「深く、長く」お客様に寄り添うために。オルビスの「新CRM」が目指す、これからの顧客体験づくりとは(後編)
- RECRUIT

こんにちは。ブログ担当の土井山です。
今年1月から新体制で動き出した「CRM統括部」。お客様との関係性をさらに進化させるべく新CRM構想の検討に至った経緯や、現在の取り組みについては前回の記事で紹介しました。
2018年6月にローンチした「ORBISアプリ」でお客様の情報を一元化。店舗と通販のポイント統合といったユーザビリティの向上に始まり、2019年「パーソナルAIメイクアドバイザー」、2020年「AIアイブローシミュレーション」、「AI未来肌シミュレーション」など、AIを活用した分析サービスも拡充させ、お客様一人ひとりに寄り添った関係作りを目指しています。
後編となる今回のテーマは、オルビスがこれからCRMの進化を通じて、お客様とどのような関係性を目指していくのか。前回同様、CRM統括部 部長の松枝奏輔さん、CX統括担当部長の井口悦雄さん、店舗統括・BtoB担当部長の石田龍太郎さん3名に話を聞きました。
前編はこちら
店舗、EC、カタログなど複数の顧客接点をどう融合させていくか。新CRMチームがアプリを核に考える「お客様への寄り添い方」(前編)
https://corp.orbis.co.jp/article/interview_crm/これからの課題は「顧客価値」をどう高めるか
ーー前回のお話では、「アプリコア戦略」が功を奏しユーザー数も増えている一方で、通販・店舗・ECの垣根を越えて、これまでにない連携をどう創造していくかが課題とのことでした。

【写真】「ORBISアプリ」内コンテンツ
松枝:アプリを核に据え、「まずは既存のお客様に寄り添うことからスタートする」というロードマップに則り、通販をさらに便利にしたり、接客に広がりをもたらしたりと、オルビスの持つアセットを活用した連携がいくつも生まれてきました。
ただ、CRMを全てアプリに変えてしまえば解決というわけではありません。たとえば従来から続いているカタログにも一定のニーズがあり、読むのを楽しみにしているお客様がいらっしゃいます。それは一概に年齢層が高ければ紙媒体、若い人にはアプリ、と簡単に分けられるものではなく、デジタルネイティブ世代だから紙媒体が新鮮に映る瞬間もあったりするでしょう。あくまで主役はお客様ですから、データの取りようがないから紙媒体はやめる、という発想ではなく「オルビスが提供できる顧客価値の中で、カタログがどういった意義を持つのか」という視点で判断しなくてはいけません。
石田:店舗のお客様と通販のお客様とで送付物が異なる、という従来型のルールにも同様の課題があると考えています。オルビスのCRMを考えるうえで、お客様一人ひとりが各チャネルでどういうコミュニケーションを求めていらっしゃるのかを、突き詰めていく必要があります。
ーーアプリの運用がスムーズに動いてきたからこそ、見えてきたCRMの課題もあるということですね。

松枝:はい。各チャネルのユーザビリティ向上については継続して向上させていきますが、これからは「顧客価値」をどう高めるかという段階に、より深く入っていきます。
というのも、高齢化と人口減少を迎える日本の化粧品市場は確実に縮小していきます。一方、DtoC型のコスメブランドによる新規参入が活性化しており、お客様に定期購入を促し、LTV(顧客生涯価値)で事業を成立させるモデルが、今後より増えていくことが想定されます。「毎回注文するのは面倒だから、定期的に届けてほしい」というニーズが一定数あるのは確かで、私たちもそのご要望にお応えする必要はあるでしょう。ですが便利さだけでなく、スキンケアや化粧品を選ぶときの楽しさやワクワクも届けることが、「スマートエイジング®」を掲げるオルビスらしいお客様との関係性でもあると思うんです。
星の数ほどあるプロダクトの中から「オルビスを選んで良かった」と思ってもらえる体験をどう生みだすのか。そうした観点でのサービスを全チャネルをあげて短期的・長期的にどう実現していくか、というのがこれからの課題だと考えています。
デジタルと人肌の役割を、アプリでどう組み合わせるか
ーーでは顧客価値に紐づいたCRMを育てるプラットフォームとして、「ORBISアプリ」はどのように進化していくのでしょうか。
井口:アプリの登録顧客人数は約294万人(2022年6月末時点)と、ある程度のボリュームになりましたので、現在は商品のご案内だけでなく、お客様の美容の悩みに応じた記事コンテンツを充実させ、よりお買い物以外でも役立てていただける内容に強化していきます。
今後、お客様一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを提供するためには、データを集めることと並行して、顧客識別力の精度を上げていく必要があります。その両方の入口となるのがアプリですから、充実した記事コンテンツを定期的に掲載し、お客様が楽しみに見に来てくださるように活性化させていくのが狙いです。生きた美容情報を発信する場にもしたいので、お客様の声を良く知るBA(ビューティーアドバイザー)の知見を借りながらコンテンツ作りを進めています。
石田:コンテンツ強化を目的に、店舗部門でBA(ビューティーアドバイザー)の教育を担っていた経験豊富なメンバーを集めた「ビューティークリエイター」チームも作りました。今後はブランドアイコンとしてお客様に認知していただけるように、ビューティークリエイターによるORBISアプリ内のAIを活用した分析コンテンツの監修や記事制作への協力など、アプリを通じた働きかけも考えています。

【写真】オルビス・ザ・ショップのBA(ビューティーアドバイザー)
井口:社会のデジタル化は間違いなく進行していくので、アプリというプラットフォームの中にどれだけ人肌の温もり感を乗せられるかという点も、差別化のポイントだと思います。ゆくゆくは同じ記事を全員に、従来の同じタイミングで送るというコミュニケーションから進化し、「どういう切り口で」「オルビスの誰が、いつ話しかけるか」など個別に使い分けるところまでパーソナライズを掘り下げていきたい。お住まいの地域を問わず、全国のBAの中から最も美容感覚が合うメンバーを選定し、お客様とマッチングしてオンラインでつながるようなことも、デジタルツールを使えば可能になるかもしれません。
ーーたとえば、現在すでに実施されている、Zoomによるオンラインカウンセリングのメリットがアプリと連動するようなイメージでしょうか。

石田:たしかにそうかもしれません。現在のオンラインカウンセリングは店舗サイドのCRMとして、全国のBA約10名が担当し運営しています。コロナ禍を機に始まったサービスで、当初は店舗へのご来店が難しいお客様に接客を提供するのが目的でした。ですが最近ではメンズ美容に関心を持つ男性のお客様や、カップルでのご利用、就職活動をされていてメイクやヘアなど身だしなみに気を配っている方、お母様から「初めてのスキンケアを娘に紹介してほしい」という親子カウンセリングなど、多様な方に活用いただいています。
直近では、店頭のBAがライブコマースを活用して商品紹介を行う取り組みも始まりました。アプリの進化に伴って、デジタルにはできない人肌感の部分を店舗側が補うという考え方の一環で、BAが前に出て話し、その人柄や美容意識を知っていただくことで、お客様に「会いたい」と憧れを持ってもらえる存在になることを目指しています。
ーーダイレクトなつながりのない、BtoBのお客様に関してはどのようなCRMを考えているのでしょうか。
石田:BtoBの売上は伸びており、その内訳には全国展開する化粧品専門店やドラッグストア、また『Amazon』や『楽天市場』に代表される大型ECモールが含まれています。BtoBでお買い求めいただいているお客様にも、QRコードや店頭イベントなどを通じてアプリとの接点を持っていただき、コンテンツの面白さやAIを活用した分析サービスといったテックの魅力からオルビスというブランドを深く知っていただくことがテーマになると思います。
ビューティーの先にある、お客様の真の想いまで見つめていく
ーー「ORBISアプリ」が各チャネルの新しい役割を発見し、引き出すツールにもなっているのですね。

松枝:かつてのカタログを主体にしたコミュニケーションだと、購買データは分かっても、お客様がどういう記事を読んだのかまでは知りようがありませんでした。ですがアプリだと、ふだん店舗に来てくださるお客様がどのアプリ記事に興味があるのかまで見えてきます。たとえば、その情報をBAに展開して、リアルな接客のコミュニケーションで活用してもらうといった変化を生み出せる可能性があります。
石田:店舗の年間売上高のトップ3に、毎年佐賀県の店舗が入っているんです。その店舗のBAは8名いるのですが、お客様を担当させていただくBAが休みのときも、別のBAが同じレベルで接客できるようにお客様のお悩みやお肌の情報を共有するなど、お客様に寄り添った接客をしていることがわかりました。今後、よりアプリコア化が進み、お客様の悩みや情報がデジタル上で管理できるようになると、この店舗のように理想的なCRM構築ができるようになると期待しています。
井口:アプリの運用を続けるほど、膨大なデータが集まり、様々なお客様のニーズを抽出できることは間違いありません。従来の一般的なパーソナライズは、「個別に人が対応する」という“属人的要素”が強くなりやすい傾向がありました。ですが、多くのお客様に精度の高いコミュニケーションを提供していくためには、システム化できるところと人間が担う部分を見極めながら、組織・インフラ・解析の仕組みをますます探究していかなければいけません。
松枝:こればかりは、トライアンドエラーを繰り返して精度を上げていくしかない部分もあります。たとえば普段の買い物でスタッフに声をかけられたとき、「今はそっとしておいてほしい」と感じることもあれば、誰もいないタイミングで「今話かけてくれたら絶対買うのに」と思うこともある。そういう人肌の感覚をCRM統括部のメンバーそれぞれが1ユーザーとしてどう捉え、どうテクノロジーに反映させていくか、アンテナを張っていく必要があります。
きれいな肌でいたい、素敵なメイクをしたい、という気持ちに応えることだけをゴールに据えるのではなく、その思いが叶った先にお客様が何を成し遂げたいのか、本質をしっかり見つめること。そこに対し、オルビスの「スマートエイジング®」な思想から何ができるのかを徹底して考え、サービス提供に繋げていくのがこれからの新CRMの使命だと思っています。
取材・文:木内アキ
※本記事内容は、公開日(2022年7月15日)時点の情報に基づきます。
Profile
松枝 奏輔(Matsueda Sosuke)
マーケティング部門においてプロモーション企画を担当後、顧客購買データの分析官として活躍。新規事業プロジェクトでは、ECサイトおよび当時では珍しかった、コンテンツサイトの立ち上げを主導した経験も。顧客体験価値創造としてデジタルをコアとしたサービス企画開発を担うCXデザイン部を経て、2022年1月からCRM統括部 部長。
井口 悦雄(Iguchi Etsuo)
デジタルマーケティング(EC運用改善領域)、情報戦略(現OnetoOne)、情報システムを経験。直近では「パーソナルスキンチェック」、「パーソナルファンデーションカラーチェック」、「パーソナルAIメイクアドバイザー」、「AIアイブローシミュレーター」、「AI未来肌シミュレーション」など、テックを活用したパーソナルサービスをローンチしている。2022年1月からCRM統括部 担当部長(CX統括担当)。
石田 龍太郎(Ishida Ryutaro)
情報システム部にて、物流機能や受注機能など通販基幹システムの開発運用に従事。その後、グループマネジャーとして通販の新機能追加や基幹インフラ再構築などのマネジメントを行い、海外シンガポール法人のECサイト立ち上げも経験。2018年より、営業部 店舗営業グループマネジャーとして直営店の売上拡大や人事を担当し、現在は直営店に加えてBtoB事業の販路を拡大。2021年1月からCRM統括部 担当部長(店舗統括・BtoB担当)。