2021.6.14

風土と制度を両輪で変える。「変革エージェント」として組織改革を支えた、HRの進化

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 ORBIS

オルビスは2020年4月に大きな制度改革に着手しました。それが年功序列の廃止です。働く上で最も大事な人事制度を大胆に変えることができた裏側には、どんな苦労があったのでしょうか。

HR統括部部長の岡田悠希さんはこう語ります。「制度だけ整えても歪みが出るし、ビジョンだけ声高に伝えても絵に描いた餅になってしまう」。

現場で奔走しながら「制度と風土」の改革に着手した、岡田さんの2年間のプロジェクトを掘り下げます。

 

制度に先駆け「カルチャー」を作る重要さ

――2020年4月から、オルビスは人事制度や評価制度を刷新しましたが、どのような内容でしょうか?

従来の年功序列制度を廃止しました。とはいえ、極端な成果主義になったり、単なる実力主義に転換したわけではありません。2018年から掲げる「SMART AGING®」の思想に合わせて、一人ひとりが能力を解放して、成長できるような組織を作る必要がありました。そのために年功序列を廃止して、従業員がキャリア形成に選択肢を持てるようにしたんです。

たとえば、以前は年齢を重ねれば自然と役職も上がり、マネジメントを担う立場になっていましたが、培ったスキルを生かして、スペシャリストとして最前線に立ち続けるのが向いている社員もいるでしょうし、本人が自身の「意思」や「適正」を考えながら複線型のキャリアを選ぶことも必要です。自分がどんな風に働いて、能力を開花させていくか、自分次第で選択できるようにしました。

 

ですが、制度のみを先行させても組織には根づきません。それどころか歪みが出てしまうこともあります。そこで制度の変更の両輪として進めていたのが風土改革です。2018年の第二創業期に合わせて、全社員が「今後オルビスがどういう会社になって、社会にどのような価値を提供するのか」という目線を経営と一体となり合わせていきました。

――ビジョンの共有は大事ですが、社員の立場によっても見える景色は違います。HRとしてどういう動きを求めたのでしょう?

代表の小林が常々言っていたのが、事業と組織の両輪で改革を進める。組織課題は経営課題そのもの。だからHRは管理型の人事ではなく「変革のエージェント」であってほしい、ということです。そして、事業変革(リブランディング)を実現する上で必要なのは、「オープンマインド」で「未来志向」な風土をつくる必要があると。

「ヒト・モノ・カネ」と組織の資源がある中で、唯一「ヒト」だけが意思と感情を持っています。つまり、自力で最大化も最小化もできるということ。このリソースのマネジメントが事業に一番大きな影響を与えると考えています。だからこそ「ヒト」のアップデートをどう進めるか、HRのミッションとして、一人ひとりの力の最大化を基軸に「オープンマインド」で「未来志向」なカルチャーを作ることを据えました。

――なぜ「オープンマインド」と「未来志向」なのでしょうか?

当時のオルビスは500億円規模になる成長フェーズの中で、「通販ブランド」領域における過去の成功体験が強固になっていました。ビジネスモデルや会社の成功体験がカルチャーにつながりますが、当時は、決められたことをいかに高速でPDCAを回して進めていくかを求められていました。当然、組織において求められるマネジメントスタイルも言われたことを正確に早くこなす「管理型のマネジメント」です。

そうした過去慣性型の組織では、決まってないことに挑んでいくのは評価されにくい状況でした。ですから、変革を推し進める上で、思いきって従来とは真逆の感性や価値観を練り上げていく必要がありました。

風土を育てる「点」と「線」の取り組み

――具体的にどういう変革を進めてきたのでしょうか?

会社の風土は社員一人ひとりの考えや行動の積み重ねで作られます。そこで「オープンマインド」と「未来志向」な風土を形成するために必要な行動指針「オルビスマネジャースタイル」を打ち出しました。また、打ち出すだけでは意味がなく、考えや行動を積層させないとカルチャー形成には至りません。このスタイルを日常化させるために「の取り組みを実施しました。

例えば、「点」はオルビスマネジャースタイルに沿った従業員の表彰を全社的に行いました。行動指針を明文化しているので、何が期待する行動であり、何がそうでない行動なのか、全社員が集まるような場で、正しく全社に伝えるようなコミュニケーションをこまめにします。

 

そしてそこで引き上がった意識を維持するために、点と点の間に「線」の施策が必要です。具体的には、定期的にマネジメントラインがスタイルを発揮できているかどうかを独自のサーベイを用いてフィードバックしてもらいました。これによりマネジャーは都度改善ができるし、メンバーはサーベイに回答することが行動指針のインプットになる。そういった取り組みをあの手この手で重ねていきました。

――これら改革を進めるのはなかなか難しいことだと思います。この2年、どんな苦労がありましたか?

いきなり価値観の変革や行動変容を要求しても、従業員にはオルビスを成長させてきたからこそ積み上げられてきた価値観があります。それを無視して、やり方や制度を押しつけると反発が起こると危惧していました。

あくまでも過去を否定するのではなく、「既存の組織をアップデートしていく」感覚で動いてきましたが、HRが「変革のエージェント」と掲げた以上、変革を意識しすぎたあまり、振り切ったコミュニケーションをとってしまった反省もありました。加えて、私自身が、2018年以前はポーラにいたこともあり、一部には“オルビスのことを知らないのに改革だけ実行する”というような印象を持たせてしまっていました。

 

一部の従業員のネガティブな声などが間接的に入ってくるので、心が折れかけそうになる場面もありましたが、HRが進めている方向性はこれからのオルビスにとって絶対に必要なことだと確信がありました。だからこそ、「オルビスをこうしたい」「なぜこの改革が必要なのか」といった、思いや方向性を正しく伝えること。そのために具体的に2つ意識していました。

 

1つ目は改革を進めていく中で、改革の方向性とは反対の意見があったとしても、改革の方向性は変えないこと。目線を下げたり、反対意見を合わすようなコミュニケーションは取らないようにしました。

 

2つ目は、社員全員が同じ景色を見られるように、一人ひとりの視座を上げることです。泥臭い話ですが、個別に対話したり、1対1のコミュニケーションを重ねました。

 

それらを進めていくと段々と結果が出てきました。「オープンマインド」と「未来志向」の組織エンゲージメントスコアをKPIに置いていたのですが、そのスコアが徐々に上がっていきました。縦割りだった組織の垣根を超えて新たなプロジェクトが生まれたり、自発的に企画が上がる事例も増えました。そのタイミングで“新しい風を”吹き込みました。

 

――新しい風というと、具体的にどういうことですか?

コロナ禍の中の40名採用です。従来は年に15名程度ですが、2020年は大幅に増やしました。さらにその40名は、先に述べた「オルビスマネジャースタイル」の価値観と親和性が高い人たちです。組織の目線を揃えたあとに新しい風を一気に吹き入れる。そこまでやってようやく最後に制度に着手しました。

 

オルビスが目指す「組織」とは

――岡田さんがHRの重要性に気づいたのはいつ頃だったのでしょうか?

「ヒト・モノ・カネ」の経営資源で、「ヒト」は資源の最大化のさせ方具合で、良くも悪くも企業を左右すると感じたことがありました。それが、ポーラ在籍時代です。当時、九州の店舗のマネジメントをしていたのですが、同じような大きさの商圏・店舗規模で同じブランド・商品を売っているのに、なぜか店舗によって売上に大きく差が出る。なぜかと思って、観察すると店長のリーダーシップでした。

チームのメンバーが企業理念や店長の掲げるビジョンに共感して働いているか、メンバーだけでなく店長自身も自分の成長を常に考えているか。そうした目に見えない小さな部分が、売上という大きな差につながる。じゃあ店長という「人材」の能力を最大化していこう、と思いました。

――オルビスは今後どのような組織を目指すのでしょう? またHRとして取り組みたいことは?

2018年に目指していた変革シナリオ(ストーリー)はようやく50%程度まで進めることができました。ですが、たとえ100%になっても終わりはないと思っています。オルビスが常に変化と成長を求める組織である以上、HRも常に成長し改革し続けなければならないからです。

ここまでオルビスの改革を進めてこれたのは、私自身が小林から「オルビス改革のストーリー」を聞いた時に心の底から共感し、「SMART AGING®」は社会に提供したい価値だと思ったからです。全員のチャレンジと努力によって2年でこんなに大きく変われたのだから、全員がもっと深くビジョンを共有して成長していければ、加速度的にオルビスブランドは成長していくはず。HRとして取り組みたいのはそういった変化を一人ひとり求められる環境づくりです。

 

もちろん、変化ばかりでは社員は疲れてしまう。変化や成長のサイクルをサステナブルなものにする時に、個々が挑戦するための「セキュアベース」をいかに作っていけるかが重要です。ただひたすら上昇を目指すだけではなく、時には受容されたり、相談したりする相手がいる、そんな組織を作りたいです。

 

人生の時間の中で、働く時間は1/3、長く働く人は半分くらいに相当します。自分の充実ややりがいにつながることがすごく大事。いい組織かどうかというよりかは、組織の目指す方向性と自分が成し遂げたいことが重なっているかどうかが、重要だと思っています。

 

取材・文:武田鼎

※本記事内容は、公開日(2021年6月14日)時点の情報に基づきます。


Profile

岡田 悠希(Okada Yuki)

HR統括部部長。ポーラに入社し、トータルビューティ事業本部で九州を中心とした店舗マネジメントを経験。2018年からオルビスに出向し、第二創業期からの社内風土や制度改革を主導する。

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2021.06.04

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2021.05.10

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「ビューティーアドバイザーの数だけお客様に喜んでいただけるような魅力を持っている」ビューティーアドバイザー・チーフを経験したスーパーバイザーの想いとは

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入社3年目で社長に直談判。新規プロジェクトを立ち上げたリーダーが語る、オルビスで働く面白さ

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