パーソナライズにサラダ販売。多角的な取り組みを牽引する、新規事業開発グループが目指す未来
JOB&CULTURE
こんにちは。ブログ担当の土井山です。
今回ご紹介するのは、オルビスの未来を見つめた新しい事業を創造する「新規事業開発グループ」を統括する、執行役員の西野英美さんと、同グループメンバーの諸町実希さんのお2人です。
今年4月にオルビス初のパーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」をローンチし、9月からは“Beauty×Food×Technology”による新たな価値創造を目指したオリジナルサラダ「INNER COLOR SALAD(インナーカラーサラダ)」の販売をスタートしました。
これら多角的な取り組みにはどんな狙いがあるのか、そして新規事業開発グループがオルビスのなかで果たす役割について、今後のビジョンを含めて伺いました。
オルビスは「正解だけ」を届けたいのではない
――オルビスの新規事業の第一歩として、なぜパーソナライズサービスに着手したのでしょうか。
西野さん(以下、西野): 「パーソナライズサービスを手掛けよう」というのが出発点ではありません。 オルビスは2018年からビジネスモデルの転換に取り組み、リテール的な通販事業の姿から、お客様と長期的な関係性を築けるビューティーブランドを目指してきました。「ここちを美しく。」をブランドメッセージに掲げ、それぞれの人が持つ本来の美しさを引き出し、多様な美しさや可能性を広げる「スマートエイジング®」を提供価値にし、商品やサービスを通じてその価値を研ぎ澄ませてきたんです。
一方、今の世の中は美容トレンドが複雑化していますし、「自分らしく」という発信も多く見られるようになりました。「あなたらしく年齢を重ねていいんですよ」と伝えるだけでは、お客様は何が「自分らしい」美意識なのかを見つけにくいという課題を感じていました。
オルビスは創業当時から「肌が本来持つ力を信じて、引き出す」を信念としています。私たちが培ってきたビューティーの知見を活かしながら、一人ひとりの肌や価値観、生き方に寄り添いビューティーの選択肢を提供することが、自分らしい美意識を見つけてもらう近道になると確信し、自分の肌に真っすぐに向き合えるパーソナライズスキンケアにたどり着きました。
【写真】執行役員 西野英美
――「カクテルグラフィー」を開発するうえで、他社にない独自性や差別化のポイントとしてどういった点を意識しましたか?
西野: これまで私たちは、「パーソナルAIメイクアドバイザー」や「AI未来肌シミュレーション」など、テクノロジーを活用し一人ひとりの美容の成功体験の見つけ方に注力してきました。ですが、オルビスは単に正解だけを届けたいわけではありません。
自宅で肌測定ができるIoTデバイス「スキンミラー」は、洗面所の鏡など生活の動線に取り付けられ、「スキンミラー」で測定した肌状態に応じて2本の美容液と1本の保湿液が届き、お客様自身の手元で混ぜて使っていただく仕様になっています。
「カクテルグラフィー」で実現したかったのは、その方に合ったビューティーの楽しみ方や、お肌に最適なアプローチを見つけられるようにすることです。「スマートエイジング®」を軸としていく上で、誰かに決められた価値観や美の定義ではなく、その方自身がご自分の肌に真っ直ぐに向き合ってほしい。それにより使う人の人生そのものを豊かにしていきたいという思いが根底にあります。
諸町さん(以下、諸町): 今回の取り組みは、これまでオルビスが注力してきた「何が自分にとってのべストか」を見極めるお買い物シーンでのご提案から一歩進み、日々変化する肌と向き合う“利用シーン”にスポットライトを当てた体験価値の創造にチャレンジしています。
だからこその課題も多くあります。実際にご利用いただくと、「肌が気になった時にすぐ応えてくれる」「肌の変化と上手に付き合えるようになった」など、「カクテルグラフィー」が生活にあることでの変化を感じていただけていますが、一方まだサービスを手にしていない方には、これまでにない体験だからこそ、その魅力をお届けする最適な方法が見つかっていません。現在は、使用シーンを発信するためにSNSを活用したライブ配信や、実際に体験いただけるポップアップイベントなど、試行錯誤しながら価値の体感機会の創出に取り組んでいます。
未来のオルビスの価値や可能性を作るために
――9月からは「インナーカラーサラダ」の取り扱いが始まりましたが、これは具体的にどういったサービスなのでしょうか。
諸町: 昨年、表参道にオープンした「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」で、オルビスのオリジナルサラダを販売するというものです。「スマートエイジング®」の思想のもと、健やかな美しさを引き出す選択肢の1つとして誕生し、この取り組みを起点に“Beauty×Food×Technology”による新たな価値創造を目指しています。
最大の特長は、サラダに採用した“高機能(*1)レタス”です。
レタスの生産を手掛けるのは、最先端テクノロジーを取り入れた閉鎖式人工光型植物工場を展開する「PLANTX(プランテックス)」様です。同社の独自技術は、野菜個々への最適な環境制御を可能にし、野菜が本来持つ成分量や品質を引き出すことに成功しました。今回のこのレタスは、露地栽培の標準的なレタスに比べて成分の含有量が全体的に多く、なかでもβ-カロチンが多く含まれ、農薬不使用で栽培されています。
「素材本来の力を引き出す」ことを大切に、そのためにテクノロジーを活用する視点が、わたしたちオルビスの「スマートエイジング®」にも重なります。
さらに、土地面積当たりの生産性が高く、環境を選ばず省スペース・省資源で生産が叶い、気象等の影響を受けることがありません。安定した品質・価格で供給できるサスティナブルな仕組みにも魅力を感じています。
――そもそもなぜ「野菜(サラダ)」に着目したのか、という理由もぜひお聞かせください。
諸町: 美容というと、顔に何かをつけるイメージが先行しますが、食事や睡眠といった生活習慣も欠かせない要素です。私自身、学生時代に極端なダイエットをして肌荒れをした経験がありますが、食生活を見直し、適度な運動を取り入れることで肌も心の調子も健やかになりました。
オルビスは、ビューティーブランドですので、お客様一人ひとりのここちを美しく導くには、スキンケアやメイクに限らず、暮らしの様々なシーンで私たちのビューティー知見を活かしたご提案ができると考えています。その1つとして、今回着手したのが食の領域であり、ブランドとして“Beauty×Food×Technology”の価値創造を目指すのは、自然な流れでした。
また、食べるという行為は楽しみのひとつでもありますよね。先ほど西野からも「人の人生そのものを豊かにしていきたい」とありましたが、日常の食事のシーンから楽しく健やかな美しさを引き出すことができたらいいなと考え、今回のサラダのアイデアが生まれました。
西野: インナービューティーという意味で言えば、オルビスには既にサプリメントや健康食品など、内側からキレイになる手段を提供する経営資産があります。日々の継続が大切だからこそ、健康や美容のために無理して頑張ることなく、“ライフスタイルに楽しく・気軽に取り入れられる”ここちよい提供方法や価格を一貫して重視し、開発・販売してきました。ただ、今後それら商品だけでお客様のニーズ全てに対応できるかと言ったら、必ずしもそうではありません。
だからこそ新規事業開発グループには、全く新しい商材やサービスのかたち、他社とのコラボレーションを通じて「こういう表現もアリかもしれない」と、未来のオルビスの提供価値につながる新しいアングルを見せていってほしいんです。「スマートエイジング®」という大きな傘のもと、あえて新しい選択肢や価値観を広げ、提供する大切な役割を担ってもらっています。
「スマートエイジング®」はビューティー領域にとどまらない
――今後多角的な事業に挑戦するからこそ、新規事業開発グループとしてチャレンジする・しないの判断軸をどういったところに設けているのかが気になります。
西野: 先ほどお伝えした「スマートエイジング®」の傘の中で「未来のオルビスの提供価値につながる挑戦かどうか」は大きな指標です。「スマートエイジング®」の世界観に則ったものであるか、オルビスとしてやる意義があるかを語れるかどうかは非常に大事ですね。
諸町: 多角的な取り組みを求められているからこそ、ブランドの根幹との繋がりを意識しています。オルビスが取り組む意義や、オルビスだからこそ生み出せる価値は何か。お客様のリアルな日常や、そこに潜む気持ちに寄り添い、何度も議論を重ねています。
今回もサプリメントや健康食品ではなく、サラダの提供にしたのはなぜか、テクノロジーを駆使した栽培環境制御によって誕生した野菜は「スマートエイジング®」なのか、他の野菜ではない理由はなにか、といった議論がグループ内でも起こりました。あらゆる角度からの視点や常識に捉われない問いかけを重ね、オルビスが実現したい未来を世の中に起こしていきます。
――最後に、今後グループで実現していきたい、して欲しいことを教えてください。
諸町: 新規事業やサービスを通じて「スマートエイジング®」を享受し、その人なりのここちよい生き方、自分らしい年齢の重ね方を体現できる人が増える世の中を目指しています。声にならない課題や欲求に応え、「これを待っていた!」と、言っていただけるような、世の中をアっと驚かす価値を生み出し続けたいです。
前例も正解もないことに取り組むなか、一つひとつの意志決定に重みを感じることが多々あります。そうしたなかでも妥協せず、常にこれでいいのかと自分を疑いながら成功の角度を上げていき、「未来の価値を創る」使命感を持って、突き進むグループになっていきたいと思っています。
西野: マーケティング視点で市場のベンチマークはチェックしますが、他社との比較や差別化が目的ではなく、オルビスとしてどうあるべきか、価値を生み出していけるかを追求しながら、事業成功の精度を上げていくのがグループの狙いです。
同時に、一緒に未来を創造していく仲間も増やしていきたいです。「スマートエイジング®」を提供する我々こそが、どこよりも、誰よりも「スマートエイジング®」であってほしい、というのが私の願いなので、オルビスを選んで入社してくれた社員一人ひとりが自分らしく能力を発揮できるよう、新しいことに挑戦する風土や才能を活かす環境にもコミットしていきます。
(*1)βカロテンなど野菜本来の主要な栄養素の含有量を高めた野菜のこと
取材・文:木内アキ
※本記事内容は、公開日(2021年9月21日)時点の情報に基づきます。
Profile
西野 英美(Nishino Emi)
2002 年 オルビス株式会社入社。スキンケア、メイク、メンズ、海外ブランドと多岐に渡る商品企画の経験を持ち、2014 年発売のブランド の基幹スキンケア『オルビスユー』の初代ブランドマネジャーを務める。その後、原価・開発管理のマネジャー、新規獲得プロモーションのマネジャーとキャリアを重ね、2018 年より商品企画部長に就任し、スキンケアを軸とした商品強化を指揮。2020年より執行役員就任。2021年より、新規事業領域を管掌下におき、オルビス初のパーソナライズスキンケアをローンチするなど、未来に向けたブランド成長戦略を描く。
諸町 実希(Moromachi Miki)
デジタルマーケティングのコンサルティング会社、スタートアップでのPRや新規事業立ち上げを経て、オルビスへ転職。マーケティング職を経て、2020年5月から新規事業開発グループへ。10年後のブランドビジョンの策定や、パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy (カクテルグラフィー)」の開発メンバーとして活動する他、フード事業はじめ新規事業開発に取り組んでいる。