2023.12.22

続けること。歳を重ねていくこと 山瀬まゆみ×haru.

PROJECT

ことなるわたしたち

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

2023年11月24日(金)に開催されたORBIS IS初となる読者イベント「つながるわたしたち」。読者と読者、さらにはコントリビューターと読者がリアルにつながることを目的に開催された本イベントでは、「ことなるわたしたち」の山瀬まゆみと、「月曜、朝のさかだち」のharu.の2人がゲストとして登壇し、トークセッションを行いました。

今回のテーマは、「続けること」と「歳を重ねること」。山瀬とharu.が自分の人生を振り返ってふと思った気づきや想いに触れながら、参加者も交えてのトークへと展開していきます。

__2人にとっての“続けること”とは?

haru._私は、あまり自分の意思でいろんなことを選んでこなかった人生でした。親の都合による引っ越しで、幼少期と思春期をドイツと日本を行ったり来たりして過ごしました。なので、物理的にコンスタントに続いた人間関係というのがあまりなくて。地元と呼べる場所がないというか、そのため地元を持っている人に羨ましさは感じますね。でも、そういう意味では同じ場所、環境に居続けながら、何かを続けていくという感覚があまりないのだとも思います。

私にとっての“続ける”という捉え方は、“自分が心地よくいられることを続ける”という感覚なんです。私は、“今の自分を発信する”ということがすごく好きで。好きなことをすることは心地いいじゃないですか。高校生からブログを書き始め、その延長線上で大学在学中は雑誌を仲間と共に作ることにしました。Instagramもずっとやっていますね。人生をネタにしながら、自分を発信し続けること。それは高校時代から変わってないこと。あと、歩きながら考えることが好きなので、ウォーキングも続けています。

山瀬_私はランニングが趣味なんですが、走っている最中に考えることは好きなので、haru.さんの気持ちはよくわかります(笑)。あと私は、絵を描くことは続けていることかなと思います。20代前半で留学先のイギリスから日本に帰ってきて、絵だけでは食べていけないという時期もありました。英語の翻訳をしたり、その流れで編集者になったりもしましたけど、やっぱり絵を描き続けたいっていう気持ちがあって。続けていたからこそ、今アーティストとしてここにいられる。スポ根じゃないですけど、苦しくても続けていくことで見えてくる境地みたいなのもあるじゃないですか。それこそパートナーや友達との人間関係とかも、常にいい状態ではない。山あり谷ありがあって、ある時に深まる、ということもありますよね。

haru._人間関係でいうと、辞めてみて気づくことも逆にありますよね? 例えば若い頃、学校で起きてることって、もう世界の全てに思えるじゃないですか。こう思われたら嫌だなとか、あそこに自分が介入してったら変わっちゃうかもみたいなことで悩んでいた。でも、卒業して振り返ったら、問題の解決策は実はシンプルだったということに気づく。職場環境に対しても、辞めてみたらその会社の状況が客観的に見れて気持ちの整理がついたとかってあると思うんですよね。

続けること、辞めてみて気づいたこと。様々な局面を経験して歳を重ねてきた2人は“歳を重ねること”に対してポジティブな意見を持っていました。

__“歳を重ねること”は生きやすくなること

山瀬_若い頃は自分の意見がそんなに通らない感じがしていて。“若いから”というだけで、なんというか年齢で差別されているような感情になることがすごい多かったんですよね。だんだん自分も歳を重ねていくうちに経験値が高まってきて、いろんな人にも相手されるようになった実感が湧いていて。意見を言っても通ることが多くなって、楽しくなってきたというのはあります。

haru._私の若い頃は問題だらけの10代だった気もしていて。日本語が通じないドイツに行き、環境が激変したことにより、高校時代は摂食障害になってしまった経験もしました。思い返すと、物心がついてから、たかだか10年の経験しか得ていないわけで。今28歳になって、その経験が倍になって、振り返るページも増えました。だからこそ、こうしたらいい、という選択肢が増えた気がするんです。30歳間際に、やっと自分が思い描く人生みたいなものが生きれるような気がしてきたという感じはあります。

山瀬__ただ、ネガティブな部分では体力的な不安はありますよね(笑)。読者のアンケートでも多かった気がします。ただ、身体の老化を懸念しているのであって、見た目に対しての“老い”に関してはそこまで不安な気持ちにはなっていないですね。

haru._日本にいると、“若さ”が価値として高いというか。日本だけではなく、世界中でそういう風潮はあるじゃないですか。でも、ヨーロッパにいた頃に感じたのは、成熟した大人の女性にみんな価値や評価を持っていた。だからこそ、成熟することは憧れであり、みんなが早く大人になりたがってるというのをすごく感じていたんです。でも日本にいると、成熟を止めなければいけない、そんな感覚を抱いてしまいますよね。20代は可愛くいればいい、その先の年齢を重ねた時のその女性が理想とする“像”みたいなものが、なんかすごくぼんやりしてるんですよね。積み重ねてきたことの美しさや知性というのがあまり評価されてない気がしています。

第一部の2人のトークに続き、今回はイベントに参加いただいた20代〜40代と幅広い年齢層の女性達が教えてくれたエピソードを紹介します。

__みんなにとって「続けること」とは?

「私は社会人になってから23年間、転職をしたことがありません。私にとって同じ会社に勤務していることが続けていることなのです。現在、高校生になる娘から文理のどちらのコースを選ぶべきか相談を受けていて。ですが、同じ会社の経験しかしていない私にとって、選択肢の幅を広げられるようなアドバイスができません。今回登壇してくださった皆さんはいろんなキャリアを重ねていると思うので意見を聞かせて欲しいです(参加者A)」

ここで、山瀬が挙げたのは「ことなるわたしたち」で作家・川上未映子さんとの対談した際のエピソードでした。実際のご本人の言葉と合わせてここで紹介します。

*山瀬が川上さんとの対談を終え、取材を通して抱いたインスピレーションをもとに描いた作品。
“よくAという選択とBという選択があったって考えがちだけど、結果はやっぱり比べられないですよね。歩める人生はひとつしかないから。どちらかを選んで振り返ってもどちらかが良かったなんてわからないこと。だからこそ、大切なのは今の自分の状態、今の気持ちなんだと思います”

山瀬_川上さんと対談した時、本当にその通りだなって思ったんです。川上さんのお子さんが犬を欲しいといった時に、後先の大変さよりも子犬のフワフワ感とか、子どもの頃に動物と暮らす経験というか、その時にしか感じられないことを重視してもいいんじゃないかって。ですから選択するときは、“今”の自分としっかりと向き合って、その時、自分の経験したことを娘さんに伝えてあげるだけで何か感じてもらえるものがあるんじゃないかって思うんです。

__わたしたちにとって「歳を重ねること」とは?

続いて、年齢を積み重ねていくことをテーマにした際のエピソードも紹介します。

「歳を重ねることは、ポジティブに捉えています。20代前半で出産したということもあり、現在、私は38歳ですがママ友の中では最年少のことが多く、歳をとるほどに、周りと対等になっていく感じがしています(参加者B)」

「現在私は34歳で、同世代が結婚をしていっています。でも、私自身は結婚にまだ興味がないし、今は大好きな趣味や仕事とのバランスに満足しています。ただ、年齢的に社会からの結婚というステージへの期待があることもわかっていて……(参加者C)」

参加者たちのエピソードからも見てとれますが、女性には多くのライフステージがあることが垣間見えました。

イベント後にはこんな参加者からの声も届きました。

“知らない人の中で自分のことを話すことは少し緊張するけれど、普段は家庭でも仕事でも役割や目的を背負った語りをしていたことに気がつきました。役割を考えず話せて、温かく聞いてもらえることが心地よかったです”

“いろんな方のお話を伺うことも出来て、温かい空間でした。 誰にも物語があって、誰もが主役で、それが垣間見られたのがよかったです”

私たちは、自分の人生を生きています。対話を通して繋がったことで、誰もが“ことなるわたし”であり、それぞれの考えや価値観をもって生きていることに改めて気づかされました。

今後もORBIS ISでは、人を介してここちよい距離感を保ちながら、皆さんの人生に寄り添っていきます。そして、また読者とのコミュニケーションを通してつながりを深められるような会を催せたらと思います。

 

Profile

haru.

東京在住。学生時代に同世代のアーティスト達とインディペンデント雑誌HIGH(er)magazineを編集長として創刊。2019年に株式会社HUGを立ち上げ、仲間とともに働き方を模索中。「自分たちに正直でいること」をものづくりのモットーに掲げる。

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。

Photo Mai Kise / Text Chie Arakawa / Edit Ryo Muramatsu

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