オルビスの“組織戦闘力”を上げる。HR領域で組織開発グループが手掛ける、社内から始まる価値創造
JOB&CULTURE
こんにちは。ブログ担当の仁尾です。
オルビスは2018年以降の抜本的なリブランディングと同時進行で「未来志向」×「オープンマインド」の実現に向け、組織風土(組織全体)の構造改革にも取り組んでいます。
オルビスの組織風土改革の詳細はこちらそのなかで、「人材開発」「エンゲージメント」「生産性向上」「総務」を中心とした、『組織の価値創出領域の役割』を担うのが、HR統括部組織開発グループです。2023年から同グループのマネジャーに就任した横山智之さんは「今、オルビスは『組織の価値創出における戦闘力を高める』を全社的なテーマに掲げています」と話します。
ではどのようにして、オルビスにいる“人”の能力や働きやすさを向上させ、企業ブランド価値を創出しようとしているのか。実際に進めているHR施策についても掘り下げながら話を聞きました。
社員一人ひとりの力がブランドの差別化につながる
――最初に「組織の価値創出における戦闘力を高める」とは、具体的にどういうことなのか教えていただけますか。
ここで前提としている“価値”とは、自分たちから提示するものではなく「お客様が感じて、認めてくださるもの」を指しています。その価値を創出し続けるためには、社員一人ひとりが常に学習をし続けて、コミュニケーションの面においても伝えるべきことをお互いが伝えあって、「当たり前の基準を上げていくこと」が必須になります。
いま、改めて“価値創出”に言及している背景としては、会社を取りまく環境が刻々と変化していることがあります。
現在は「モノ」(商品)やサービスの差別化さえすれば、それが優位性に繋がった時代とは違い、より求められるのは「コト」(文脈やコンテンツ)で、企業姿勢や理念(VISION)が、戦略を構成する要素の一つとして重要度が増しています。
そのような時代に、お客様に今まで以上に最上のブランド体験(CX)をお届けしていく為には、商品やサービスだけでなく、社員一人ひとりのマインドセットや能力を引き上げて、組織としての戦闘力をより高めていくことが必要だと感じています。コロナ禍を経て、ますます厳しい競争にさらされている市場環境を踏まえると、経営も含めてその課題に対する危機感を強く持っています。
――そのような背景を踏まえて、HRがどういう役割を担っていくのでしょうか?
前述のとおり、専門性を高めるために「学び続けること」、かつ「価値創出に繋がる必要な意見はしっかりとぶつけ合うこと」が重要だと考えており、私が担当してる組織開発グループでは、それらを推進していくことに注力をしています。 中途社員が増え、仕事に対する価値観も多様化していく中、オルビスが長年培ってきたDtoCをはじめとした各分野の専門性もブラッシュアップして、全社員に伝えていく必要性がある。質の高いアプトプットをより増やしていくためには、良質なインプットが必要だと考えています。
――“専門性を高める”人材開発に主眼を置いた、新たな施策はありますか?
2023年9月末からスタートした「オルビススクール」です。
冒頭でも外部環境の変化について触れましたが、いまは“VUCA”と呼ばれる、変化が激しく明確な正解のない時代です。そんななかで社員一人ひとりのパフォーマンスを最大限発揮してもらうために、オルビスで働くうえで必要なビジネスモデルの知識と高いリテラシーを、社員全員に獲得してもらう目的で始めたものです。
さらに、バリューチェーンを各部署が繋いでいくうえでの「ONE ORBIS」という定義をしっかりと理解するために、オルビス独自のコンテンツを用意しました。
HR戦略として注力するポイントは、組織にいる“人”のパフォーマンスを活性化させ、オルビスのあらゆるアウトプットの基準を底上げすることです。
カリキュラムは大きく2つに分類されており、1つが「ビジネスリテラシー」。会計やロジカルシンキングのほか、主力事業の一つである通販のベースとなるダイレクトマーケティングなど、ビジネスに必要な基本的知識の講座を用意しました。
2つめは「オルビスリテラシー」。自社の商品について、バリューチェーンの構造、お客様はどういう方たちなのか、などオルビス特有の必要となる知識について学びます。どちらも入社したての社員だけでなく、既存社員も対象にしたカリキュラム構成です。
――カリキュラム内でオルビスらしい講義はありますか?
どの講義もユニークだと思いますが、ビジネスリテラシーの中に設けた「アサーティブコミュニケーション」は今後の価値創出に向けて全社で大切にしていきたいスキルです。これは、自分も相手も認めながらも「言うべきことを伝える」コミュニケーションの手法です。
部署を超えた社員の“顔”がわからない」が組織力の低下に
――では「学び」の面とは別に、「組織の戦闘力を高める」うえで課題に感じていることはありますか?
組織におけるTM(トランザクティブメモリー:誰が何を知っているのか)の低下です。オルビスのビジネスモデルは、商品を企画してお客様の手元に届けるまで、さまざまな部署が連なるサプライチェーンを構成しており、仕事の内容が重なる部署がありません。オルビスではこの、各セクションが使命と責任をもってバリューチェーンを繋ぐことを「ONE ORBIS」と定義しています。つまり、所属グループのことだけ考えてしまうと連携が分断され、最上の顧客価値の提供が果たせなくなる可能性がある。また、バリューチェーンを理解していないと生産性が高められず、スピードも遅くなる。TMの低下はそこに影響を及ぼしていきます。
ここ5年で多くの社員が入社する一方で、コロナ渦によるリモートワークが続きました。所属グループ内の仕事だけに終始しやすいうえ、やり取りの多くを占めるのはテキストコミュニケーション。他部門の業務に対する理解やコミュニケーションの質が低下した点は否めません。
こうした課題点から「お客様にこれまで以上の価値を感じてもらうには、企業の根本である組織風土やカルチャーから変化を起こしていかなければ生き残れない」という強い危機感を抱いています。
社員同士が理解し合い、コミュニケーションを深めやすい働き方を
――2022年から出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を導入したのも、その課題感からでしたね。
※参考記事:オルビスが週2出社の「ハイブリッドワーク」を導入した背景、狙いとは?
そうですね。働き方も多様化する中、移動時間の短縮や育児のしやすさなど、リモートワークには一定の価値を感じています。一方で、オルビスの組織能力を向上させていく為には、オフラインのコミュニケーションは不可欠だと考えています。部署を超えた協業やクリエイティブのアイディアをはじめとした、予想を上回る新しいシナジー(効果)が生まれると感じているからです。
また、コロナ渦のなか、多数の社員が入社しているという点からも、対面でお互いの関係性を構築していく必要があると判断しました。
2023年9月からは週3日出社での運用が始まり、それに合わせて気軽に打ち合わせができるボックス席の拡充や、バリューチェーンの近い部署同士でのフロア構成など、“枠越え”コミュニケーションが生まれやすいオフィス環境を目指したリノベーションを行っています。
例えば、食堂も座席数を増やし、気持ちよく食事ができる空間を担保しつつ、食堂の営業時間外でもフリースペースとして活用できるよう、サイドに個人用のハイテーブル、正面にファミレス席を設置して、ちょっとしたMTGや作業ができる場としてリニューアルしました。
――他にはどんなアプローチを実施していますか?
社員数が増えたことで「顔と名前が一致しない」状況が起こりつつあったため、TMの改善とコミュニケーション機会の創出という文脈のもと、2022年度下期から「アワリープロフィール」というツールを導入しました。これはオンライン上に用意した社員一人ひとりのプロフィールページで、誰がどの部署にいてどんな仕事をしているのかを閲覧できるものです。担当業務や過去の経歴が記入できるので、専門分野やどういった相談に答えられるのかがすぐ分かります。
またそれだけでなく、人となりも知ることができるように、プライベートの好きなコト・モノを画像付きで紹介できたり、趣味のタグを登録できるのも特徴です。「美術館」「料理」など気になるタグを押すと、同じ趣味を持つ社内メンバーが分かるようになっているんですよ。
――初めて一緒に仕事をするメンバーでも会話のきっかけが生まれますね。
社内コミュニケーションツールであるslackのプロフィール欄に「アワリー」のリンクを貼ることで、ミーティングで“初めまして”のメンバーがいる場合、事前にその人の情報に目を通すのが業務フローのひとつになっている社員も多いです。また、プレゼンなど自己紹介が必要な場面で「アワリー」を投影しながら話すこともありますね。相互理解に欠かせない社内インフラのひとつとして機能しています。
「リアルな交流」と「学び」の場が、未来に向けた変化の土台に
――「火曜日のお茶会」という取り組みもあると聞きました。
ハイブリッドワークが始まってから、全員出社日の恒例イベントとして「火曜日のお茶会」を実施しています。午後のリフレッシュタイムに、「社員同士がお茶とお菓子を楽しみながら歓談する」という内容で人気を集めており、多いときは本社社員の半数近くが集まるほど。事後アンケートでも「普段コミュニケーションが取れないメンバーとじっくり話ができるので楽しみにしている」という反応が多いです。参加数の多さを活かし、今後は新しい施策の告知の場としても活用していくつもりです。
他にも、同じく全員出社日の業務終了後に、オフィスの講堂に集まってお酒を含む飲食と共に懇親を深める「木曜日の飲み会」や、お子さんがいて同イベントの参加が難しい社員のために、ランチタイムに気軽に参加が出来る「ランチ会」なども開催し、グループ内外のコミュニケーションのきっかけを作っています。
――最後に、HRとして施策を進めていくにあたり、大切にしている軸を教えてください。
オルビスの社員全員が価値創出をする土台をつくり、事業の戦略実現のためのパフォーマンスを最大化するのがHR戦略のミッションです。それをトップダウンではなく、社員とともに実現させていくうえで、やってみて反応を見ないと分からないこともたくさんあります。
正解もないですし、常に現場の声を吸い上げながら動くので気力・体力が必要ですが、正直めちゃくちゃ楽しいです。オルビスが好きなんですよね、やっぱり。
だから社員に「会社に行くの楽しいな」「お客様のためにいいことしたいな」ってシンプルに思ってもらえるように、これからも走り続けようと思っています。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
オルビスでは現在、一緒に働く仲間を募集しています。少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらからご連絡ください。
皆様のご応募、お待ちしております!
※本記事内容は、公開日(2023年11月21日)時点の情報に基づきます。
Profile
横山智之(Yokoyama Tomoyuki)
2009年オルビスに新卒で入社。ロジスティクス物流、化粧品MDを経験した後、2017年ポーラ・オルビスグループのTHREEに出向し、メンズブランドの立ち上げを担当。2022年オルビスに戻り、店舗事業グループマネジャーを務める。2023年より、現職であるHR統括部組織開発グループのマネジャーに就任。