2025.4.30

アートが紡ぎ出す子どもたちの未来|子供地球基金のアートワークショップを訪ねて

PROJECT

SUSTAINABILITY

 ORBIS

こんにちは。サステナビリティ推進室の加藤です。
オルビスでは現在、「ORBIS ペンギンリング プロジェクト」を通じて、未来を担う子どもたちへの支援を行っており、私も日々、その輪を広げるための活動に取り組んでいます。お客さまから寄付いただいたポイントと、オルビスからの支援金を合わせて、パートナー団体のもとへと届けるこのプロジェクト。4月のとある晴れた日、その支援先のひとつである特定非営利活動法人子供地球基金(以下、子供地球基金)の活動に参加させていただきました。

子供地球基金は、病気や戦争、災害などで心に傷を負った子どもたちに、アートを通じて寄り添う活動を37年にわたって行ってきた団体です。代表・鳥居晴美さんをはじめ、スタッフやボランティアの方々は現地に駆けつけ、子どもたちと直接コミュニケーションをとりながら、画材や必要物資を届け、絵を描くワークショップを実施してきました。活動場所は世界56か国以上、アートワークショップの実施数は累計3,600回を超えています。

鳥居さんは「絵を描くことは、子どもたちが自分自身と向き合い、現実を受け入れて、未来に進む力を育む時間になる」と語ります。

日本国内でも、病院や養護施設、幼稚園などさまざまな場所で、子どもたちが表現できる機会を提供しています。
今回私は、神奈川県立こども医療センターで行われたアートワークショップに同行させていただきました。この病院は、特定承認保険医療機関として国にも認められている、日本有数の小児専門病院。特別なケアが必要な子どもたちとその家族を、最前線で支え続けています。そのような場所で、「絵を描くという時間」がどんな意味を持つのか。現地に向かった私は、その答えをまっすぐに絵と向き合う子どもたちの姿から教えてもらいました。

病院の中に広がっていた、色とりどりの「自分らしさ」

まず案内されたのは、外来エリアにある大きな廊下。ガラス張りの窓が両サイドに広がるその場所に足を踏み入れた瞬間、ぱっと目に飛び込んできたのは、通りかかった子どもたちがカラフルな画材で描いたたくさんの絵たちでした。

▲力を入れなくても描きやすく、水拭きで簡単に落とせるクレヨンのような画材が使われていました。

くるくると線を重ねる子、端から端まで思い切り線を引く子、描いた絵を恥ずかしそうに見せてくれる子。広い場所に思いっきり絵を描くという、家ではなかなかできない体験に、どの子も生き生きとした表情を浮かべていました。

子どもたちのそばには、一人ひとりの表現を優しく見守る、子供地球基金のスタッフの姿が。中には、20年、30年以上に渡って活動を続けてこられたボランティアの方もいらっしゃいました。神奈川県立こども医療センターでの活動も、そうした長い経験と子どもたちへの深い理解を持つボランティアの方々によって支えられているそうです。
「素敵だね!」「次はどんな模様にしてみようか?」
そんなスタッフたちのあたたかな声かけと笑顔に背中を押されるように、子どもたちは嬉しそうに色を重ねていきます。

子供地球基金が大切にしているのは、子どもたちの自由な表現。
「太陽がストライプ柄でもいいし、黄色じゃなくてもいい。大切なのは、自分らしく心のままに描けること」と、スタッフは言います。
「小さな枠の中では出てこない発想も、大きな窓の前では羽ばたいていく。子どもたちの想像力の翼を広げてあげたい」と語るその姿から、子どもたちへの愛情が伝わってきました。

まるでここが病院であることを忘れてしまうような、のびのびとした子どもたちの姿に、思わずこちらまで笑顔に。 絵を描くことは、こんなにも子どもたちの気持ちをほぐし、笑顔や前を向く力を引き出してくれるんだ――そんな、当たり前のようで大切なことを、改めて実感する時間になりました。

病院に来るのは、子どもにとって決して“楽しい時間”ではないはず。それでもこの廊下には、誰かがふわりと灯した明かりのような、優しくて、希望に満ちた時間が流れていました。

▲夢中で描く女の子。このワークショップを、通院のたびに楽しみにしているという子もいるそうです。中には、以前この廊下を通ったときに絵がなかったことを残念がっていた子もいたといいます。

病棟でたしかに芽吹いた、子どもたちの力強さ

実はこの日、先ほどの病院内オープンスペースだけでなく、特別に入院病棟でのワークショップも見学させていただけることになりました。安全管理が最優先される病棟内では、コロナ禍以降ずっとこのような活動が制限されていましたが、ようやく再開され、現在国内ではこの病院だけで実施されている貴重な機会です。マスクや消毒などの厳重な安全対策管理はもちろんのこと、限られたスペースの中で行われる病棟のワークショップには、外来廊下とはまた違った特別な空気が流れていました。

ナースステーション前にあるプレイルームに集まった子どもたちの前には、大きな画用紙と絵の具。普段は絵の具を使うことが難しい場所で、「絵の具を混ぜて、自分の色を作れるのが嬉しい!」と目を輝かせる子どもたち。

中には、春の訪れをテーマに、小さな花々を描く女の子の姿もありました。
「入院で春を逃しちゃったから、せめて絵の中で春を残したいの」
後からスタッフから聞いた話では、そんなふうに話していたそうです。

▲時には綿棒やティッシュを使いながら、工夫を凝らして描き上げます。絵の中には、まるでやわらかな春の風が吹き抜けているよう。

外来のワークショップでは、明るい日差しのもと、子どもたちのエネルギーがはじけるように表現されていましたが、病棟では、それぞれの内側からにじみ出る確かな芯の強さを感じ、心に沁み入るような時間でした。ひと筆ずつに込められた想い、色を重ねるたびに表れていく“その子だけの世界”に、言葉では言い尽くせないほどの力強さを感じました。アートが持つ優しさと強さ。その両方に、私はただただ圧倒されていました。

▲大きな三日月と、またたく満天の星。しんと静まり返った真夜中か、はたまた夜明けを待ちわびているひとときなのか…… 子どもたちの表現力に、何度も驚かされました。

「夢中になって描く時間」がくれる、大きな力

「夢中になって描いている間だけでも、病気のことを忘れられる。その時間って、すごく大きいと思うんです」
そう話してくれたのは、神奈川県立こども医療センターのボランティアコーディネーターを務める加藤さん。子供地球基金の支援を病院側として受け入れる立場であり、10年以上にわたり活動を共にしてきた方です。

ワークショップに立ち会った病院スタッフが「この子がこんな絵を描くなんて・・・!」と驚くことも少なくないのだそう。自由に描くことが難しい病棟という場所で、のびのびと自分を表現する子どもたちの姿。時折垣間見える新しい一面は、子ども自身だけでなく、周囲の大人たちにも元気をくれています。

「体調が優れないから今日は難しいかも」
そんなふうに話していた子が、ワークショップの時間になると自分から立ち上がり、参加してくれることもあるそうです。それほど、この時間を楽しみにしてくれている子がたくさんいるということ。加藤さんは、“安心・安全”に加えて、病院に“ワクワク”を運んでくれるこの活動に、感謝の気持ちを何度も口にしていました。

子供地球基金の皆さんは、どんな子にも「描きたい」という気持ちを諦めさせない。手の力が弱い子には、少しでも描きやすいように画用紙の角度を工夫し、背中を押してあげるように寄り添ってくれるのだといいます。 活動を“打ち上げ花火”で終わらせず、日常の中で少しずつ、でも確かに子どもたちの心に寄り添い続けてきたこと。その積み重ねが、いまの信頼と感謝につながっているのです。

子どもたちの描いたアートが、また別の子どもを救っていく

「Kids Helping Kids(子どもが子どもを救う)」
これは、子供地球基金の活動を象徴する言葉。

子どもたちが描いた絵は、ワークショップの思い出にとどまりません。一部は商品デザインとしても活用され、その売上が、また別の子どもたちの支援につながっていきます。 オルビスでも現在、子供地球基金のアートを使用した鉄分ドリンク「グレープFe」を販売中。ご購入いただくことで、売上の一部が活動の支援になります。

代表の鳥居さんはこう語ります。「子供地球基金の絵が描かれた商品を手に取ってくださるだけでも、活動の仲間に加わってくださっていることと同じだと思っています。私たちと同じように、世界中の子どもたちの力になってくださっていることに、心から感謝しています」
絵を描いた子どもたちが、「自分の絵が誰かの力になっている」と知ったとき、目の色が変わるのだそうです。
“自分にも誰かの役に立てる力がある”
その気づきが、子どもたちにとっての大きな希望になるといいます。

子どもたちが教えてくれた、“表現すること”の意味

窓や画用紙いっぱいに色を広げ、真剣なまなざしで手を動かしながら、思い思いに自分を表現する子どもたち。その絵を通して、私の心に残った気づきがあります。
それは、「言葉を使わないからこそ、伝わる気持ちがある」ということ。 子どもたちは絵を描くことで、自分の内面と向き合い、言葉では表しきれない思いを、色や線で伝えてくれていました。アートが持つ力を、あらためて実感する時間でした。 文字を書くことは出来なくても、絵なら小さい子どもたちでも描ける。棒切れがあれば、地面にだって線を引ける。プリミティブ(素朴)であるからこそ、無限の力強さが備わってどこまでも広がっていく。

どんな環境の中でも、「自分らしさ」を表現する機会を生み出そうと動き続ける人たちがいます。 商品を購入すること、この取り組みを誰かに伝えること。あなたの優しさや行動は、どんな形でも、確かに子どもたちの力に繋がっていきます。 子どもたちの未来に、優しい色が重なっていきますように。


「子供地球基金」とオルビスがコラボしたオリジナル商品の購入を通じて子どもたちの支援ができます。
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