2024.10.1

商品の先に見つめるブランドの未来

PROJECT

SUSTAINABLE

 ORBIS

一人ひとりが、自分らしくここちよく年齢を重ねていけるエイジングケア*1シリーズ「オルビスユーシリーズ」(以下、「ユー」)。10周年を迎えた今年に始まった本連載の最後は、初代の「ユー」を生み出した取締役執行役員の西野が登場します。現在、ブランドデザイン部を管掌下におきながら、サステナビリティ推進室の室長として、オルビスのサステナビリティ戦略をリードしています。西野が見据える、商品で肌を美しくするだけではないブランドの活動とあり方とは。

同様に、発売5周年を迎えた「オルビス ディフェンセラ*2(以下、「ディフェンセラ」)のブランドマネジャーを務めた、ブランドデザイン部部長兼サステナビリティ推進室グループマネジャーの加藤も交え、インタビューを行いました。

新しい価値や選択肢を届けられるブランドであり続けたい

――「ユー」が発売から10周年、「ディフェンセラ」が5周年を迎えました。当時はどんな想いで商品と向き合っていましたか。

西野:当時オルビスは、「安心・安全・やさしい」イメージが先行し、大人の肌にはちょっと物足りなさを感じる、という印象を持たれていました。創業当時から肌科学に基づいたものづくりをしてきているからこそ、どうしたら本当の価値をお届けすることができるのかを考え、オルビスを象徴するエイジングケアとして新シリーズを発売することにしました。 それが、2014年の初代「オルビスユー」です。

人によって肌状態や肌悩みが異なるのはもちろん、同じ人でも、朝と夜・次の日でも変化します。日々変わっていく肌に、スキンケアの方が寄り添うことができないか。「肌の力を信じて引き出す」という信念をもったオルビスだからこそ、その人自身にとことん向き合ったスキンケアを作りたいと思いました。あなたのためだけのスキンケアという意味を込めて、「ユー(=あなた)」と名付けています。

実は、ある日スマートフォンを見ていて、アプリのカスタマイズやバージョンのアップデートがスキンケアでもできたらいいのに、とふと思ったんです。それがコンセプトに繋がっています。

(左)2014年に発売した初代ユー 「オルビスユー モイストアップローション」、(中央)2018年に発売した第二世代のユー「オルビスユー ローション」、(右)2022年に発売した第三世代のユー「オルビスユー エッセンスローション」

加藤:「ディフェンセラ」は、“飲む”アプローチで肌に効果を出すことを証明したいという研究者の想いから、10年越しの研究の末に生まれました。全身の肌の水分を逃しにくくするという機能があり、洋服を着替えるようなイメージで「wear new skin」という企画コンセプトも掲げていました。

機能を証明するために目指したのがトクホ(特定保健用食品)の取得です。トクホは国民の健康増進に有益であると認めない限り消費者庁に許可されませんが、晴れて2019年に、「肌」へのヘルスクレームを認められた商品として日本で初めて*3発売することができました。10年かかりましたが(笑)、諦めずに研究を続けてくださった研究員には感謝の気持ちでいっぱいですし、そんな価値ある商品を絶対に多くの方に届けなければならないと強く思いました。

――開発において、思い出に残っていることは?

西野:スキンケアがその人その時に応じて効果を変えるなんて出来るのか。疑問や不安の声は社内からもありましたが、グループ会社であるポーラ化成工業の研究知見をもってすれば、叶えられると思っていました。泡立てない洗顔や形状記憶ジェル、新採用のボトル形状など、前例がないことばかりでしたが、毎日行うお客様の大切なスキンケア習慣を、もっと効果を体感できるワクワクする時間にできるのなら、と迷いや諦める気持ちは一切ありませんでしたね。商品が少しずつ形になっていくにつれて、みんなの気持ちが一つになり高まっていくあの時の社内の沸々としたエネルギーは、今でも忘れられません。

取締役執行役員 西野

加藤:忘れられなかったのは、開発中にモニターの方からいただいた「魔法みたい」という言葉。「ディフェンセラ」によって、肌の悩みから解放されるだけでなく、今までチャレンジできなかった新しいことを始めたり、好きなことを思い切り楽しめたり、そんな前向きな生活の変化までお客様に感じてほしいと思っていたので本当に嬉しかったです。その方は、初めて乾燥による手荒れを気にせずにネイルにチャレンジしたと仰っていました。

――商品発売後の反響はどうでしたか?

西野:ありがたいことに、商品でお手入れの体感ができて、それによって気持ちまで前向きになったというお声は本当にたくさんいただくんです。スキンケアが持つパワーをお客様から教えていただくこともたくさんあります。だからこそ、もっと技術力の高い商品で期待に応えたいし、新しい発見や気づきを提供できるブランドにしていきたい。「次は何をしてくれるんだろう?」って、オルビスにワクワクしてもらいたいですね。

加藤:「ディフェンセラ」も、我々の想像以上に大きな反響をいただき、新しいソリューションへの世の中の期待の大きさを実感しました。オルビスは色々なチャレンジをしてきましたが、新しい価値や選択肢を届けられるブランドであり続けたい、と改めて思いました。

(左) 「オルビスユー モイストアップローション」、(右)「オルビス ディフェンセラ」

――お客様の期待は、商品による効果だけに留まらないのですね。

加藤:対面で商品に関するインタビューを行っていたある日、「最後にオルビスに伝えたいことはありますか?」と伺うと、商品の質問やご要望ではなく、「病気で気持ちがボロボロになっていたときにオルビスに出会い、心が救われた。ありがとう。」というお言葉をいただきました。ブランドが誰かの希望というか、少なくとも活力になれていることに感動し、私はインタビュー中にも関わらず、涙が止まりませんでした。

西野:オルビスは商品をはじめ、惜しみなく新しいチャレンジを続けられるブランドです。肌をきれいにするだけではない、オルビスのあり方を考えたい。そう思うのは至極自然な流れで、商品を買っていただいた先にどんな喜びをお届けできるのか?という視点まで大事にしたいんです。 “オルビスがきっかけで”“オルビスがいたから”―そんな風に、ブランドを通してお客様の気持ちや行動まで変えられるような、かけがえのない存在になるにはどうしたらよいのか、できることを考えてきました。

社会課題、ブランド、お客様をシームレスに繋げていく

――「そのような想いと、この度スタートする子ども支援活動「ペンギンリング プロジェクト」はどのようにつながるのでしょうか。

西野:「ひとりひとりが持つ美しさが、多様に表現されるここちよい社会へ。」をミッションとするオルビスが、ブランドとして寄り添い、応援したい人はたくさんいます。今すぐにビューティーを必要とする方はもちろんですが、未来を担う子どもたちが、当たり前のように力や可能性を発揮できて、将来当たり前のようにビューティーにアクセスできて、当たり前のようにビューティーを楽しめるようにしたい、そんな未来を描いています。

加藤:自分の子どもの周りを見ていても、家庭環境などで子どもの価値観はそれぞれ違っているのだろうなと感じます。ふと、この子たちの未来ってどういう世界なんだろう、健やかに過ごせる世界になっているのかな、と思うことがあるんです。それって、今の大人たちの責任なんじゃないのかな、と。子どもたちにどんな世界を残せるか、大人たちができることを考えていくことが、サステナブルな社会を創っていく一歩なのではないかと思っています。

ブランドデザイン部部長兼サステナビリティ推進室グループマネジャー 加藤

――「ペンギンリング」というプロジェクト名に込めた想いを教えてください。

加藤:実は、ペンギンの習性を見習って名付けたんです(笑)。親ペンギンの不在時に、他の大人のペンギンが協力して子どものペンギンを守っていると聞いて。同じように、私たちもみんなで子どもの健やかな成長をサポートしたいですし、その支援の輪を広げたいという願いが込められています。

世界情勢や経済状況などの社会課題を、そもそも知らないという人は少ないと思っています。なんとなく知っているけれど、目をそむけたくなるし、向き合うきっかけも無い。遠いどこかの話だと思いがちなんじゃないかと。でも、みんなが少しずつでも力を出し合えば、きっと大きな力になります。このプロジェクトでは、そのきっかけを作りたい。近所の子どもに何かちょっとしてあげるような、親しみをもって気軽にサイトをのぞいたり、活動の支援ができたりするようなものにしたいと思っています。

――ペンギンのイラストには、プリズムが描かれていますね。

加藤:子どもたちの未来を見据えたときに、希望があると信じて人生を歩んでもらいたい。その想いから、大人と子どものペンギンが重なったところにプリズムの光の色を用いて、明るい未来を願う気持ちを表現しています。

――プロジェクトを進めるうえで、こだわったことはありますか。

西野:企業だけがやっている、という状態にはしたくありませんでした。私たちオルビスには、ブランドの思想や商品、サービスにご共感いただいているお客様が本当にたくさんいらっしゃいます。ここまでブランドが成長できたのはお客様のご支援・ご共感があったからこそで、これからもお客様と共に進化・成長を遂げていきたいと考えています。

だからこそ、「このプロジェクトなら協力したい」とどれだけ思っていただけるかかが大切で、私たちオルビスの熱量や想い、考えを透明性高くお客様に伝えることには徹底してこだわりました。

加藤:これまでも有事の際に被災地支援やポイント寄付を実施したことはありましたが、このように事業活動と常に並走して実行していくのは初めてで、描いている構想の背景や意図は、丁寧に社員に伝えていきました。 言葉の使い方などに対して、社内から厳しいフィードバックをもらったこともありましたが、そういう声があったからこそ、色々な人の価値観やバックグラウンドを尊重したうえで、もっと慎重に発信していくべきだと気づけました。言いにくいことも伝えてくれる仲間がいることは、本当にありがたいですね。

西野:オルビスに集まる仲間は、社会貢献活動への意識が高く、従業員参加型企画への意欲も非常に高いメンバーばかりです。ただ、今回のプロジェクトは全く新しい試みゆえ、確認事項や調整案件も多く、メンバーにとっては不安や負担も多かったと思います。それでも、社内説明会やメッセージ発信を通じて、想いを形にしていくと、もともと持っていた「誰かのために何かしたい」という気持ちがどんどん大きくなって、みんなの力が揃っていく感覚がとても心強かったです。

オルビスが、新たな一歩を踏み出すきっかけを届けたい

――「ペンギンリング プロジェクト」は3つのパートナー団体と取り組んでいきます。この3団体の支援を決めた理由を教えてください。

西野:一緒に取り組んでいくのは、信念をもって活動を続け、子どもたちに、そして社会に影響力を発揮してこられた方々ばかりです。実際にお会いしてお話をすると、根底にある想いやエネルギーに圧倒されながらも、私たちのブランドの未来にも、やさしく温かく歩み寄ってくださったのが印象的でした。お客様からお預かりした貴重な寄付支援を、大切に紡ぎ、一緒に広げていっていただける未来が目の前に浮かんだんです。

加藤:活動を仕事だからと捉えるのではなく、「こういう未来にしたい」「人の助けになりたい」と心から思っている方々ばかりでした。そんな姿勢に、私はただただ感動してしまって。こういう姿勢でオルビスも活動をしていきたいですし、協力することでよい未来がお互いに作っていけそうという期待感がありました。

――最後に、お二人からメッセージをお願いします。

加藤:自分を大切にすることが、他の誰かを大切にすることに繋がっていくような社会を創りたいです。支援活動が一部の限られた人だけのものではなくて、もっと日常にありふれたものになってほしい。オルビスの活動を通して新しい世界を知ることができたり、誰かの力になれるきっかけを提供できたりしたらいいなと思います。

最近、子どもが私にお小遣いを持ってきて「これ寄付して」って言ってきたんです。理由を尋ねると、「みんながしていたから、自分もしたいと思った」と。「みんながしている」を作れるのは大きなことだと思います。「ペンギンリング プロジェクト」も、気軽に活動ができる場所にしていきたいです。

西野:自分ひとりでは躊躇することがあっても、オルビスと一緒なら、この団体と一緒なら……と一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。オルビスを通して、自分のアクションが「こんな形で繋がって、届けられているんだ」という実感を持っていただくことが、次の新たなアクションに繋がっていくと思うので、私たちも真摯に誠実に活動と向き合っていきます。ペンギン“リング”とあるように、みんなで大きな輪にして子どもの未来を健やかなものにしていきたいです。

※本記事内容は、公開日(2024年10月1日)時点の情報に基づきます。

<販売名>『オルビスユー エッセンスローション』(医薬部外品) 肌荒れを防ぐ

*1年齢に応じたお手入れのこと

*2「オルビス ディフェンセラ」特定保健用食品

・許可表示:本品に含まれる米胚芽由来のグルコシルセラミドは、肌の水分を逃しにくくするため、肌の乾燥が気になる方に適しています。

・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。



*3販売商品として。

Profile

西野英美 (Emi Nishino)

2002年にオルビス株式会社に入社。スキンケア、メイク、メンズ、海外ブランドと多岐に渡る商品企画の経験を武器に、リブランディングではスキンケアを軸とした商品強化を指揮。2023年より初の女性取締役執行役員に就任しブランドの進化を牽引。

加藤由衣 (Yui Kato)

2006年にオルビス株式会社に入社。ブランドデザイン部部長兼、サステナビリティ推進室のグループマネジャーを務める。「オルビス ディフェンセラ」や「オルビスユー ドットシリーズ」をはじめ、ブランドを代表する商品の企画開発をマネジメント。3児の母であり、等身大の経験や価値観を活かしながらオルビスならではの社会課題へのアプローチを模索中。サステナビリティ活動をリーダーとして牽引している。

Text Sachiyo Omura / Edit Yuki Enomoto

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