2023.5.9

リブランディングから5年。変化を経て見えたオルビスの価値と「さらなる進化」に向けた3つの課題

PROJECT

JOB&CULTURE

 ORBIS

2018年から始まったオルビスの「リブランディング」。その象徴である「オルビスユー」のリニューアル、組織体制の変更や社内におけるマインドチェンジまで、会社の全領域においてさまざまな改革が行われてきました。

リブランディングから「3年」の節目にあたる2021年には、「2018年からの3年を振り返る、リブランディングのこれまでとオルビスの未来とは」と題し、リブランディングの経過を報告しました。そこからさらに2年が経過し、2023年は「5年」という新しい節目の年です。

リブランディングの影響はオルビスに進化をもたらしている一方で、「新しい課題も浮き彫りになってきている」と話すのは、前回の記事でも登場した西野英美さん。2021年時は執行役員 商品QCD担当という立場でしたが、翌22年にはサステナビリティ推進を管掌下におき、2023年からは取締役執行役員として経営戦略に参画しています。

リブランディングから5年を経たオルビスの「今」と目指すべき「未来」、そして実現のために乗り越えるべき課題とは。


5年で認知のされ方は明らかに変化した

 

――リブランディングから5年が経ち、社内外に新しいオルビスの姿が浸透してきた頃合いかと思います。当初の狙いに対する「現状の評価」を聞かせてください。

 

リブランディングによる方針転換の影響が、「ビフォア&アフターの違い」という形で明確に表れてきました。現段階ではパーセプションチェンジ(認知のされ方の変化)はひとまず成功した、という認識です。

その実感の指標となる例が、各種メディアの中でのベストコスメ獲得数です。リブランディング以前は、ベスコスにオルビス商品の名前が上がることはありませんでした。それが、リブランディング当初の「ベスコスが獲得できるブランドになった」ところから、今は「ベスコス常連ブランドと肩を並べられる」までに進化しました。

【画像】数々のベストコスメを受賞

 

また、美容液やUVケアに代表される高価格帯・高付加価値商品の売上が順調に伸びているのも象徴的です。昔のオルビスのUVケア商品であれば1,000円前後でしたが、現在は4,000円近い価格帯でもお客様との繋がりが構築できるようになりました。「安いから」ではなく、商品の品質や機能に価値を見出して選んでくださっていると感じています。

「スマートエイジング®」の共感者は確実に増えており、ブランドの目指す姿が形になってきているという手応えは、3年前よりも強くなっています。

変化を経たからこそ見えた「3つ」の課題とは

 

――手応えを感じる反面、「5年目」になった今、見えてきた課題はありますか?

 

具体的には3つあります。1つ目は「今後のコミュニケーションの広げ方」です。リブランディングでは「スキンケアを中心したビューティーブランド」という地位を確立するため、象徴商品「オルビスユー」を軸としたスキンケアによる関係性構築に注力しました。化粧品、食品、ボディウェアを満遍なく並べてお客様に選んでいただく従来型のカタログ販売の手法から、「スキンケア、特に『オルビスユー』がおすすめです」と明確にメッセージを尖らせた結果、ブランド認知は変化しました。

これからは「まずはスキンケア」という入口の先にある「お客様との接点」をいかに増やしていくかの段階です。スキンケアだけでなく、スペシャルケアやメイク品に至るまで、その方のお悩みに寄り添った商品ラインナップとOne to Oneコミュニケーションを強化していきます。

【画像】スキンケアシリーズから初となるベースメイク品の『オルビスユー トリートメントプライマー』、『オルビスユー トリートメントクッションファンデーション』

 

その上で、2つ目にあたる「CXの進化」は外せません。「お客様との接点をいかに増やすか」という文脈において、商品以外の部分での繋がり、そして1つ目の課題であるOne to Oneの提案を考えるとき、アプリを中心としたオルビスらしいCXのあり方を突き詰めていく必要があります。

その代表が、2022年11月にローンチした「肌カ.ル.テ」。本サービスでは、個々の悩みに合わせたコミュニケーションでお客様との接触回数や時間を増やし、商品の購入と美容の成功体験を掛け合わせた独自の美容伴走ルートを築くのが目的です。ローンチから約半年が経過し、使用率は想定通りに伸びていますが、購入プログラムへの参加数や参加ハードルの高さ、ユーザビリティの向上など、課題はあります。

※『肌カ.ル.テ』の詳細についてはこちらをご一読ください。

オルビスはデジタルのイメージが強いかもしれませんが、店舗での接客や電話応対といった「リアル」もオルビスの良さが伝わるアセットです。リアルとデジタルを掛け合わせたオルビスらしいCXとは、という目線で今後の進化を描いていかなければいけません。

そして3つ目が、より深く本質的な「お客様起点の関係性」の追求です。

 

――これまでもオルビスはお客様との関係性を見つめてきたと思いますが、今回「課題」と捉えているポイントは?

 

オルビスは創業時から「お客様起点」を大切にしてきた企業です。「注文をくださるお電話に対して通話料をいただくの?」といった疑問からいち早くフリーダイヤルを導入したり、「通販で物を買われるのには不安もあるよね」という気持ちに寄り添って返品交換を自由にしたりと、お客様をよく見て愚直にやってきた結果、それが当時は画期的で差別化となって選ばれてきました。

昨年は、創業から35年の節目の年でした。35年間使い続けてくださっているお客様を数えたところ約1,200人以上いらっしゃって、社員全員でその感動と感謝を共有し合いました。この先も長く愛されるブランドであり続けるためにも、ここでもう一度「お客様起点」の強みを今の時代に合わせてアップデートする必要があると感じています。

【画像】定期的に開催している、お客様向けイベント ファンミーティング(この時はオンラインで開催)

 

ファンミーティング中にお客様から寄せられたチャットコメントの一例はこちら

"オルビスさんの接客とても好きです!"

"オルビスマガジン大好きです!毎月とても楽しみにしています😊"

"知恵の泉、昔から引き継がれていてすごいですね🥺"

"「知恵の泉」のネーミング素敵です"

"35周年おめでとうございます。30年以上使い続けているブランドや商品ってないかも… 私もその一人です!ずっと愛用させていただいています。"

"製品がリニューアルされたりしても、根本の企業精神が変わっていないので、これからも安心して使います。40、50年目も一緒にお祝いできたらうれしいです♡"

"自分の生活に無くてはならないオルビスですので、これからもずっとずっとよろしくです!"

"来年も楽しみな年になりそうですね。マガジンも豊かなライフスタイルにしてくれるので、毎回楽しみにしています。"

"周りの人から、スキンケア何を使ってるの?と聞かれて、自信を持って「オルビス」と答えられます!"

「パーパソナリティ」を掲げて、社員の行動を変えていく

 

――どんな手法で「お客様起点」の再強化に取り組んでいくのでしょうか。

 

「お客様起点」を考えるうえでも、今あるミッションやビジョンに加えて「どういったブランド人格で、どのような振る舞いをするのがオルビスらしいあり方なのか」とブランドパーソナリティを言語化しました。そこで誕生したのが「パーパソナリティ」。パーパスとパーソナリティを掛け合わせて、ブランドの人格とその存在意義を表現したオルビス独自の造語です。

Compassion(思いやり)を携え、適度な距離感で相手に寄り添っていく「Compassin-ist」をオルビスの「パーパソナリティ」として置いたのです。

オルビスの社員は「スマートエイジング®」の思想に共感し、お客様視点を大切にしたいと考えています。ですが、お客様と直接触れ合う機会のない部署もありますし、目の前の業務に集中するあまり、お客様を感じることが後手に回る場面も出てきがちです。

オルビスには創業当時、「知恵の泉」と名付けた文書録があって、お客様と封書でやり取りしていた時代に届いたすべての手紙類が閲覧できるように保存されていました。今では、その進化版であるデジタルツール「CHIEIZU(チエイズ)」があり、お客様からのご意見やご要望、SNSに投稿された反応に至るまで、全従業員が容易にアクセスできる仕組みが整っています。また、オルビス本社にはコールセンターがあり、お客様との注文のやり取りを社員がモニタリングできる席があります。従業員には、こうした仕組みや機会を活用して、お客様をもっと肌で感じてほしいですね。

【画像】創業時からお客様との関係性を大切にしてきた「知恵の泉」文書録  

「顧客視点に立つ」と言うのは簡単ですし当たり前。データから状況を読み解くのも大切ですが、リアルを知らないままで、お客様の心に刺さるものやサービスは提供できません。「パーパソナリティ」の策定は、お客様理解を深められる仕組みがあり、35年も一緒に歩んでくれるお客様もいる、オルビスならではのアセットをもっと使おうという、社員に向けた意思表明でもあるのです。

ブランドとして最良の解を出すため、「本当の多様性」を追い続けたい

 

――西野さんは2023年初頭から取締役執行役員となりました。ご自身の中で何か変化はありますか?

 

意識しているのは「今の役割や権限で何ができるのか」ということ。社員が頑張っただけ成果に結びつく会社の姿を主導していくのが、最大の任務です。

本当によい商品やサービスを生み出していこうと思えば、いろいろな考えや意見があったほうがよく、年齢や性別などが多様な環境で個人が価値発揮できること(ダイバーシティ&インクルージョン)が欠かせません。性別を例にすると、オルビスは課長以上の女性マネジャー率は46%ですし、年齢は20代~50代と幅広い。多様な意見をもとに議論して、ブランドとしての最良解を出すためにも、本当の意味でのフラットさ、オルビスとしてあるべき姿を追求したいです。

これはお客様に対しても同じです。昨年からサステナビリティ推進室を管掌下におき、“オルビスとしてのサステナビリティ”を追求しています。環境やジェンダー、格差問題など企業として取り組むべきことは多様にあります。その中で、まず我々は「スマートエイジング®︎」という、価値を提供し続ける企業として、年齢、ライフステージや障がいの有無、様々なバックグラウンドにあっても、生涯を通じて一人ひとりの美しさを発揮できるブランドを目指して取り組んでいます。

今年2月にローンチした「オルビス アンバー」は、年齢を重ねるごとに億劫になるビューティーへのモチベーションを落とさず、継続していけるための寄り添いを大切にしています。年齢を重ねると肌悩みは複合化して増えていきますよね。増える肌悩みに応じてアイテムを追加していく負担を解消し、“ステップレススキンケア”で前向きに自分らしい美容を楽しんで欲しい。そんな想いから誕生しました。

また先日は、「ちょっと聞いてみたかった生理や婦人科のこと」、と題して婦人科医師を招いたオンラインイベントを開催しました。他にも、当事者である従業員のアイデアが詰まった聴覚に障がいのあるお客様向けの「指さしボード」を店舗に展開したり、多様なお客様の心や力を開放するような商品開発や機会作りを行っています。

 

――オルビスとして、できることはまだまだありそうですね。

 

ブランドビジネスに舵を切り、パーセプションチェンジという山は登りきったと思いますが、常に新しい“山脈”を描いていきたいですね。今後も「Compassion-ist」を携え、ブランドとして何ができるかを追求し続けていきます。

取材・文:木内アキ

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

オルビスでは現在、一緒に働く仲間を募集しています。少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらからご連絡ください。

皆様のご応募、お待ちしております!

※本記事内容は、公開日(2023年5月9日)時点の情報に基づきます。

 
Profile

西野 英美(Nishino Emi)

取締役執行役員。2002年、オルビス入社。2018年からのリブランディングでは、商品企画部長として商品全体の企画・設計を指揮。2020年より商品企画・開発~調達・物流領域の執行役員に就任。その後も、新規事業開発グループ、サステナビリティ推進室と管掌領域を広げ、多様な人材・組織を統括し、幅広い分野においてブランドの成長戦略をリード。23年より現職、経営戦略領域を管掌下におく。従業員と“対話”を重視し積極的に1on1を実施(通称:西野の館)、社員一ひとりがブランドの哲学である「スマートエイジング®」をどこよりも体現できるよう奮闘中。

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