2024.1.25

大人の友だちって? 母親になることって? 山瀬まゆみ

PROJECT

ことなるわたしたち

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

アーティスト山瀬まゆみをホスト役に、様々な女性の生き様を掘り下げていく連載『ことなるわたしたち』。フリーアナウンサーの堀井美香さんを迎え“コンパッション”について語り合ったふたり。人生の先輩から教えてもらったコンパッションを山瀬は一枚の絵に残した。

__柔く、芯のある人

“大人になってからの友達作りは、“努力”です。学生時代なら、学校があるので必然的にずっと一緒にいられる時間がありますが、この年になると時間もかかります。スーさんとはすぐに気が合うと思いましたし、1年目から放送ではワイワイやってましたけど、車中で喋らずにいられる、中年夫婦みたいな関係になるまでに、8年かかってますから”

「特に心に響いたのは、大人になってからの友達作りに対しての、この考え方ですかね。私だったらすぐ答えられないかもしれないと思いました。“努力”という言葉は、本当にその通りだなって。それ以上の言葉が浮かばなかったし、当然な言葉でもあったし、それを即答して一言でズバッと言い切ってくれたのはかっこいい!って思いましたね」

美香さんの声色はふわふわとしていて優しい。それでも芯がある。彼女の発信する言葉も然りだった。そんな彼女のイメージが今回の絵からも伝わってくる。

「私は人付き合いが苦手ではないので、気になるタイプの人がいたら積極的に自分から誘います。ただ、妊娠してからは時間の流れが少し変わった気がします。お酒も飲まなくなったので、夜のお誘いに、みんなが集まってるところへ軽いノリで行くことはほとんどなくなりました。今までは週に5回飲みに行っているなんていう時もよくありました(笑)が、体のことを考えると、週に1回だけにしよう、とか。そうなると誘う相手も、会いたい人も変わってくるというか。友人関係を掘り起こして久しぶりに会ってみたいな、と思う人に連絡をとってみたりするようになりました。人付き合いが広がっていくというよりは、会う時間が濃くなった、そんな感じがしています。大人になっていくにつれ、時間はこうやって限られていくのかもなって」

環境が徐々に変わっていき、歳を重ねるステージの変化に気づき始めた山瀬。

「記事にはならなかったんですが、美香さんが10歳以上年上の方とのお付き合いは積極的にしていると言っていて。そこもすごく共感できました。私は末っ子なんで、年上の人が好きなんですよね。人生のキャリアというか、長く生きている分だけ、いろいろなことを知っているじゃないですか。そういう人たちの話を聞いていると“なるほど”と勉強になることが多いんです」

これから出産を迎える山瀬にとって、母である美香さんの言葉はどう響いたのだろう?

__母として

“仕事でいつも一緒にいられないから、仕事以外の時間はすべて子どもに費やしたかったんです。子どもが成長するに従って、仕事と子育てにかける割合は変わっていきましたけど、子ども達が小さい頃は気持ち的には10:0で子ども優先でした。子どもたちにしたら、相当重かったと思いますけどね(笑)”

「実は私の母も美香さんと同じ秋田出身なんで、話を聞きながらなんとなく美香さんと母を重ねていました。全然、真逆のタイプなんですが、子どもに対しての愛情深さというところは似ていて。私はどんな子育てになるんだろうって、楽しみになりましたね。母親は一人しか知らないので、いろんな子育ての仕方を聞くのはとても興味深かったです」

立場や環境が変われば、人との付き合い方も変化していく。自分を感じ、誰かと対話を続けて寄り添い合いながら歩むこともコンパッションの一つと呼べるのかもしれない。

Profile

堀井美香 Mika Horii

1972年、秋田県出身。法政大学法学部を卒業後、1995年にTBS入社。アナウンサーとしてTBSに27年間勤めた後、2022年3月に退社し、フリーアナウンサーとして活動する。現在は、バラエティ番組をはじめ、さまざまなCMでもナレーションを担当するほか、「yomibasho PROJECT」として自身が主催する朗読会は、チケットが即完売するほど注目を集める。ジェーン・スーさんとパーソナリティを務める『OVER THE SUN』は、毎週金曜日17時よりエピソード配信中。著書に『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社。50歳からの独立日記』(大和書房)がある。

山瀬まゆみ Mayumi Yamase

1986年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、高校卒業と同時に渡英。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に活動する。抽象的なペインティングとソフトスカルプチャーを主に、相対するリアリティ (肉体)と目に見えないファンタジーや想像をコンセプトに制作する。これまでに、東京、ロンドン、シンガポールでの展示、またコム・デ・ギャルソンのアート制作、NIKEとコラボレーション靴を発表するなど、さまざまな企業との取り組みも行っている。

Photo Satomi Yamauchi / Text Chie Arakawa / Edit Chie Arakawa, Ryo Muramatsu

PROJECT back number

vol.1
2024.04.24

あきらめずに挑んで、すべてを好きになっていく  浅野美奈弥

vol.2
2024.04.10

自分で選択した道は信じて貫く 大村佐和子

vol.3
2024.04.02

母になる。かわる環境と、かわらない気持ち。 山瀬まゆみ

vol.4
2024.03.06

自分の中での選択肢を増やしていく 山瀬まゆみ

vol.5
2024.02.21

枠にハマらない。ちょっとずつ抵抗しながら生きる haru.

vol.6
2024.02.08

作ることを通じてつながりを生み出していく haru.

vol.8
2024.01.11

“オバサン”に込められるコンパッション 堀井美香

vol.9
2023.12.27

誰かと比べない人生がはじまった 堀井美香

vol.10
2023.12.22

続けること。歳を重ねていくこと 山瀬まゆみ×haru.

vol.11
2023.12.13

選択するたびに新しい自分が形成されていく 山瀬まゆみ

vol.12
2023.11.22

仕事も結婚も子どもも、あきらめない生き方もある 黒沢祐子

vol.13
2023.11.08

逆境の中でつかんだ新しい自分 黒沢祐子

vol.14
2023.11.01

楽しませるためのクリエイティブってなんだろう? 山瀬まゆみ

vol.15
2023.10.19

自分ひとりでは表現は生まれない アオイヤマダ

vol.16
2023.10.05

“みんな”ではなく身近な人のために アオイヤマダ

vol.17
2023.08.10

「今を生きる」とは。心がスッと軽くなるおまじない 山瀬まゆみ

vol.18
2023.08.03

リアルな女性の悩みに、作家・川上未映子が寄り添ったなら

vol.19
2023.07.25

勇気をもって、「今」を生きていく 川上未映子

vol.20
2023.05.23

自分にとってここちよい環境をどう見出していくか  山瀬まゆみ

vol.21
2023.05.09

人生の分岐点で「透明」になる。未知なる自分に出会うため 安藤桃子