広告代理店にてマーケティングに従事した後、オルビスに転職。現在は顧客育成・休眠復活の戦略立案やOne to One施策の実行を担当。
取材・文:仁尾明美
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※本記事内容は、公開日(2025年6月27日)時点の情報に基づきます。