2022.11.30

オルビスがアプリ内新サービス『肌カ.ル.テ』で目指す、「深く・長い」お客様との関係づくりとは

PROJECT

JOB&CULTURE

 ORBIS

こんにちは。オルビス公式ブログ担当の村澤です。

2018年のリブランディング開始以降、オルビスが重点に置いていることのひとつが新たなCRM(顧客関係管理)の構築です。その中でも特に、「ORBISアプリ」をプラットフォームとしてお客様との「深く、長い」関係性を築くアプリを核にしたCX戦略であることは、以前の記事(前編後編)でもご紹介しました。

そして2022年11月、ORBISアプリが進化してリニューアル。そのコアとなる新サービス『肌カ.ル.テ』がスタートしました。これはAIを活用した分析コンテンツを入口に、お客様の肌悩みに応じてスキンケアを習慣化していけるよう、アプリを通じてパーソナル美容アドバイザーがサポートする、これまでにない“美容伴走型”のコミュニケーションプログラムです。

『肌カ.ル.テ』の新機能実装に伴うアプリのリニューアルは、オルビスがお客様とどのような関係性を目指して行われたものなのか。そこで創出される新しい顧客価値とは。今回は、お客様との「深く、長い」関係づくりを担っているCRM統括部から、『肌カ.ル.テ』の企画開発を担当したCX戦略グループ グループマネジャーの瀧明亮さん、コンテンツ・教育企画グループ マネジャーの島田久美子さんに話を聞きました。

 

パーソナルな美容成功体験を積み重ねてもらうために

 

――今回「ORBISアプリ」のアップデートに伴い、新サービス『肌カ.ル.テ』がリリースされました。その背景にはどういった狙いがあったのでしょうか。

 

瀧明さん(以下、瀧明):これには企業目線とお客様目線、両方の狙いがあります。企業目線で言うと、現在オルビスが進めているアプリコア戦略では、アプリを中心にお客様一人ひとりと関係を構築していくビジョンがあります。将来的にはアプリをよりパーソナライズさせ、お客様の好みに合わせた情報の出し分けができるまでに進化させたいですし、そのためには顧客識別力を高めることが必須条件です。

以前は購買データに基づいてお客様の反応を予想する動きが主でしたが、現在はアプリからお買い物情報だけでなく、どんな美容記事に関心があるのか、肌分析の結果などのデータも取得できるようになりました。

今回の『肌カ.ル.テ』では、よりお客様のリアルな悩みや思考まで含めた詳細なデータを取得し、未来に向けたチューニングに生かしていきたい、というところまで見据えています。

島田さん(以下、島田):お客様目線では、一人ひとりの美しさを叶えていく「スマートエイジング®」な世界観の実現があります。というのも、店舗のBA(ビューティーアドバイザー)や口コミの声から「自分の肌を理解して、肌悩みに合ったお手入れをするのが難しい」と感じているお客様が数多くいることが見えていました。そこで、読み物記事のようにスポット的な情報を届ける手法とは別に、お客様個別の肌悩みに寄り添う連続的・継続的なコミュニケーションを実現できたら、困り事を解決できるのではないかという考えが『肌カ.ル.テ』ローンチの背景にあります。

瀧明:現代はスマートフォンも普及し、通販の比重が増えて店舗に足を運びにくくなるなど、お客様の購買行動も変化しています。そこで、いつも身近にあるスマホのアプリを通じてお悩みを解消し、パーソナルな美容の成功体験を積み重ねてもらうことでお客様とオルビスとの関係をより深くし、その延長としてLTV(顧客生涯価値)やリテンション(関係性維持)を高めていきたいのです。

自分で「できる」ところまで、きめ細かく寄り添い伴走する

 

――これまでのORBISアプリ内の肌分析コンテンツといえば『AI未来肌シミュレーション』がありましたが、『肌カ.ル.テ』ならではの独自性や他社優位性はどういったところにあるのでしょうか。

 

瀧明:ORBISアプリ内サービスの分析コンテンツについては、『AI未来肌シミュレーション』(※今回のアップデートに際して『肌カ.ル.テ』に吸収)、『パーソナルAIメイクアドバイザー』、『AIアイブローシミュレーター』などがあります。どれも人気コンテンツですが、どちらかといえば分析がメインの、ややシンプルなアクションです。一方『肌カ.ル.テ』最大の特徴は、分析した後も3日に1度、約1年に渡って悩みに合わせたアドバイスやお手入れ継続への応援メッセージが続く“美容伴走型”のサービスであることです。しかも肌悩みと悩みの深さやモチベーションを考慮し、用意したコースは全33パターンあります。メッセージの頻度やパターン数は今後変わっていく可能性もありますが、現段階においては、限りなくパーソナライズに近い状態を実現しました。

 

島田:特に重要視したのが、『肌カ.ル.テ』を使うと①お客様自身が自分の肌を知る、②肌悩みに合わせたお手入れ方法が分かる、③それが日々実践できる、という「できる」までを網羅することです。メッセージはAIによる自動送信ですが、あたかもBAが送ってきたような“人肌感”のある表現を意識しました。

たとえばニキビに悩むお客様は若い世代が多く、見た目に表れる悩みなので気分が落ち込みやすい傾向がありますので、励ましながら導くコミュニケーションを中心に。エイジングケアの場合は「どうせ何をやっても変わらない」とお手入れを諦めやすいため、「継続できることが素晴らしいですよ」と寄り添うことを大切にしています。

瀧明:『肌カ.ル.テ』ユーザーだけが購入できる肌悩みに応じた商品セットもご用意しました。これにより、①セットを購入する方、②もともとオルビス商品を使用している方、③他社製品を使用している方、3パターンのお客様を想定し、①②の方にはアイテムの使用回数や量までに言及する具体的なアドバイスを、③の方にはどんな製品でも共通して活用できる基本的なアドバイスをするなど、情報の粒度もすみ分けをしています。

また今回、ORBISアプリの中には有人チャット機能を搭載しました。これはお客様の心配や不安に対し「聞きたいタイミングですぐ解決できる」姿を実現するためで、美容伴走型コミュニケーションの価値を最大化し、定着率を上げるのが狙いです。こうしたきめ細かいコミュニケーションがアプリ1つでできるようになる点が特徴であり、他社優位性に繋がると考えています。

 

島田:店頭の接客経験から「継続できない」「だから悩みが解決できない」という課題を抱えたお客様がとても多いのを感じてきました。自分で「できる」ところまで伴走するサービスはなかなか他にありませんし、一般的な分析コンテンツサービスは商品購入を促すことに帰結するものが多い中で、購買の有無に関わらず悩みに寄り添う姿勢はオルビスらしいと感じています。

 

――パーソナライズに近い使用感を実現するにあたって、苦労したポイントは?

 

瀧明:『肌カ.ル.テ』を使うことでお肌が良くなった実感を持っていただくには、正しい分析結果が出ることが大前提です。とはいえ、質問が細かすぎると利用ハードルが上がり、シンプルすぎると正しい情報が取れない。このバランスは非常に悩ましいポイントでした。

島田:分析部分には「AI未来肌シミュレーション」の機能をベースに『肌カ.ル.テ』ならではのロジックを組み合わせています。適切な判断をAIに学習させるにあたり、美容のプロであるビューティクリエイターの「人間的な感覚」による判断結果を感性テストの段階で盛り込んでいます。たとえば、約800人の顔写真を1枚1枚見てシワやシミがどの程度に思えるか、モニターの肌を実際に触って水分量やハリをどう感じるかなど、ビューティクリエイターの人間的な感覚とAIの判断にズレがないかをチューニングしていきました。

『肌カ.ル.テ』はお客様一人ひとりの美しさを叶える土台

 

――オルビスならではの新たなCRMを進化させていく上で、「ORBISアプリ」がこれから目指すお客様とのコミュニケーションはどういったものでしょうか。

 

瀧明:究極の理想論を言えば、本当に1対1で話をしているような状態に持っていき、「オルビスって私のことを分かってくれている」という“深く、長い”関係性をアプリで構築することです。そのためにはどこまでお客様の識別率を高め、セグメント別のコミュニケーションをどこまで細分化できるか。今回の『肌カ.ル.テ』ローンチはその土台となるものだという認識です。

たとえば『肌カ.ル.テ』の設計において、初利用時にだけ回答してもらうライフスタイルや価値観にまつわる質問があります。「なんのためにメイクするの?」のような質問はなかなか聞く機会がありませんが、実はコミュニケーションの分岐が発生する重要ポイントになる。また『肌カ.ル.テ』に先行し、アプリ会員限定の心理テストである、『ORBIS diagnosis』を始めていますが、これも美容という観点以外からお客様の価値観や思考を掘り下げるデータ取得を視野に入れています。

相関性ではなく、お客様がされる行動の因果関係を見ていくということですが、今後はそうした思考性データも含んだ判断が可能になれば、よりパーソナライズの精度は上がっていくと思います。

――デジタルとリアルのつながりについては、どのようなビジョンがありますか?

瀧明:実際には、これからAIがどう進化するかによってもできることは変わってきますが、『肌カ.ル.テ』の有人チャットのように、最後のひと押しにリアルを介することでお客様の心理的満足度は高まる面はあると思っています。デジタルの中に“人肌感”をどう演出するか、それによって生み出されるここちよさがオルビスらしいCXの在り方として、重要なキーワードだと思っています

 

――『肌カ.ル.テ』は、そういう未来を実現していくための推進力となるサービスなんですね。

瀧明:『肌カ.ル.テ』を長く続けていただくと、お客様の美容マインドが高まっていくので、そこでお客様同士をつなげるコミュニティをつくるなど、多様なコミュニケーションの深まりが考えられます。分析の信頼性がよりアップすれば『肌カ.ル.テ』のコースを終了したことが「信頼できる美容知識がある」という証明になる未来もあるかもしれません。

島田:なにより「スマートエイジング®」な生き方の実現を後押しできますよね。『肌カ.ル.テ』の中には実際に自分の肌を触って、感触や変化を確かめてもらうといった設問が多いです。朝晩365日行うスキンケアはどうしてもルーティン化しやすいのですが、お手入れする楽しさや悩みが改善していく喜びを提供したい。自己理解を深めることで「私のままでいいんだ」という自尊心を持っていただけたらうれしいです。

瀧明:これらの動きはすべて「お客様ごとの美しさをどう叶えるか」という目的のためです。一人ひとりの人生がより良くなるために伴走をしていく、そのためのコミュニケーションのハブとして「ORBISアプリ」がある。もっと言えば、それは決して一方通行の押し付け的なものではなく、お客様側にも自由な選択肢を持てるといったパーソナルな余白を作っていく。そんな未来の姿を実現していきたいです。

取材・文:木内アキ

 

※本記事内容は、公開日(2022年11月30日)時点の情報に基づきます。

 
Profile

瀧明 亮(Takiaki Ryo)

CRM統括部 CX戦略グループ グループマネジャー。店舗運営やロジスティック、IT企画開発の経験を経て、近年はCX戦略全般を担当。2022年よりグループマネジャー。

島田 久美子(Shimada Kumiko)

CRM統括部 コンテンツ・教育企画グループ マネジャー/エグゼクティブビューティディレクター兼務。オルビスの美容理論を元に、これまでのAI解析による分析コンテンツの企画全てに関わる。今回の『肌カ.ル.テ』にも企画・開発として参加。オルビスの記事コンテンツにも頻繁に登場する人気のビューティクリエイター。

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