2023.12.13

選択するたびに新しい自分が形成されていく 山瀬まゆみ

PROJECT

ことなるわたしたち

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

アーティスト山瀬まゆみをホスト役に、様々な女性の生き様を掘り下げていく連載『ことなるわたしたち』。ウェディングプランナーの黒沢祐子さんをゲストに迎え、“キャリアと結婚”をテーマにご自身のこれまでの生き方を語りあった。

その対話を通じて印象に残ったインスピレーションを1枚の絵に残した山瀬。今回彼女が感じたこととは?

取材は黒沢さんの拠点のひとつ、鎌倉で行われた。現在彼女は東京と鎌倉、二つのベースを持つ。

「ちょうど取材中に“シャインマスカット”の宅急便が届いたんです。黒沢さんがそのまますぐに封を開けて、私たちに振る舞ってくれて。その立ち振る舞いが黒沢さんの人柄というか、“らしさ”を感じた気がしました」

黒沢さんの気遣いと優しさを感じたひとときを山瀬は絵にした。

__決断、そして行動力

黒沢さんの印象はそれだけではない。優しさの中にも芯のある強さが取材の中で現れていた。

“選択肢を与えられ、自分が一番選ばないものを選ぼうと決めました。それが、神戸のエリアマネージャーというポジション。関西には友達もいないし、東京から出る機会はこれくらいだろうなって。想定以外のことを選んだほうが面白いですし、新しい自分になれるような気がしてワクワクするじゃないですか”

「この話を聞いた時、私の留学時代を思い返しました。私自身も、誰も知らない土地に身を置いた時があって。大学進学の時に留学することを決めて、縁もゆかりもない“ロンドン”を選んだんです。幼少期はアメリカに住んでいたということもあって、あえてアメリカは選びませんでした。当時を振り返ると、馴染みのないところに行った方が自分を鍛えられるって思っていたんですよね。簡単すぎるんだったら行く意味がないって。当時はチャレンジ精神が溢れ出てる年頃だったから、結果よりも、未知の場所に行くことを選ぶっていう決断自体に意味や意義があるって思っていて。今の年齢になるとなかなか難しいこともあるかもしれないけど、黒沢さんの生き方をみていたら、“行動力”に年齢は関係ないんじゃないかなって改めて思い直しました」

__子育てとキャリアの両立

もうひとつ、山瀬が印象に残ったエピソードとして挙げたのが、“これからの時代の女性には仕事も子どもも両方を手に入れてほしい”という考え方だ。

山瀬の両親は共働きで、小さい頃から母親には仕事がありながら子育てもしているということが当たり前という環境で育てられた。だからこそ黒沢さんの言葉はすんなりと受け入れられたそうだ。

「姉と私、子どもふたりを育てながら働いていた私の母は、いつも“子どもを産んだことが一番人生の中で良かった出来事だ”とよく言っていました。そのせいか、私もいつかは子どもを産んで、結婚をして、子育てをするものだってぼんやりとは感じていました。母は、一度も仕事を辞めず、70歳を過ぎた今でも働いています(笑)。そんな環境で育てられたこともあり、私はキャリアを持ちながら子どもを育てるということをあまり特別なことに感じていなかったのかもしれません。もちろん、いろんなことが当たり前のことじゃないから、その選択があっても選ばない人もいる。それは人それぞれでいいと思います」

「ただ、黒沢さんの話を聞いて、妊娠するには年齢的なタイムリミットがあるということはリアルに感じました。歳を重ねるごとに感じるのは、こういう選択をしなければいけないタイミングは一瞬で過ぎていくということ。気を許していたらあっという間に1年なんて過ぎ去っていく。だからこそ、その“今”の時間を大切にして、ちゃんと自分にむき合って考えていかなければいけないのかなって思いました」

山瀬はこの連載中に妊娠をして、来年には母親になる予定だ。きっとその後も仕事は続けるだろう。そして、仕事と子育ての両立の形は彼女自身が見出していくのだろう。様々な女性の生き方が紡がれ、今後も女性にとっての選択肢は少しずつ広がっていく。

Profile

黒沢 祐子 Yuko Kurosawa

Wedding Lifestyle Producer。大学卒業後、OLを経て、(株)Plan・Do・Seeでウェディングプランナーに転身。7年以上現場を経験した後、より密にお客様と対峙しパーティを作り出せる環境を選択すべく、2008年より会場探しから共にするフリーランススタイルで再始動。2016年には、(株)YUKOWEDDINGを設立し、現在までおよそ1000組ものカップルを担当する。20年以上weddingに関わる中で、新郎新婦のその後の生活を豊かにする空間やライフスタイルに興味を持ち、2020年鎌倉へ移住したことをきっかけに、同年9月にライフスタイル事業を開始。個人宅のインテリア相談やパーソナルコーディネート、自宅でのフローリストを招いてのワークショップ開催や洋服プロデュース、また2022年からは自身のオンラインサロン「Y’s room」を主催し、ウェディング&ライフスタイルプロデューサーとして、幅広く活動中。

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。

Photo Mai Kise / Text Chie Arakawa / Edit Ryo Muramatsu

PROJECT back number

vol.1
2024.04.24

あきらめずに挑んで、すべてを好きになっていく  浅野美奈弥

vol.2
2024.04.10

自分で選択した道は信じて貫く 大村佐和子

vol.3
2024.04.02

母になる。かわる環境と、かわらない気持ち。 山瀬まゆみ

vol.4
2024.03.06

自分の中での選択肢を増やしていく 山瀬まゆみ

vol.5
2024.02.21

枠にハマらない。ちょっとずつ抵抗しながら生きる haru.

vol.6
2024.02.08

作ることを通じてつながりを生み出していく haru.

vol.7
2024.01.25

大人の友だちって? 母親になることって? 山瀬まゆみ

vol.8
2024.01.11

“オバサン”に込められるコンパッション 堀井美香

vol.9
2023.12.27

誰かと比べない人生がはじまった 堀井美香

vol.10
2023.12.22

続けること。歳を重ねていくこと 山瀬まゆみ×haru.

vol.12
2023.11.22

仕事も結婚も子どもも、あきらめない生き方もある 黒沢祐子

vol.13
2023.11.08

逆境の中でつかんだ新しい自分 黒沢祐子

vol.14
2023.11.01

楽しませるためのクリエイティブってなんだろう? 山瀬まゆみ

vol.15
2023.10.19

自分ひとりでは表現は生まれない アオイヤマダ

vol.16
2023.10.05

“みんな”ではなく身近な人のために アオイヤマダ

vol.17
2023.08.10

「今を生きる」とは。心がスッと軽くなるおまじない 山瀬まゆみ

vol.18
2023.08.03

リアルな女性の悩みに、作家・川上未映子が寄り添ったなら

vol.19
2023.07.25

勇気をもって、「今」を生きていく 川上未映子

vol.20
2023.05.23

自分にとってここちよい環境をどう見出していくか  山瀬まゆみ

vol.21
2023.05.09

人生の分岐点で「透明」になる。未知なる自分に出会うため 安藤桃子