「スマートエイジング(R)」はビューティーだけではない。 2029年の成長ブースター創出のための苦労と未来への兆し(後編)
JOB&CULTURE
こんにちは。ブログ担当の土井山です。
「スマートエイジング(R)」という価値観を具現化する手段として、前例のない新規事業を立ち上げ、オルビスの新しい可能性を広げているのが新規事業開発グループです。
2021年に新組織となって以来、パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」、オリジナルサラダ「INNER COLOR SALAD(インナーカラーサラダ)」と、2つの新サービスを発表。また2022年2月に、オルビスの未来に触れられるビジョンサイト「Portal to the Future」をローンチしたことについては、前回の記事でも紹介しました。
どれも「従来の価値観を打ち破る」ことを狙った、まったく新しいチャレンジをしているだけに、これまでの業務フローでは出会わない困難もあれば、改めて知る発見もあり、それらがオルビスのこれからに役立つ知見となって蓄積されています。
前編に引き続き、新規事業開発グループのマネジャー・田村陽平さんと、同メンバー・諸町実希さんに、新サービスローンチの裏側と、それらの経験が今後どういう形でオルビスに寄与していくのかについて話を聞きました。
前編はこちら
ビジョンを体現するサイト「Portal to the Future」の真の狙いとは。 新規事業の立ち上げから考える、オルビスが目指す未来(前編)
https://corp.orbis.co.jp/article/interview_portal_to_the_future/お互いの理解と敬意がスピードを生む
――新規事業の第1号は、2021年に発表した「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」でした。パーソナライズスキンケアという新しい分野を開拓するにあたり、大変なことも多かったのではないでしょうか
田村:個人に合わせたスキンケアプロダクトの開発、という面はもちろんなのですが、最も大きな障壁はアプリとハードウェアの開発でした。これまでオルビスが着手してこなかったパーソナライズするためのロジックと、それに伴う細かなコミュニケーションをアプリ向けに設計しなければいけませんし、ハードウェアに至っては作ったこともありませんでした。
そこでローンチに向け、まずは専門技能を持った外部ブレーンを含む、プロジェクトチームを結成しました。OEMメーカー、ソフトウェア・ハードウェアそれぞれのエンジニアやデザイナー、ブランドの世界観を統括するクリエイティブ・ディレクターなど、「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」という機会がなければ決して出会わなかった、多様なスペシャリストたちが20~30人規模で集まったのです。
――バックグラウンドや得意分野の違う外部ブレーンたちと、意志の疎通や連携はスムーズに図れましたか?
田村:全員がこのプロジェクトでどこに向かうのか、という共通のゴール設定とその理解にはかなり時間をかけました。進め方のポリシーとして、打ち合わせはメンバー全員参加が基本。たとえばデザインの話でもエンジニアに聞いていただくようにして。オルビスの事業計画についても、センシティブな情報を除いて可能なかぎりシェアし、「こういう未来を実現したいから、このポイントは絶対に外したくない」というビジネス視点も共有していきました。
オルビスのリブランディングが始まってからの社内組織を見ていると、お互いの理解と敬意が一致したとき、新しい価値が爆発的なスピードで生まれてくる現場に何度も出会いました。だからこそ、違う会社・違う職種の人たちと事業を進める場合でも、きちんと理解し合うことが後から前向きな結果を生む確信があったんです。
正直、全員参加のコミュニケーションは非効率的な面があります。最初のうちは、「なぜ関係ない話なのに呼ばれているんだろう」など、自分ごと化してもらえていない雰囲気を感じたこともありました。ですが、やり取りを重ねるうち、ハードウェアのエンジニアがデザインのアイデアを出すなどの強いコミットメントが生まれ、結果として満足のいくアウトプットになったと実感しています。
――「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」という新規事業立ち上げを経験して、新しく得られた発見はありましたか。
【写真】パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」
田村:この商品を世に送り出すため、ノウハウを聞きにいったり、協力のお願いをしたりと会社のあらゆる部署でヒアリングをしました。改めてオルビスのクオリティの高さを再確認しましたし、すでに「スマートエイジング(R)」と密接な取り組みも数多くあることにも気がついたのです。
たとえば、物流部門ではリブランディングを通じて、「T-Carry System」という通販出荷向けラインにAGV(無人搬送ロボット)を330台導入した自動出荷システムを稼働させています。商品のピッキングを単純作業と誤解する人もいるかもしれませんが、実際はそこで起こったミスがお客様の不具合に直結する、非常に神経を使う仕事です。丁寧に梱包する作業では人の温かみを残しつつ、お客様により正確に、より早く届けられる手段としてデジタルツールを活用しています。これも、人の本来の力を引き出すという意味で「スマートエイジング(R)」の現れです。
オルビスはスキンケアのブランドなので、どうしてもビューティーが中心になりますが、日常のあらゆる場面で「スマートエイジング(R)」に触れる接点は作れるし、それを実行するのが新規事業のミッションだと思いが深まりました。
一人ひとりの暮らしの延長に「未来」がある
――どういう事業をすべきか、事業開発の方向性はどのように選定しているのでしょうか。
諸町:未来にどんな変化が起こり得るのか、社会はどう変容していくのかという点については、前回の記事でもお話したとおり、リサーチを通して予測や仮説立てを行いました。ですが、いきなり「未来」がやってくるわけではなく、未来も日常の暮らしの延長線上にあり、必ずそこで暮らす人々がいます。
だからこそ、私たちがお客様と同じいち生活者として、仮説を立てた未来の暮らしの中で「この価値観なら」「私なら」感じるであろう日常に潜む課題や欲求を見出し、オルビスの「スマートエイジング(R)」という視点を通じたソリューションを検討してきました。
枠を設けずにいくつものアイデアを練ったあとは、メンバーとブレストしながら拡散させたアイデアを収束、ブラッシュアップさせていきました。個人の気持ちから生まれる動機について考え、社会の潮流から出てくるニーズを考えます。ミクロとマクロを行ったり来たりする作業の繰り返しです。
田村:「未来」という言葉だけ聞くと、まるでロケットを飛ばすかのような壮大なイメージがあって、自分ごと化しづらいと思うんです。でも新規事業開発グループが見ているのは、未来とはいえ「日常」。だからこそ、一人ひとりの内発的な動機付けが大切です。
同時に、未来に生きる人たちの毎日の悩みにどれだけリアルに寄り添うソリューションになるかが、方向性を決めるポイントです。
組織のスキームとして事業が吸収されるところがゴール
――新しい挑戦に対していろいろな反応が届いているかと思いますが、どういった声が印象的でしたか。
田村:社外の反応からお話しすると、これまではお取引先に「まったく新しいサービスをしたいんです」と話すと、理解をしていただけないという経験がしばしばありました。ですが新規事業開発グループとなり、「スマートエイジング(R)」という考え方と合わせて、開発したい商品やサービスを説明するようになったことで、以前よりも共感を得やすくなりました。「スマートエイジング(R)」で繋がることで、共創の幅や深さも出ましたね。誰にとっても自分ごと化できる価値観なんだ、と実感しています。
社内については、自分たちがやっていることに関してもっと発信を強化していく必要があるという課題感を持っていますが、社内に伝える機会があると、共感のうえで「こんなアプローチもできるかもね」「こういうサポートはどうかな」など、前向きなアイデアをもらうことがよくあって。
2018年からの組織改革やリブランディングを経た今、新しい可能性が生まれることをポジティブに捉えてくれる文化が社内では芽吹いていると感じます。
諸町:「なにがいいと思う?」のような漠然とした問いには答えづらくても、具体的な商品やサービスが起点となることで、「スマートエイジング(R)」をさらに深掘りする対話が作れますし、イメージも共有しやすくなります。社内の変化をスピードアップさせることも新規事業の役割ですから、今後は発信にも力を入れていきたいです。
田村:社内的な目線で言うと、今のグループメンバーはもちろん、ふつふつと思いを温めている社員たちが、より新規事業を立ち上げやすく、世の中にリリースしやすい環境を整えることが使命だと考えています。そういった意味で、現在ローンチした商品やサービスは絶対に成功させたいですし、新規事業を軌道に乗せるノウハウの構築と再現性を確立して、社内に還元できるようにしたい。
中期的な目標は、1事業に対して3年~5年スパンを設定し、定量的な利益を上げること。そして長期的なサービスの出口としては、立ち上がった商品やサービスが新規事業開発グループの手を離れ、通販事業や店舗事業など、オルビスの組織のスキームの中に吸収されていくことがゴールだと考えています。
そうすることによって、お届けできるお客様の数や接点が増え、私たちのリソースでは実現できないパフォーマンスが発揮できるようになる。そんな姿を1日も早く実現していきたいです。
取材・文:木内アキ
オルビスの未来に触れられるビジョンサイト「Portal to the Future」はこちら
※本記事内容は、公開日(2022年6月9日)時点の情報に基づきます。
Profile
田村 陽平(Tamura Youhei)
2013年新卒入社。経理、経営企画、マーケティング戦略部を経て、2019年に現職の前進である「2029年プロジェクト」のリーダーに。2021年より現職の新規事業開発グループマネジャーを務める。パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy (カクテルグラフィー)」などオルビスの未来を創る新規事業開発を主導する。
諸町 実希(Moromachi Miki)
デジタルマーケティングのコンサルティング会社、スタートアップでのPRや新規事業立ち上げを経て、オルビスへ転職。マーケティング職を経て、2020年5月から新規事業開発グループへ。10年後のブランドビジョンの策定や、パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy (カクテルグラフィー)」の開発メンバーとして活動する他、フード事業はじめ新規事業開発に取り組んでいる。2022年より、サステナビリティ活動を推進するプロジェクトも兼務している。