2024.10.31

伝えられたリアルを、受け止めて広げていく│ジャパンハート創設者の講演会でオルビス社員が感じたこと

PROJECT

SUSTAINABILITY

 ORBIS

2024年10月1日から、子どもたちの健やかな成長をサポートする「ORBIS ペンギンリング プロジェクト」がスタートしました。去る8月23日、プロジェクトの発足に先駆け、パートナー団体の一つであるジャパンハートの創設者、𠮷岡さんを招き社内向けに講演会を行っていただきました。

ジャパンハートは日本発祥の国際医療NGO。どのような経緯で創設に至り、そこにはどんな想いがあったのでしょうか。

これからオルビスとしてプロジェクトを推進していくにあたり、まずは実際活動している𠮷岡さんのお話を伺うことで、社員皆が理解を深め、実感を得る必要がありました。

講演を聞く前はどこか遠い世界の出来事のようだった海外での子ども支援が、𠮷岡さんのお話が進むにつれリアルな世界の問題・痛みとして強烈に心に突き刺さり、会場からはすすり泣く声が漏れ聞こえてくるほどの実体をもって我々にのしかかりました。

その時はっきりと、私たちはこの問題を他人事ではなく、自分のすぐ隣にあることなのだと実感したのです。このような体験を読者の皆様にも共有し、少しでも子ども支援に興味を持っていただけたらと思います。


𠮷岡秀人さんは特定非営利活動法人ジャパンハートの創設者です。昭和40年に大阪に生まれ、当時の状況について𠮷岡さんはこのように語りました。

「地下道には軍服を着た物乞いがおり、片足がありませんでした。そのような人は一人ではなく、手が無い人などもおり、戦争の影が色濃く残っていました。」

一方その頃、大阪万博が開催され華やかで明るい雰囲気との間に大きなギャップを感じました。少し時間と場所がずれるだけで、世界はこんなにも変わるのかと。中学校の頃にダラダラ生きているのはもったいないような気持ちになり、医者になることを思いつきました。医者になったら、多くの人を救えるのではないかと。そんな気持ちを持ち続けて医者になる夢をかなえ、30歳の時にミャンマーへ渡ります。

「恵まれない人を助ける、それが達成できるならどこでもよかった。アフリカでもよかった。縁があって、ミャンマーだった。」𠮷岡さんは語りました。

貧しい人々に医療を届けるということ

「ミャンマーは当時、平均寿命が50歳ちょっと。人口32万人に対しての病院はほんの数カ所。そこには看護師さんが一人だけしかいませんでした。」𠮷岡さんの言葉に、私たちは思わず目を丸くしました。日本の状況と違いすぎて、正直、想像もつきませんでした。

「朝5時くらいから、夜の12時まで診察をします。大変ではあるけれど、自分がやりたかったことだから疑問は持ちませんでした。むしろ、限りある時間を有意義に使いたいと思っていたのです。ミャンマーでは頻繁に停電が起こります。大雨が降りやすい気候で、そうなると電柱が倒れて停電になってしまう。そうなると麻酔ができないので手術もできない。仕方なく帰らせた患者さんが帰っていくその背中が、とてもさみしそうでした。」

貧困の国で、貧困の患者さんたちに医療を届けることの難しさを𠮷岡さんは淡々と語りました。

「患者を帰らせてしまうことが、全ての人を診られないことが、どんどんストレスになっていきました。夜寝ていても、患者さんが浮かんできてしまいます。やれることだけやっていたら良いのではないかと思う自分と、もうやめてしまおうという自分。進むか退くかの二択を迫られた末、それでもやるしかないと思いました。手術室を家の中に作り、窓をたくさんつけて明かりをとりました。助手には両手に懐中電灯を持ってもらう。麻酔は、電気を使わない血管麻酔と局所麻酔。麻酔には限界があるのでどんな手術も1時間で終わらせないといけません。消毒は煮沸滅菌。」

人間は、時間さえあれば何でもできると、𠮷岡さんは言います。しかし、その時間にはリミッターが存在しているのです。自分の寿命を別のものに変える作業をしているんだと感じたそうです。その、変えたものの質が自分の人生の質になるのだ、とも。医療は患者さんの人生の質を上げることなのだと感じたそうです。

「自分の寿命は、こういう子たちの人生の質、命に変えていこう」

心救われる医療を目指して

病気と闘うとき、子どもは人生の中でもおそらく一番頑張っている、と𠮷岡さんは言います。

そのとき、家族はつらく苦しい時間を過ごしている場合が多く、つらいときの記憶に蓋をしてしまうことが少なくありません。子どもが一番頑張ったことを、本当は親御さんに覚えていてもらいたい。それは、子どもが笑ってくれたことやご飯をたくさん食べてくれたときのように、暖かい記憶として残してあげたいのです。

たとえもし命が助からなかったとしても、残された家族の中にその子がしっかりと生きた記憶を残したい――そんな思いに突き動かされ、𠮷岡さんは「心を救う医療」を施していくのです。

遠い世界の出来事ではなかった……オルビス社員の声

講演を聞いた社員からは、𠮷岡さんの行動力に対する驚きや敬意、そして自分たちの生きる世界で間違いなく起こっている、これが現実なのかと驚く声などが多く寄せられました。

●仕事、子育てと、忙しい日常の中で自分の生きる意義など考えることもなく今をただ生きている自分でしたので、強く心を打たれました。 自分が生きる意義、人のために何ができるかを改めて考えながら、目標を持って生きていこうと思います。

●自分の寿命をどう使うのかは、自分の人生をどう歩むのか、人生の質を高めていくためにも考えたいと思いました。

●楽しいことや大変なことを経験したり、嬉しいやしんどいなどの感情を味わったりすることは、生きているからこその幸せなんですね…。死が遠い日本という環境で生きていて、あまりにも生きていることが当たり前になっていました。「生きている」ということの価値を、もう一度噛みしめたいと思いました。

●自分自身も周りの人の人生の質をあげるために何か行動していきたい!とウズウズしました。いきなり𠮷岡先生のようになれなくても、自分が関われる数少ない人たちに対して 「生まれてきてよかった」少なくとも「この会社で、この人と働けて良かった」と思ってもらえるように、行動していきたいなと思いました。

自分がいま「生きている」ことに感謝しつつ、𠮷岡さんが言うように「人生の質を上げる」ことについて考える社員が多くいました。今、何かに感動したり、憤ったりという感情を持てることそのものが幸せなのだと実感し、その尊さを生活や仕事への活力にしていきたいとの声が聞かれました。

さらに、世界の実情を「自分事」に落とし込み、自分の人生や生活と照らし合わせて何ができるか一歩踏み込んで考えた社員の言葉も見られました。

●社会人になってから、発展途上国の医療サポート支援の寄付活動を微力ながら続けておりますが、こういった活動に役立てていたのか、と自分の小さなアクションを肯定してもらえた気がします。

●たくさんの子どもたちやその親を救っているということから思いは外側に向いているのではと勝手に想像していたのですが、何に時間を費やしたかが人生を作っているというお話で腹落ちしました。 自分は何に時間を使っているのか?何に時間を使いたいのか?問いかけてみたいと思います。

●世界にはこのような子供達がいることは知ってはいましたが、正直なところ見ないように知らないようにしていた部分でした。自分は何が出来るのかも分からないし、ただ悲しくなるだけだから見ないようにしていたのです。今回このような機会をいただき、もっと早く私も知っておくべきだったと思いましたし、𠮷岡さんのような方がいることも知っておきたかったと思いました。まだ私はどうすればいいのかは見つけられてはいませんが、まずは周りの人たちにこの話をしてみたり、募金など出来ることから始めてみようと思いました。

●自分とは少し遠い国の話、と捉えていたことが一気に身近に感じられるような心ゆさぶられる講演でした。 メディアやSNSを通じて、昔よりも世界の情勢を知れるようになった一方、目を瞑りたくなるような悲惨な状況からは目を逸らしてしまっていたような気がします。支援を必要としている人たちの助けになるために、自分は何ができるのか向き合いたいと思うきっかけになりました。 また、支援だけではなく、残された自分の人生を何のためにどう使うのか、𠮷岡先生のお話を聴いて改めて考えたいと思いました。

率直に表現すると、𠮷岡さんのお話の中に広がっていた世界の現実は悲惨なものでした。そこで目を覆いたくなる・耳を塞いでしまう・どこか遠くの世界の出来事だと考えてしまうことは、誰にでも共通して湧きあがる感情ではないでしょうか。

ただ、今回𠮷岡さんの講演を聞くことによって、社員の中には塞いでいた目や耳や心を開き、自分と関りのある出来事と位置付けた声もありました。𠮷岡さんがお話の中で「皆さんが想像されるより現場はとても明るい空気に包まれていて、体感として幸せを感じられる場です。」と仰っていたことも、勇気をもって現実を見つめる後押しになりました。

自分に何かできること――ワンアクションを模索する声もあり、それぞれが受け取ったメッセージを仕事や生活、ひいてはお客様のためにどんなふうに活かしていけるかを考えるきっかけになっていたようです。


オルビスでは「ORBIS ペンギンリング プロジェクト」を立ち上げ、子どもたちの未来を支援していきます。

𠮷岡さんが創設したジャパンハートもパートナー団体となっており、専用サイトからお手持ちのポイントを寄付することができます。

PROJECT back number

vol.7
2023.07.01

「お手伝いしましょうか」その一言が社会を動かすと知っていましたか?

vol.8
2023.05.08

里山再生に10年。 人と自然の共生を目指す、オルビスの森づくりとは

vol.2
2024.10.01

商品の先に見つめるブランドの未来

vol.3
2024.10.01

子どもたちの未来を創造できるように|デザイナーが見つめた想像力

vol.4
2024.06.26

手のとどくところにあるサステナブル|アースデイでの出会い

vol.5
2024.05.31

アクションが循環していく社会を目指して

vol.6
2023.10.30

環境と手を繋ぎ、ここちよい美しさを見つける | 清泉女子大学学生との対話

vol.7
2023.07.01

「お手伝いしましょうか」その一言が社会を動かすと知っていましたか?

vol.8
2023.05.08

里山再生に10年。 人と自然の共生を目指す、オルビスの森づくりとは

vol.2
2024.10.01

商品の先に見つめるブランドの未来

vol.3
2024.10.01

子どもたちの未来を創造できるように|デザイナーが見つめた想像力