丹沢湖でサップをする朝 haru.×Jo Motoyo【後編】
月曜、朝のさかだち
『月曜、朝のさかだち』第13回目のゲストには、映像監督のJo Motoyoさんをお迎えしています。丹沢湖でサップを楽しんだ二人は、映像や広告業界で働くことの楽しさや葛藤、Joさんが映像監督を目指したきっかけについてお話しいただきました。後編ではこれまでのJoさんの作品についてや、子育てと仕事の両立、Joさんの自分のほぐし方についてたっぷりお話しいただきました。
いろんな人の人生を交差させるJoさんの魔法
haru._前編では今までJoさんが制作されてきたコマーシャルの映像の話をたくさんしてくださったと思うのですが、Joさんは個人的な作品も制作されていますよね。
Jo Motoyo(以下:Jo)_一番初めに作ったのが『Midnight(邦題:0時)』*①っていう5分くらいのショートフィルム。それをきっかけにいろんな人に名前を知ってもらうことになったんです。実は今、初の長編を作っていて、それにかなり苦戦してる。毎日へこんで泣いています。
haru._『Midnight』は私も拝見させて頂きました。Joさんが映像を始めるきっかけは「魔法使いになりたかった」って言っていましたけど、それがすごく意外に感じるほど、リアルな痛みに寄り添う作品だったなと思っていて。
Jo_「自殺しようとしている女の子が最後にかけた電話が119番だった」っていうタグライン(※映像の内容を短く表す文章)があるんだけど。それを5分にストレッチさせた作品。あれは自分の話ではないんだけど、自分の見せたくない部分を初めて人に見せた作品で、『Midnight』を作ってからは、何を作るにしても恥ずかしさがなくなりました。
haru._見せたくない部分っていうと、具体的にどんなことだったんですか?
Jo_私は中学や高校を全然楽しめなくて、不登校気味だったんだけど、そういうことってあまり人に言いたくなかったし、友達関係でうまくいかなかったこととか、対人関係においてすごく不安を抱いていることとか。でもあの作品を作ったことをきっかけに、オープンに話せるようになったし、いじめられていたことや友達が全然いなかったことをシェアしたことで、いろんな人がそういう話をシェアしてくれるようになったんです。そういう意味でも人生を変える一作になったような気がしています。
haru._たった5分の映像だけど、女の子が119番に電話をかけて、その電話をとった消防の受付の女性が、その女の子の言葉に耳を傾けているんですよね。その間女性は言葉を何も発さないんですけど、そこにある緊張感や、話を聞きながら受付の女性の人生を振り返っていく描写が描かれていて。5分間なのにすごく長く感じるというか、人生単位で引き伸ばされる感じがあってすごく不思議な感覚でした。
Jo_ありがとう。結構昔に作ったから、遠い記憶なんだけど、たまに見返すと本当に恥ずかしい。反省点もいっぱいあるんだけど、今haru.ちゃんが言ってくれたことは、実はすごく意識したこと。1日で撮影しなくちゃいけなかったし、超タイトバジェットで、できるだけ演出を省かなきゃいけなかったりと、いろんな裏事情があったんだけど、あのときにできることは全部やったと思ってる。魔法はまだ使えなかったけど。
haru._今思い出したんですけど、カラオケボックスの中でいろんな人のいろんな時間が映し出されるシーンがあるじゃないですか。そのなかで女の子同士がキスしようとしている描写が入っていて、あれは映像が成せる技というか、他人の人生が交差している瞬間を捉えるのって結構魔法のような一瞬だったなって思いました。
Jo_すっごく嬉しい!私は群像劇が好きっていうことに一週間くらい前に気づいたんです。最近のCMの風潮として、1対1の会話劇みたいなものがめちゃくちゃ流行っている気がしていて、15秒や30秒のなかにいろんな情報を詰め込む。そういう映像も素敵だと思うけど、私はできるだけたくさんの人の人生を切り取って、いろんな人生があるっていうことを描くことが多い。それがバラバラのものではなく、実はすごく繋がっているみたいなことをずっと意識して生きてきているから、そういうのを自分はやりたいんだろうなっていうのに最近気づいた。
haru._初期の作品でもそれは映し出されていたんですね。
Jo_そうみたいで嬉しいし、発見してくれて嬉しい。
「お母さんは多種多様」
haru._今は会社にフリーランスとして所属されていますけど、その前は会社員として働いていたんですか?
Jo_そうなんですよ。社内でディレクターをやっていました。時折DMとかで「どうやってディレクターになったんですか?」って聞かれるんだけど、答えが本当に難しい。ディレクターって名乗ったらディレクターみたいな部分もあるし、私の場合は運良く今の会社に入って、すぐに仕事がポンポン決まって、作品作ってポートフォリオにして、また別の作品を作るっていうのが続いていたの。激務だったけど、それが続いたから今がある気がしてる。だから若いディレクター志望の人に何かを教えてあげたり、アドバイスをしてあげられないんだけど、私はそういう感じだった。退社の理由は子どもが生まれたことをきっかけに、会社の仕事のスタイルに捉われない働き方をしたいなと思ったのと、映像監督以外のこともどんどんやっていきたいと思っていたから。
haru._Joさんはフォトグラファーとしても活動されていますもんね。
Jo_会社にいた頃から実はやってたんだけど、あまりオフィシャルにはできなかったの。でも辞めてからはオフィシャルに受けることもできるし、クリエイティブディレクションをやらせてもらったり、小さな案件からやったりしてる。haru.ちゃんには話したけど、私は5本指靴下がめっちゃ好きで、5本指靴下のブランドを作りたくてこの1年半ぐらいコツコツやってたりとかする。そういう今まで自分がやってこなかったことをやっていきたいなと思って会社を辞めたっていうのもある。
haru._5本指靴下のブランドめっちゃ楽しみです。
Jo_ありがとう(笑)。出来上がったらすぐharu.ちゃんに渡すね(笑)。
haru._すぐ履きます。5本指靴下ってすごくいいって言われる割にあまり可愛いやつないじゃないですか。
Jo_そうなの。自分が履きたいと思うものがあまりなくて、だから自分で作ろうと思ったのが始めたきっかけ。とはいえ、まじで時間かかっちゃったんだけど。
haru._会社を辞めた理由の一つとして出産もあったっておっしゃっていましたけど、出産を経てすぐに仕事復帰されていましたよね。子育てと仕事の両立ってどういうふうにしているんですか?
Jo_実は出産直後くらいから結構不安にかられちゃったんです。社会から置いていかれてるかもって。こんなこと言うと不安を煽っちゃうかもしれないけど、本当にそうじゃないお母さんもいっぱいいるから、今妊娠してる人や、これから子どもが欲しいと思っている人は全然心配しなくていいのに、そのとき私はそういうふうに感じてしまって。だから現場要員とかアイデア出しとかですぐに仕事復帰して、子どもが8ヶ月くらいになったときに保育園に入れました。そこからすごく気持ちも楽になって、育児してる自分と、Jo Motoyoとしての自分がいるバランスがとれた瞬間があったんです。だからあまり子育てをしながら仕事をするのは今のところ全然苦じゃない。でも、こんなふうに早く仕事復帰する人もいるけど、2、3年子どもと一緒にいたり、もっと長い間専業主婦として子どもと一緒に過ごしているお母さんもたくさんいるから、みんな不安になる必要はなくて、いろんなお母さんがいる。
haru._正解とかじゃないですもんね。
Jo_お母さんになると、お母さんっていうレッテルが貼られがち。だけど私は子どもを保育園に通わせてびっくりしたことがあって。子どもを預けて保育園から出ると、みんな子どもがいるように見えないんだよね。まじでお母さんに見えないっていう感じの人がいっぱいいる。女性として生きてるときって「女性は多種多様である」ってことを感じることができるけど、「お母さんが多種多様である」ことってまだあまり認知されていない気がする。だけど本当にお母さんも多種多様だし、お母さんになってから失われるものって全然ない。みんなにもそういうふうに思ってほしい。
haru._だって今のJoさんが、私が出会ってから7年間のなかで一番イケてますよ。
Jo_え!嬉しいんだけど!私、本当に幸せなんだよね。子どもと出会えてよかったって思ってる。
haru._Joさんが毎年私とパートナーの写真を撮ってくれるんですけど、まだ赤ちゃんがお腹にいるときに撮影してくれたことがあって、「つわりが一切なかったわ!」って言ってたのをすごく覚えてる(笑)。
Jo_第一子と第二子で全然違うとか言うんだけど、あの時はまじでなかったから、出産する数週間前までゴリゴリに撮影してた。もちろん人によるんだけどね。でも、妊娠や出産に対して、最近の人たちは割と理解して仕事を一緒にしてくれるから、チャンスが減るかもとかあまり思わなくて大丈夫。私の場合はそうだったし、社会はすごく変わってきてる気がするから、みんなあまり心配しなくて大丈夫ですよ。
他人に任せることも大切
haru._Joさんは普段どのように凝り固まった身体や心をほぐしていますか?落ち込んだりすることはありますか?
Jo_私、すごく落ち込みやすい性格で、思い詰めがちなんです。なので最近はサイクリングをするようになりました。元々身体を動かすことがそんなに好きじゃないし、最近はすごく暑くて身体を動かすのもちょっと難しいなと思っていて。そんななかでも手軽にストレス発散できそうだなと思って、サイクリングを始めてみました。
haru._朝にですか?
Jo_そうです。子どもを保育園に送った後にそのまま15分くらいサイクリングをするんですけど、風を感じられてスッキリできるんです。いうほど汗もかかないので。
haru._私は今日7時に家を出たのに外が暑くて、脳が歩いていることを認知できないぐらいゆっくり歩いています(笑)。なのに汗だくになっちゃうけど、自転車ならいいのかな?
Jo_風があると体感が全然違う気がする。でも今は本当に異常気象で暑いよね。将来が不安。
haru._Joさんは私から見るとポジティブなエネルギーをすごく発しているから、思い詰めたり悩んだりっていうイメージがあまりないんです。もちろんみんなあると思うんですけど。そういう印象だからこそ、パブリックイメージと自分の本当の状態との乖離もあるのかなってちょっと思いました。
Jo_「強い女性」みたいなことをよく言われるんだけど、自分ではそんな自覚が全然なくて。ポジティブでいられるように努力してるんです。脳みそって一度シナプスっていう神経回路と神経回路の連続を作っちゃうと、そのループの中で思考が固まるものらしくて。だからネガティブな思考を続けてると、ネガティブな思考になりがちだし、ポジティブな思考を続けると、ポジティブになりがちっていうのを知ったんです。だから今のパートナーと出会ってから10年ずっと習慣づけとして続けています。それはものすごく自分が努力したことの一つ。
haru._変えようと思って変えたことなんですね。
Jo_あまりにもネガティブすぎて、今のパートナーに迷惑をかけてると思ったし、一緒にいられなくなる未来があると思ったの。だからポジティブになるための本をたくさん読んだ。あとストレス発散でたくさん本を読むっていうのも実はある。読書量が増えると、ストレス感じてるんだなって思うことがあって、たぶんそれは何かの答えを探してるんだよね。
haru._一つの物差しなんですね。今めっちゃ本読んでるから、ストレス溜まってるんだなって。
Jo_そうそう。あと私は月1で行ってるんだけど、みんな気軽にセラピーに行ったほうがいいってすごく思ってる。もっとみんなメンタルヘルスについて考えて、プロと一緒に相談しながら自分と付き合っていく方法を見つけるのがいいと思う。カウンセラーもいっぱいいるから、一人のカウンセラーと合わないから諦めるんじゃなくて、いろんなカウンセラーと会っていけば、合う人が必ずいる。その人と長い関係を築いていくのもすごくいいなって思う。私はたまたま2人目ですごく合う人に出会えたんだけど、その人とも最初は合わないなって感じていたの。だけどだんだん合うようになってきて、今はその先生と話すのが自分の思考整理に役立ってる。
haru._悩みがなくても行っていいんですか?
Jo_もちろん。月1で行ってるけど、なんでもない話をして終わることもあるし、何も言われないことも全然あります。でも、相手はプロだから、必要なタイミングで的確なことを言ってくれたり、「今はたぶんすごく高負荷状態でストレスが強い状態だから、時計の針の音を聞いたりしましょう」とか具体的なアドバイスをくれたりする。
haru._その話で思い出したんですけど、「自分の機嫌を自分でとる」みたいなことってすごく求められるし、結構定番になってきてる考えだけど、難しいと思うんです。だからこの番組でもゲストのみんなから自分のほぐし方のヒントをもらっているんですけど、それを他人任せにすることも一つ大事なことなんじゃないかってことを友達と話していたんです。全部自分でどうにかするんじゃなくて、今の自分の状態を俯瞰して見ることをカウンセラーや整体とか、そういうプロにお任せすることってすごく大事だよなって。さっきもJoさんがネガティブな自分のままだとパートナーと一緒にいることが難しく感じたって話してましたけど、自分のネガティブな部分ってパートナーに託しがちじゃないですか。わかって欲しいし、向き合ってほしいけど、向こうには向こうの人生もあるしってなったときに、やっぱりプロに委託する方法も積極的にとっていいよなって思います。
Jo_とってもおすすめです。
それでは今週も、行ってらっしゃい。
Jo Motoyo さんに聞きたいコト
視聴者さん、読者さんから集めた「ゲストに聞いてみたいこと」にお答えいただきました。今後も『月曜、朝のさかだち』に遊びに来てくれるゲストのみなさんに聞いてみたいことを募集しているので、ぜひORBIS ISのSNSをチェックしてみてくださいね!
Q.パワースポットや、お守り的なアクセサリーなどあれば知りたいです♪
A.疲れたら近くの公園へ歩きに行きます! 昔は森林浴の効果を実感出来てなかったんだけど、 続けてたら少しずつ効果を実感しはじめました。🌳 あとお守りとかアクセサリーとか、忘れたり失くしたりすると性格的にすごい凹んじゃうので、 あえてそういうアイテムを作らないようにしてます。 (とか言いつつ、撮影にCBDオイルと水筒持ってくの忘れたら 取りに帰るくらい心の支えにしちゃってます…笑)
Q.Joさんの家族のモットー、お子さんにこれは伝え続けていきたいということはありますか?
A.考えたこと無かったです💦笑 最近読んだ本(正確には漫画)「おうち性教育はじめます」がすごく良著で、 めっっっちゃくちゃよかったので、そこに書いてあるような性のことは、 長い時間をかけて大切に伝えていきたいなって思いました!
Q.英語と日本語のコミュニケーションで、感じる違いや、気をつけていることはありますか?
A.私は英語ネイティブではないので、 「ふ〜いまだに英語はめっちゃ頭疲れるな〜🧠」って思いながら話してます。 英語コンプレックスみたいなのも全然あり、 英語スキルも日によって違ったりするのでかなり適当に会話している時もあります。 もっと正確な英会話ができるようになりたいな〜って思っているけど、難しい! でも日本語だけで会話するのも面倒なのです!それはそれで難しい! 言語って難しい!! 今は英語と日本語をぐちゃぐちゃにして話すのが一番楽なのですが、 それってあんまり言語的にはよくないって言いますよね。 ・・・言語って難しい!笑
Q.忙しい日々の中で、最近よくやる気分転換やリラックス方法は?
A.ミントの香りのアロマオイルと、シトロネラのロールオンを常用してます! あと最近買ったROUNのCBDクリーム常用してます!
Profile
Jo Motoyo
映像監督。武蔵野美術大学在学中からフォトグラファーとして活動し、ファッション性と物語性を織り交ぜた作品作りを得意とする。広告、MV、ショートフィルムを主に制作。現在は初となる長編映画監督作が進行中。 出産を機にフリーランスに。