ビジョンを体現するサイト「Portal to the Future」の真の狙いとは。 新規事業の立ち上げから考える、オルビスが目指す未来(前編)
JOB&CULTURE
こんにちは。ブログ担当の土井山です。
オルビスでは2018年からリブランディングが始動し、翌年には10年後のオルビスを描いて長期的なビジョン・戦略を立案する「2029年プロジェクト」が発足、はや3年が経ちました。
その間、オルビスの未来につながる新事業の創出に挑戦してきたのが新規事業開発グループです。「新たな成長ドライバーを作る」をミッションに、日常の中にある課題に目を向けながら未来を描き、オルビスだからこそ挑戦すべき新事業・サービスと向き合ってきました。
パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」、オリジナルサラダ「INNER COLOR SALAD(インナーカラーサラダ)」、そしてオルビスが思い描く未来に直感的に触れられるビジョンサイト「Portal to the Future」など、この3年の間にビューティーの新しい可能性を広げるサービスのローンチがありました。
手をゆるめることなく多角的な取り組みを進める、新規事業開発グループの役割や実現したい未来とは?
今回は同グループのマネジャーである田村陽平さんと、同メンバーの諸町実希さんにインタビュー。前編ではオルビスの成長と新規事業の関係を振り返りながら、直近の取り組みであるビジョンサイトローンチの裏側にある目的について聞いていきます。
「こんなこともやっていいんだ!」という前例を作る
――そもそも、なぜ新規事業開発グループが誕生したのか、背景を教えてください。
田村:発端は、リブランディングの前身である中長期計画の立案プロジェクトがスタートしたことです。当時、私は事務局の一員として参加していましたが、そこで語られていたテーマはよくある抽象的なステートメントのようなものでなく、10年後の世界を本気でイメージし、生活の中で起こりうる課題をリアルに定義することでした。そのうえで、オルビスの根幹である「スマートエイジング(R)」(一人ひとりが持つ本来の美しさを引き出し、多様な美しさや可能性を広げる)という価値観を前提に、オルビスのアセットと未来の技術を組み合わせると、どのような製品やサービスに可能性があるのかを考えてきました。
そうしたリアリティを追求する動きの中で、2つの発見がありました。
1つは、10年後のために現時点でできることは無数にあるという気づき。2つめが、10年後に向けてもう芽吹き始めている市場があり、今後オルビスが先行者利益を狙うならすぐにでも動き出さないといけないという事実です。後者にあたる事例のひとつが、パーソナライズスキンケア市場でした。
30年以上、一人ひとりが持つ肌本来の力を引き出すことを目指し、開発を行ってきたオルビスにとって、パーソナライズは一種の使命とも言えます。早々に着手しようと、あっという間に実行が決定しました。同時に、こうした新規事業を立ち上げるプロジェクトチームを作ろうという結論に至り、私がリーダーとして関わることになったのです。
2020年に開発がスタートし、2021年4月にパーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」が誕生しますが、その直前にいちプロジェクトから「新規事業開発グループ」という正式な組織へと移行しました。プロジェクトにいた諸町が専任メンバーとして加わり、現在は専任4名・兼任5名の計9名で活動しています。
――オルビスの中で、新規事業開発グループが担っていく役割とはどういうものでしょうか。
田村:リブランディング以前のオルビスは業務体制が固まっているが故に、オペレーショナルな面がありました。たとえ新しいビジョンを掲げたとしても、どうしても目の前の業務をこなすことが優先になり、そこから一歩抜け出すイメージが湧きづらいのではないか、と。
そうした観点から言うと、2021年に発売した「INNER COLOR SALAD(インナーカラーサラダ)」が象徴的で、率先して「こんなことまでやっていいんだ」という先行事例を作るのが新規事業開発グループの役割です。未来を漠然と想像したり、未来へのミッションを語るだけで終わるのではなく、どんどん具現化していく。私たちが前例の壁を打ち破ることで、「オルビスでこういう分野に着手するのもアリかもしれない」と発想の幅が広がりますし、これまでの企業文化を刷新していくきっかけを生むのが狙いです。
オルビスが描く未来に共感し、共創してくれるパートナーに出会いたい
――そうした意味で、2022年2月にローンチしたビジョンサイト「Portal to the Future」にはどのような狙いがあるのでしょうか。
諸町:このサイトでは、2029年の未来で暮らす3人の人物を通じて、オルビスの提供価値である「スマートエイジング(R)」の視点から、仮説立てた課題に対するソリューションとプロダクトを3種紹介しています。「将来これを作る」という宣言ではなく、オルビスの未来に対する視点を発信しています。
いくら未来を考えて製品やサービスを構想しても、社内に留まっていては、従来の発想や実現手法の域をなかなか超えることができません。新しいプロダクトや価値観は、社会に受け入れられてこそ真価を発揮しますし、世の中の反響を得ることで実現スピードも高まると考えています。
「私たちはこんなことを考えています」というビジョンをリアリティのあるコンセプトとソリューション、ユーザー像に落とし、「スマートエイジング(R)」な未来をよりイメージしやすくして、世の中に発信してみる。そして、それを見ることで「欲しい」「面白そう」と感じてくれる人や、「こんなこともできるのでは」というアイデアを持つ人など、共感してくれる人を巻き込む場に育てることを目指してローンチしました。
――これまでのオルビスのウェブサイトとはテイストを変えた、コンセプチュアルなサイトデザインですね。
諸町:一般的に、企業が発信する未来に向けた経営ビジョンは、文章によるかしこまった発信になりがちです。先ほど田村が「壁を破る」という話をしましたが、私たちは従来の手法にとらわれず、このビジョンサイトを見た人が未来の暮らしに没入できる直感的なデザインを大切にしました。
【写真】ビジョンサイト「Portal to the Future」の一部
田村:前提として、このサイトは「パートナー企業」と「採用」をプライオリティの高いターゲットとして設定しています。今後、事業を拡張していくにあたり、私たちの持っている技術や知見だけでは立ち行かない面が出てくるでしょう。求める未来を近づけるためには、これまで以上にパートナーシップを組んでいく企業や人、仲間の存在が大切になります。
サイトはローンチしたばかりですが、すでに効果を実感している点で言えば、新しい取り組みをご一緒させていただきたい企業に対して、これを共有することで「私たちは事業をここまで成長させたいと思っている」というイメージが伝わりやすくなりました。言葉だけでなく、具体例を使ったほうがイメージのすり合わせが早いのです。より共感度を深め、成長スピードを上げる役割になっています。
採用面では、インターンシップに参加する学生に向けた意識の共有や、「こんな飛ばしたこともできる会社なんだ」と感じてもらうブランディングにも活用したいと考えています。
オルビスの進化とともに、ビジョンサイトも拡張していく
――「Portal to the Future」というサイトは、今後どのように発展していくのでしょうか。
諸町:実は、未来のビジョンを具現化しようという動きのなかで、ビジョンムービーのような動画でのアウトプットも想像していたんです。でも、社会の変化やテクノロジーの進化スピード、オルビス自体も進化の途中であり、未来への視点がアップデートされていくことを考えると、スピーディーに情報を表に出しながらも、更新性が高い発信の仕方が向いているのではないかと、ウェブサイトの形を取りました。
3名の人物の価値観や未来の暮らし、そこに紐づくプロダクトは、ビジョンサイトの構想から発信まで、本プロジェクトを一貫してご一緒いただいた、パートナー企業であるイギリスのデザインリサーチ会社Seymourpowell(シーモアパウエル)の協力のもと、グローバルトレンドの綿密なリサーチ結果をもとに生みだされています。新規事業開発グループだけではなく、オルビス全体としてグローバルの視点は欠かせません。PEST分析にはじまり社会が今後どう変化していくのか、人の意識や価値観はどう移り変わるのか。化粧品という枠を越えてヘルスケアやテックとも結びついていくだろう、世界的なビューティートレンド。そこに「スマートエイジング(R)」という視点を掛け合わせ、私たちが取り組むべき課題は何なのか。あらゆる観点で考え続けています。
リアリティを大切にしている、とお話ししましたが、私たちはこのプロダクトそのものを作ることにこだわっているのではなく、なぜこういったものが未来で必要とされるのか、その背景や課題に対するソリューションのひとつの形を具現化したにすぎません。今後はこのサイトを起点に社会にテーマを投げかけ、リアクションを探っていきたい。同時に「スマートエイジング(R)」の発想の多角化と概念の解像度を高めていけるといいなと思っています。その仕掛けがSNSなのか、インターンシップなのかは検討中ですが、ウェブの更新性を生かして拡張していきたいです。
動きながら共感者を集め、求める未来を引き寄せるスピードを上げていく。このサイトがそうした動きの旗印となるよう育てるのが、今後の目標です。
取材・文:木内アキ
オルビスの未来に触れられるビジョンサイト「Portal to the Future」はこちら
※本記事内容は、公開日(2022年6月9日)時点の情報に基づきます。
Profile
田村 陽平(Tamura Youhei)
2013年新卒入社。経理、経営企画、マーケティング戦略部を経て、2019年に現職の前進である「2029年プロジェクト」のリーダーに。2021年より現職の新規事業開発グループマネジャーを務める。パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy (カクテルグラフィー)」などオルビスの未来を創る新規事業開発を主導する。
諸町 実希(Moromachi Miki)
デジタルマーケティングのコンサルティング会社、スタートアップでのPRや新規事業立ち上げを経て、オルビスへ転職。マーケティング職を経て、2020年5月から新規事業開発グループへ。10年後のブランドビジョンの策定や、パーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy (カクテルグラフィー)」の開発メンバーとして活動する他、フード事業はじめ新規事業開発に取り組んでいる。2022年より、サステナビリティ活動を推進するプロジェクトも兼務している。