あたりまえの夏休みを、すべての子どもに──2025年夏・キッズドアの支援活動
SUSTAINABILITY
「夏休みは、子どもたちにとって特別な時間」——そう感じる方も多いのではないでしょうか。
家族でお出かけしたり、お友達と遊んだり。夏休みは、子どもたちにとって本来わくわくする存在です。
けれど今の日本では、すべての子どもが笑顔で夏を迎えられているわけではありません。
経済的に困難な状態にある家庭の子どもたちのなかには、給食がなくなることで栄養が偏ってしまったり、日中も誰にも会わず、冷房のない部屋でただ時間が過ぎるのを待っていたりする子も。
学校がある時期にはお友達や先生との会話、そして給食が心の支えになっていた子どもや保護者にとって、長いお休みは憂うつに感じられることもあるのです。
そんな子どもたちと家族を支えているのが、認定NPO法人キッズドア(以下、キッズドア)の「ファミリーサポート」という取り組み。食料や日用品などの物資支援に加え、子どもたちへの体験活動の提供、保護者への就労支援など、家庭ごとの状況に寄り添いながら多面的なサポートを行っています。
オルビスがこうした活動を支援する背景にあるのは、未来を担う子どもたちが、経済的な理由であきらめることなく、自分の可能性を信じて未来に踏み出せる社会を実現したいという想い。「ペンギンリング プロジェクト」で集まったご支援もこの活動に役立てられ、子どもたちの安心や笑顔へとつながっています。
今回は、キッズドアがこの夏行った支援活動と、ファミリーサポートチームの声を通して、「子どもの夏休みに起きていること」をお伝えします。
子どもたちが置かれている現状に、お気持ちを寄せていただけたら嬉しいです。
数字の裏にある、子どもたちの困りごと
「子どもの貧困」と聞いて、どんな状況を思い浮かべるでしょうか。
今日食べる物や寝る場所すらもない――そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。でも日本では、そうした目に見える困窮ばかりではありません。
見た目ではわかりにくくても、実は暮らしの中でたくさんの我慢をしている子どもたちがいます。
日本では、子どもの約9人に1人が貧困状態にあると言われています。これは、クラスに何人か、近所の友達のなかにも、暮らしに不安を抱えている子がいてもおかしくないという数字です。
とはいえ、みんなと同じような身なりで、毎日同じように学校に通っていれば、家庭の経済的な苦しさは周囲には見えにくいもの。だからこそ、気づかれないまま孤立してしまうご家庭も少なくありません。
キッズドアが今年5月に行ったアンケートでは、全国の支援家庭2,033世帯から切実な声が寄せられました。
友達に誘われても遊びに行けないことも多い。文化祭の打ち上げなどに参加できないときがある。友達とファーストフード等に寄っても水しか飲まない。
(2025夏 キッズドア子育て家庭アンケートより)
友達とコンビニに行っても高いので何も買わないで見ているだけ。お友達が飲んでいた飲み物を、誕生日プレゼントに買って欲しいと子どもに頼まれた。
(2025夏 キッズドア子育て家庭アンケートより)
お米は高騰しており食べていない。お米だけではなく色んな物価高騰で生活が苦しい。お風呂に何日も入らないとかトイレ流さないとか細かい節約をしていても厳しい。食べるものもろくに買えず子どもに申し訳ない気持ちでいっぱい。
(2025夏 キッズドア子育て家庭アンケートより)
食費や生活費を切り詰める中で、子どもの“あたりまえ”の日常を諦めざるを得ない。そんな状況が、静かに広がっています。
キッズドアは、無料学習会や居場所の提供だけでなく、そうした家庭に向けて、食品や文房具の提供をはじめ、体験活動やイベントの実施など、さまざまな支援を届けています。
この夏も、多くの子どもたちやご家庭に笑顔が生まれる取り組みが行われました。
夏休み、“日常”を支える支援のかたち
物価高騰の影響がより色濃く現れた今年の夏。
キッズドアのファミリーサポートチームでは、支援家庭に向けて食料品や日用品などを詰め合わせた支援パッケージを届けました。
なかでも強いこだわりをもって準備されたのが「お米」。お米が買えないという声が多く届いていたことから、何があっても一世帯につき5キロのお米は届けよう、と準備が進められました。

▲夏の支援で届けたものの一例
・お米(5kg)・乾麺・パスタソース・レトルト食品・お菓子などの食品
・オルビスのスキンケア商品、シャンプーや柔軟剤、文房具などの日用品
・保護者の方にほっと一息ついてもらうためのカフェラテスティック、など
ファミリーサポートチームでリーダーをつとめる渥美さんは、夏の支援をこう振り返ります。
「食料が届いてほっとしました、という声を本当にたくさんいただきました。中には、『子どもの笑顔を見て、私も嬉しさが二倍になりました』という内容のものや、『一人で子育てすると決意したけれど、一人ではないんだと感じられました』という声もありました。食料品は“モノ”かもしれませんが、それ以上の何かを届けているのだと実感しています。誰かが自分たちのことを気にかけてくれているというあたたかさや安心感も、一緒に届いているのだと思います。」
物資を届けること、そして「あなたのことを想っている人がいる」と伝えること。それが、子どもたちが未来を前向きに思い描くきっかけとなり、保護者の方々の力にもなっているのです。
“当たり前の夏”を、すべての子どもに
「届いた食材を見て、『今日はどれから食べようか』と親子で話すようになった」
キッズドアのファミリーサポートチームが大切にしているのは、食料や体験を「届けること」だけではありません。届けたものを通して、ご家庭の中の選択肢が増えていくこと。そして、家族のあいだで自然と会話が生まれたり、久しぶりに笑い合う時間ができたり――そんな変化こそを大切にされています。
この夏は、食料支援以外にも、スポーツ観戦や自然体験、企業訪問など、非日常を味わえるような体験の機会も数多く用意されました。「どこにも行けない」と諦めていたご家庭にとって、子どもたちが心から楽しめる貴重な夏の思い出となったようです。
「外出する余裕がなかったけれど、イベントのおかげで家族で楽しい思い出ができた」
こうした声も活動の大きなやりがいになっていると、渥美さんは語ります。

キッズドア ファミリーサポートチーム・渥美さん
秋以降も、子どもたちへの支援は続きます。キッズドアがこの秋に予定している物資支援として、新品の靴をプレゼントするプロジェクトがあります。成長の早い子どもにとって、靴はすぐにサイズアウトしてしまう消耗品。それでも「靴代が払えない」「きつくても親には黙って指を丸めて履いている」「箱に入ったまっさらな靴を見たことがない」といった声が、キッズドアには多く寄せられています。
「だからこそ、新品の靴をプレゼントすることには意味があるんです」と、渥美さんは言います。汚れのない真新しい靴に足を通す、そのささやかな体験までもが、子どもたちの心に残る特別な記憶になるように。そう願いながら、一足ずつ丁寧に準備されています。
子どもたちの笑顔のそばに、あなたの支援がある
オルビスでは、「ペンギンリング プロジェクト」を通して、キッズドアへの支援を続けています。皆さまが寄付ポイントを通じて届けてくださるあたたかな気持ちが、目の前の子どもたちの笑顔へとつながっています。
キッズドアのファミリーサポートチームからも、こんな感謝の声が届いています。
「私たちだけでは実現できないことも、皆さまがいてくださるからこそ、少しずつ形にすることができています。本当にありがとうございます。子どもの支援に目を向けるというのは決して当たり前ではない中で、こうして共に歩んでくださることが、心からありがたく、嬉しいです。皆さまの大切なポイントやお金を託していただく以上、私たちはその信頼に応える責任があると感じています。これからも信頼できる団体であり続けることで、確かな支援を子どもたちとご家族へ届けていきたいと思っています。」
おわりに
渥美さんは、「自分のまわりにいる子どもたちにも目を向け、みんなで育てていける社会をつくっていきたい」と話します。
たとえば、泣いているお子さんを抱えたお母さんに「大丈夫ですか?」と声をかけること。
困っている様子の子どもがいたら、少しだけ気にかけてみること。
その積み重ねが、子どもにとっても大人にとっても、少しずつあたたかい社会を形づくっていくのだと思います。
オルビスはこれからも、「ペンギンリング プロジェクト」を通して未来を歩む子どもたちの応援を続けていきます。
皆さまとともに、やさしさの輪が広がっていきますように。
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