【代表小林 トップインタビュー】構造改革を経て、目指すのは「素肌ウェルネス」の追求(後編)
JOB&CULTURE
前回の記事に続き、代表小林のインタビューをお届けします。
5年にわたるリブランディングの結果、化粧品を中心とした総合通販会社からスキンケアに強いビューティーブランドへとオルビスは進化を遂げました。前編ではその背景となった「付加価値型」商品を中心に据えた構造変化や、オルビスらしいお客様との関係性づくりの在り方について触れてきました。
後編となる今回のテーマは、ブランドのパーセプションチェンジ(消費者の認識変化)を経た「これからのオルビス」について。
お客様とさらに「深く、長い」関係を築くことを目指し、リブランディングと並行して進めていた社内の構造改革の経過、また、今後オルビスがいちブランドを超えて「企業」としてのプレゼンス(存在感)を発揮していくために何が必要か。代表の小林に、今後の課題とこれからのビジョンについて聞きました。
お客様起点を徹底し、ロイヤルティの向上を目指す
――ブランドのパーセプションチェンジが一定の成功を見た2024年以降は、どういった点に注力していく予定でしょうか。
次の段階は、お客様とさらに「深く、長い」関係を構築すること。つまりブランドロイヤルティの向上です。こうした関係づくりは一朝一夕で完成するものではないので、短期と長期、それぞれの時間軸における戦略が必要になると考えています。
短期的にはまず、リブランディングと並行して進めてきた組織改革の解像度を上げていくことです。コロナ禍が明けた現在は、仕事における社員のモチベーション推移もよい状態にあります。そして、最終的には、「顧客価値創出」できているか、お客様の満足度につながっているかどうかです。
5年にわたる組織改革で、スキンケアブランドとして付加価値を生み出すという方針を明確に打ち出したことは、会社の「スマートエイジング®」という提供価値、方向性に対する共感を深めましたし、仕事のモチベーションや満足度との連動が見られるうえでもいい効果を生んだと言えます。しかし、社員一人ひとりの行動がお客様との本質的な関わりを築くものになっているだろうか、という意味では、まだできる余地があると判断しています。
――社員の行動における解像度を高めるための、具体的な施策はありますか。
「お客様起点」でロイヤルティを高めるには、ブランドとはひとつの人格であり、お客様とブランドが「人と人」としてどのような付き合いができるか、という視点が重要です。
そのため、2023年は「どういうブランド人格で、どのような振る舞いをするのがオルビスらしい在り方なのか」を具体化しようと、パーパス(目的)とパーソナリティ(人格)を掛け合わせたオルビス独自の造語「パーパソナリティ」を設定しました。
2024年はこの「パーパソナリティ」を会社全体に浸透させると共に、すべての社員がオルビスのブランド人格に基づいてどうお客様とつながっていくか、組織設計にまでしっかりと落としこんでいくプロセスに入ります。
具体的には、昨年末に社員の行動指針である「オルビススタイル(旧:オルビスマネジャースタイル)」を、よりお客様への意識を強めた内容へと刷新しました。さらに、今年1月からはその行動指針を社員の評価軸と連動させて運用していきます。名実ともにお客様視点を徹底する会社となる、ということですね。
短期と長期、異なる時間軸をどうマネジメントするか
――長期的な時間軸での戦略についてもお聞かせください。
「オルビス ユー ドットシリーズ」や「オルビス リンクルブライトUVプロテクター」などのヒットを経たここ数年で、プロダクトブランドとしてのオルビスは非常に強くなったと思います。ですが、いち企業としてのコーポレートブランド力は、まだそこまでのプレゼンスを築けていません。「オルビスという企業」がどういう人格なのか、社内でもさらに明確化して、お客様に認識していただく必要があります。
どんなに仲のいい友人がいたとしても、ライフスタイルの変化によって関係が途切れてしまうこともあります。でも、いったん信頼関係が構築できていれば、数年間ブランクがあったとしても、再会してまた仲良くなることもある。ブランドとお客様の関係も同じです。
企業としてのオルビスがどういう人格を持ち、社会の中でどのような存在意義を発揮していくか。サステナビリティ戦略をしっかり組んでいくことは、信頼できる会社であるという認識につながります。もし途中で関係が途切れたとしても、先ほどの友人の例のように信頼関係ができていれば何かのきっかけで「またオルビスを使ってみよう」と思っていただけます。30年、40年という長いお付き合いの土台を作るため、企業人格の発信、サステナビリティ戦略の強化は欠かせません。
――短期と長期、ふたつの時間軸にまたがりながら、ブランドとコーポレートの人格育成を両輪で動かしていく。このフェーズにおける課題は何だと考えていますか。
異なる時間軸の中で、どのようなマネジメントをするかに尽きます。ブランドロイヤルティを高めるうえで、多くの場合お客様のLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)が指標になると思います。LTV向上の要因はお客様の期待に応え続けることですし、ほとんどのお客様は30年後より“来週の自分”に貢献してほしいと考えるものです。つまり、お客様のリアルなニーズに応え続けようとするほど、視点が短期に傾きやすいという課題が出てくると思います。お客様の期待に応えるのは大切なことですから、この課題には仕事の時間配分や人的配置などのマネジメントで対処しなければいけません。
一方で、ブランドやコーポレートが人格としての信頼を築き上げるのは長期的な取り組みです。本質的な変革を目指すにあたって、今後の方針に対する腰を据えた議論の時間も必要になるでしょう。現在もコーポレートブランディングやサステナブル戦略を担当する部署がありますが、長期的なブランド資産の形成を見据えると、人材の増員や専門性の強化を行いながら、社内にその重要性を示していかなければ、と考えています。
「健やかな素肌」をひとりでも多くの人に
――この先に見つめている、今後のビジョンについても教えてください。
オルビスは、スキンケアを中心とするビューティーブランドに進化した、と表現しましたが、「スキンケア」という概念は、企業側が決めたカテゴリーのひとつであるという考え方もできます。もっとお客様起点で掘り下げると、これまでオルビスが肌本来の力を引き出そうと手掛けてきたことはすべて、“素肌のウェルネス”に関することなんです。
つまり今後目指すのは、自分らしく、ここちよく年齢を重ねる「スマートエイジングⓇ」の思想に基づいた“素肌ウェルネス”を、できるだけ多くの人に届けていくことだと考えています。
――“素肌ウェルネス”は初めて聞いた言葉です。たとえば、どういう商品やサービスになる可能性があるのでしょうか。
少し前の時代では、肌をキレイにする=化粧品やスキンケアのことでしたが、現代はそれ以外に、たとえばサプリメントなど身体に摂取するもの、美容医療、エクササイズや運動と、美容とウェルネス(良好な生活態度)など、ウェルビーイング(心身が充実している状態)の境目がなくなってきています。
そういう変化を前提に、お客様が本当に求める“素肌ウェルネス=健やかな素肌”を考えると、スキンケアの次に必要なのは、ライフスタイルを見直す手助けかもしれませんし、食事に対するアドバイスかもしれない。また、なんらかの理由で十分なスキンケアができない状況下におかれている人にソリューションを提供する視点など、幅広い可能性が含まれてきます。
オルビスは高級路線を目指しているのではなく、たくさんの人に価値を届けてこそイノベーションになる、という考え方のブランドです。その考え方においてはまだまだ道半ば。これからは、スキンケアも“素肌ウェルネス”の一環であるという視点をもって、健やかな素肌をお客様のライフスタイル全体で実現できるよう枠を広げていく。その企業姿勢や商品ラインナップから、お客様に寄り添い続けるオルビスの人格が伝わる。そんな未来を実現していきます。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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※本記事内容は、公開日(2024年4月12日)時点の情報に基づきます。
Profile
小林 琢磨(Kobayashi Takuma)
2002年 株式会社ポーラへ入社。2010年 グループの社内ベンチャーで起ち上げた敏感肌専門ブランド株式会社DECENCIA代表取締役社長。 同ブランドを50億のビジネスに導いた後、2017年 オルビス(株)マーケティング担当取締役、2018年 代表取締役社長に就任し、 リブランディング、構造改革、組織変革を実行。ポーラ・オルビスホールディングス取締役を兼務。