オルビスらしいマーケティングの本質とは? 代表の小林と考える、「クリアフル」のリブランディングから見えたこと
JOB&CULTURE
こんにちは。ブログ担当の榎本です。
オルビスには未来を見据えた新しいチャレンジができる環境がある、ということについては、以前からブログ記事を通して紹介してきました。会社と自分自身のありたい姿を描き、実現する意欲を持つ社員に対して年次や経験の有無を問わずにチャンスを提供しています。
経営戦略部 経営戦略グループに所属する大池智之さんは、入社3年目のときにニキビケアシリーズ「クリア」(現クリアフル)にリブランディングの必要性を感じ、代表の小林に直談判。その結果、「クリア」復活を目指したプロジェクトが立ち上がり、リーダーに任命された経験の持ち主です(その経緯については過去の記事にて紹介しました)。
リブランディング提案の原動力や着眼点はどこにあったのか。また、若手社員からのアプローチを受け止め、ゴーサインを出した小林はどのような点に着目し、リーダーに抜擢したのか。 今回は代表の小林と、大池さんの対談を前編と後編に分けてお届けします。前編では「クリアシリーズ」がリニューアルに至るプロセスを振り返りながら、オルビスが大切にするマーケティングの考え方について聞きました。
入社3年目で行った提案が、全社の方向性をくつがえした
「クリアシリーズ」のタスクフォース(各部門から集まった少人数のプロジェクトチーム、以下TF)発足後、3年かけて商品のフルリニューアルを実現し、成長を続けるブランドに育てた大池さん。2022年春からリーダーを卒業してアドバイザーとなり、ブランドの更なる成長をサポートしています。
――まずは大池さんが「クリアシリーズ」のリブランディングを提案したときの状況について教えてください。
大池さん(以下、大池):「クリア」はオルビスの中でも歴史が長く、これまで事業を牽引してきたブランドのひとつです。ですが、2018年に全社をあげたリブランディングが始まって以降、オルビス全体で目指すイメージと「クリア」が持つイメージにギャップが生じるようになりました。
「クリア」の魅力を十分に打ち出すことができない時期があり、売上も徐々に減少していって。このままでは「クリア」が長年培ってきたお客様との関係性が稀薄になり、会社の損失につながると考えたんです。
当事、私はCRM(顧客関係管理)のOne to Oneコミュニケーションの担当でしたが、大学時代からマーケティングを勉強し、いつか学んだことを活かしたいと思っていました。リブランディングで、社内のいわゆる“エース人材”が「オルビス ユー」などの象徴的な商品に集中している状況下なら、私のような若手社員が「クリア」全体のマーケティングに関われるかもしれない。そう考え、商品企画担当の同期を巻き込んで提案の準備を始めました。
小林社長(以下、小林):2018年から、オルビスは従来の通販型ビジネスモデルから脱却し、ビューティーブランドへの進化を目指そうと、第二創業期と位置付けてリブランディングを始めました。その状況下で、まずは「オルビスユー」など象徴的な商品を打ち出すことを優先し、「クリア」は現状を維持していこうというのが当事の経営判断だったんです。
加えて、「クリア」はリブランディング以前の2015年にフルリニューアルをしていますが、2016〜2018年の売上はあまり伸びていない現状もありました。そんなとき、「クリア」をニキビケアの機能に特化したシリーズとしてもう一度リブランディングする、という提案を大池くんが直談判してきた。ある意味、会社全体で向かおうとしている方向性をひっくり返す内容を出してきたわけですから、今でも鮮明に覚えています。
マーケティングとは広告戦略ではなく、事業経営そのもの
――大池さんのリブランディング提案にゴーサインを出したのは、どのような点を評価したからなのでしょうか。
小林:私の考える、オルビスのマーケティングに求める要素が根拠とともにきちんと網羅されており、「この提案なら間違いないな」と判断したからです。
よくある誤解として、マーケティングとは広告やSNSなどを運用して商品やサービスを売ることだと考えているケースがあります。ですが、本来マーケティングとは事業経営そのものなんです。取り組まなければいけないのは「顧客価値の創出」で、お客様をすべての基点に置きながら、オルビスがどんな価値を創出し、それによってお客様の行動がどのように変容するか、市場環境をキャッチアップしながら考えていく必要がある。
しかし、企業体が大きくなるほど組織は役割分担が必要になります。以前のオルビスも「顧客体験=マーケティング部が考えること」と、部署単位で考えがちな傾向がありました。ですが、リブランディング以降は店舗や通販というチャネルを越えて、「お客様にとって最もよいブランド体験とは何か」という全体視点で顧客価値を考えるように社員にも働きかけていました。
そうした観点で見たとき、大池くんの提案は「どんな顧客価値を創出し、どういうブランド体験を提供できるのか」「それによってどのような投資対効果が生まれるのか」という、私の求めるマーケティングの本質をしっかり捉えていました。加えて、内容や数値について深掘りした質問をしても、すべてその場で即答できるほど準備がなされていた。驚きましたし、「圧倒的にマーケターだな」と感心しました。
大池:そういう評価をしてもらえていたなんて初めて知りました(笑)。相当な量の質問をいただきましたが、最後に「よく準備したね」と声をかけていただいて。そこで初めて自分が想定していた方向性やコンセプトが、とことん詰め切れた提案になっていたのだと手応えを感じたのを覚えています。
年齢や経験を問うよりも、「未来志向」があるかどうか
――提案の結果、大池さんをリーダーとする「クリアシリーズ」のTFが発足。それまで4年連続で売り上げが前年割れしていた状況を、3年連続で前年越えの成果につなげましたね。
小林:ニキビケアという機能に特化したことで、オルビスの枠から半歩外に出て、クリアシリーズとして卸の販売チャネルを拡大するという新しい挑戦もしてくれました。「クリア」が2度リブランディングをしたのは予期せぬ形でしたが、ブランドをよりよくするというリニューアルの目的に立ち返ると、短期間で成果を出してくれたことは非常に嬉しいです。
大池:ブランド名を「クリアフル」に変えることや、成分・使用頻度の変更など、前回のリニューアルでは踏み込まなかった部分にも多数着手したので、本当にエネルギーが必要でした(笑)。それまでは部署のプレイヤーとして上司に判断を仰ぐ立場でしたが、リーダーとして自ら意志決定をする役割を経験したことで、「事業をどう成長させるか」という観点が深まった実感があります。
小林:そこはとても大事なポイント。サステナブルな事業経営のため、これからはビジネスの全体像を見られる経営視点のある人材をどんどん育てていきたい。
――オルビスでは、大池さんのような若手と言われる世代がリーダーや責任のある業務を担う事例が多いです。リブランディング以降、それがより推進されている印象があるのは人材育成が目的なのでしょうか。
小林:会社で最も優先されるのは、人材育成よりも顧客価値を創出して市場の中で「成果」を出すことです。ですが、“成果を出す人を増やす”という意味では人材育成や登用も連動しています。
大池:たしかにリーダーを経験して、成果(ブランドの利益)を出すために“やれることは全部やる”立場だと実感しました。
小林:もちろんリブランディング開始時においては、ビジネス観点でデジタルの肌感覚は欠かせないという意味で、若手を積極的に登用しようという意識があったと思います。私たちの企業活動は未来に成果を遺さなければならないので、今よりも進化した環境を見据えて成果へつなげる「未来志向」が必要です。 現在が“最も新しい状態”なのではなく、未来のゴールに対して“最も古い状態”である、という視点を大事にするという意味では、若い世代には引き続き期待しています。
一方で、今はデジタルリテラシーの高い40~50代もたくさんいますし、70歳くらいまで現役で働くことが当たり前という状況は十分にあり得ますから、育成や登用に対して年齢が若いかどうかはこだわっていません。 年齢に縛られず、社員には未来に向かってオープンな気持ちでどんどん新しいチャレンジをしてほしいと思います。
後編では、今回の話題に続き「リーダーとしての苦悩」や「オルビスが目指す組織づくり」についてお話を伺います。後編の記事はこちら。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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※本記事内容は、公開日(2023年3月16日)時点の情報に基づきます。
Profile
小林 琢磨(Kobayashi Takuma)
2002年、(株)ポーラ化粧品本舗〈現・(株)ポーラ〉へ入社。2010年グループの社内ベンチャーで起ち上げた敏感肌専門ブランド(株)DECENCIA代表取締役社長。 同ブランドを50億のビジネスに導いた後、2017年オルビス(株)マーケティング担当取締役、2018年代表取締役社長に就任し、 リブランディング、構造改革、組織変革を実行。(株)ポーラ・オルビスホールディングス取締役を兼務。
大池 智之(Oike Tomoyuki)
2017年新卒入社。経営戦略部 経営企画グループ所属。入社3年目に「クリアシリーズ」のリブランディングの重要性を社長に直談判しプロジェクト化を実現、約3年リーダーを務めた。「クリアシリーズ」(現「クリアフルシリーズ」)のフルリニューアルの経験やマーケティング事業部を経て、現在は経営戦略部に所属しながら、「クリアフルシリーズ」のブランドアドバイザーを担う。