オルビス「社長室」の挑戦。新設の裏側、部署横断で新しい価値を生み出すために

JOB&CULTURE

こんにちは。採用広報の仁尾です。
スキンケアを中心に、D2C(エンドユーザーであるお客様への直販)ビジネスで成長を続けてきたオルビスですが、さらに多くのお客様に価値を届けるため、近年はBtoB(卸売など直販以外の商品販売)にも注力しています。
こうした構造変革に伴うバリューチェーンの拡大で、避けられないのは部門間の連携の複雑化です。そこで2024年、オルビスはバリューチェーン全体を見渡し、部門の壁を越えて新しい価値を創造することを目的に「社長室」を立ち上げました。
今回お話を聞いたのは、社長室を立ち上げた中俣博之取締役と、外資系コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーから転職し、推進メンバーとして尽力する安井彬磨さんのおふたりです。
社長室は何を考え、どんな戦略を描いているのか。挑戦の舞台裏について話を伺います。
「重要だけど、緊急ではない」課題に取り組めていなかった
――まずは、社長室が新設された背景についてお聞かせください。
中俣:オルビスに参画して見えてきた経営課題として、「優先順位が高く重要なミッション」に取り組み、短期間で成果を出すのは得意な反面、「重要だけれども中長期的かつ抽象的なミッション」については、後回しになりやすいという傾向がありました。
この理由のひとつに組織構造があります。オルビスは商品開発、マーケティング、カスタマーサポートなど、各部署がそれぞれのミッションやKPIに応じて分かれている職能別の組織です。この構造には各部門の専門性を高める良さがある反面、自ずと短期的に成果を出す即戦力の比重が大きくなっていきます。

中俣:新商品の開発においても、アイテム毎に最適なマーケティング、商品企画、ロジスティクス、PR、オペレーションなどをひとりのブランドマネジャーが全体を見通す組織体制ではなく、各部門が業務を担当する考え方が主流です。つまり事業計画に則って、目の前の取り組みが優先されてしまう。そうした背景があって「重要だけれども中長期的かつ抽象的なミッション」は、社長を中心とした役員が主導していたんです。
ただ、今後の会社の進化を考えるうえでは、社内全体を横断して最善策を見つけ出していくチームが必要になる。その課題認識をもとに設立されたのが「社長室」です。
オルビスの「コールセンター」が持つ可能性
――現在、社長室が取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
安井:現在、複数のプロジェクトを進めていますが、そのうちのひとつがオルビスの強みであるコールセンターを活用したカスタマーエクスペリエンス(CX)向上のプロジェクトです。
オルビスのコールセンターにおける対応は、同業他社と比較しても最上位クラスの品質を誇っており、働いているスタッフもオルビスに対するロイヤリティが非常に高いんです。僕自身、実際に利用して、単なる受注窓口というよりは良質なカウンセリングに近いと感じました。お客様一人ひとりに寄り添ったとてもここちのよいサービスを提供してくれています。
現状は、オルビス歴が長いお客様のご注文窓口としての役割がメインですが、この品質を武器に、将来的には受注だけでなく、もっと幅広くお客様のお悩みや疑問点全般を解消する役割も担ってほしいと思っています。

中俣:今の時代、個人でもスキンケアブランドを作れるようになり、お客様からすると、オルビスもインフルエンサーのブランドも同じ「候補のひとつ」に過ぎません。そうした中で、オルビスは研究所を有する商品力の高さと店舗の存在、そしてこの高品質なコールセンターは絶対的な強みになっていく。
たとえばECサイトのデータとコールセンターの管理画面を統合できれば、「このお客様はよく定期購入のページを見ていて、一昨日ECサイトで購入しようとしたけど、途中で離脱している」といった情報を確認しながら、より密な接客ができます。先々、LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)向上の面でも良い影響が現れるでしょう。
ですが、この実現をコールセンターの部門長に依頼しても、現業と並行して行うのは難しい。そこで、安井さんのように自由に動けて背景を理解できる人材が横軸で組織間をつなぎ、長い時間軸で組織改編に取り組んでいく。社長室が担うのはそういう役割です。
各部署の“最適解”を、どうマネジメントするか
――安井さんは外資系コンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーからオルビスに転職しました。オルビスの面白さをどういうところに感じていますか?
安井:最も魅力を感じているのは、組織全体に根付いている仕事への向き合い方です。オルビスの社員は、役職や立場に関係なく、自分の仕事に誇りを持ち、決して他人事にせず徹底的に自分事化していく。そして、その根底には必ず「お客様にどのように価値を届けられるか」という視点があるんです。
前職では、いわゆる“超大手”と呼ばれる企業をクライアントにする機会も多くありましたが、そこでの議論は、効率化や数値目標の達成に向けて自分たちが何をすべきか、に終始することがほとんどでした。ですがオルビスでは、数字の話をする時でも「このお客様の課題をどう解決できるか」「この施策でお客様に本当に価値が届くのか」という視点が常に存在します。役職や立場に関係なく、皆が自分の仕事に誇りを持ち、お客様視点で考え抜く姿勢は、オルビスならではだと感じています。
また、前職はプロジェクトベースでの関わり方で、2、3ヶ月でクライアントが変わっていました。ですが、オルビスの場合はお客様視点という本質的な考え方にこだわりながら、より長い時間軸で事業に携わっていけます。自分の行動や立てた戦略に責任を持てる、という意味でも面白さを実感していますね。

――オルビスは商品企画やマーケなど、各部門で専門性を高める働き方もできますが、「社長室」ではどのような力が身につくと考えていますか?
中俣:ひとつのプロジェクトを通じて複数の部門と関わり、組織全体の価値を高める方法を考える。その過程で、目標設定から実行、成果検証まで、一気通貫で経験できると思います。物事を短期と長期の両軸で考えるため、経営者視点が身につきます。 意思疎通の場面では“コミュ力”のような属人的なスキルに頼るのではなく、組織としての正しい情報伝達の仕組みを作っていく経験も積めます。これらは社長室でしか得られない学びです。

安井:社長室では、今夏発売となる『オルビス ザ クレンジング オイル』の全体統括もしています。オルビスのように、全体がひとつの価値観で括られているブランドは、新しいラインや価格帯を増やすときに、見え方がブレると築き上げてきたブランド価値全体に影響が出てしまいます。だからこそ、各部署が出した“最適解”をどう統合するかもとても重要だと実感しています。
重要度の高い事業課題ほど、部署を跨がないと解決できないものです。バリューチェーンを自社で保持しているオルビスの環境下だからこそ、本質的な課題解決能力が身につけられる感覚がありますね。
中俣:改革を進めるうえで「衝突」は絶対にあります。ですが、重要な学びの機会になると考え、自身の成長につなげていってほしい。オルビスは、各部門をマネジメントする“職能リーダー”は十分に育ってきています。今後は、安井さんのように事業全体を担える“事業リーダー”も育てていきたいと思っています。
「すべてのお客様に」を、本気で取り組む面白さ
――おふたりとも他業界での経験を経て社長室に参画していますが、改めてオルビスの、そして化粧品ビジネスの可能性をどこに見ていますか?
中俣: オルビスは2024年、低価格帯スキンケアシリーズ『ORBIS SHOT PLUS(オルビス ショットプラス)』の発売と、5000円以上の価格帯の強化という、一見相反する戦略を打ち出しています。現在のスキンケア市場では、1500円以下か1万円以上の価格帯が好調です。1500円以下のマーケットでは、化粧品メーカー以外の企業も存在感を示している。
一般的な化粧品メーカーは利益が出にくい低価格帯には参入せず、1万円以上の高価格帯で勝負するのがセオリー。原価を抑えて粗利を高くするマーケティングを行い、その総量で会社の損益計算を判断するビジネスモデルを取るのが普通です。
しかしオルビスは、化粧品メーカーが避けるような全方位的な展開にも積極的に挑戦している。一人ひとりの持つ力を引き出し、多様な美しさや可能性が広がる“ここちよい社会”の実現を本気で目指しているから、「すべての方に価値あるスキンケアを届ける」チャレンジが必要だと考えるんです。最近D2CだけではなくBtoBを強化しているのは、そうした理由からです。

――「すべての方に」という、ある種“きれいごと”になりやすいテーマに、本気で取り組んでいる、と。
安井:2018年のリブランディング開始以降、オルビスの市場における存在感は少しずつ変わってきていて、現在は3000~5000円の価格帯で競合しています。そこを主軸にするのは今後も変わらないと思いますが、ポジショニングは動かさず、価格に幅を設けることで包括できる丸の大きさを広げていくことが「一人ひとりの美しさや可能性を見つめる」オルビスの方向性になるのかな、と。オルビスじゃないと実現できないチャレンジだと感じています。
中俣:化粧品業界はコロナ禍で打撃を受けたものの、コロナ前の水準に戻りつつある。今後もマーケット自体が縮小していくとは思っていないんです。ただ、かつては「みんなが持っているから私も」という横並び志向が強かったですが、今は「自分にとって本当に価値があるものに投資する」という個別化された価値観へと変化してきています。つまり、どうでもいいものは、淘汰される。
そうした変化の中で、オルビスは一人ひとりに寄り添ったスキンケアの提案を通じて、新しい顧客体験を創造していきたい。それには、既存の常識にとらわれない発想と、それを実現できる組織の力が必要です。社長室がその原動力となるよう目指していきます。

取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
オルビスでは現在、一緒に働く仲間を募集しています。少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらからご連絡ください。
皆様のご応募、お待ちしております!
※本記事内容は、公開日(2025年3月10日)時点の情報に基づきます。
Profile
中俣 博之(Nakamata Hiroyuki)
2019年に株式会社STARTを創業。グループ内ではインターネット決済事業、メディカル事業(病院経営)、D2C事業、ベンチャー投資事業などを展開。グループ外では上場企業からスタートアップまで6社の社外取締役を兼任。同社創業以前は、DeNAのゲーム部門の事業部長、LITALICO社の経営企画/HR/新規事業/マーケティング担当の取締役などを歴任。2023年8月より取締役としてオルビスに参画。
安井 彬磨(Yasui Akima)
マッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒入社し、約2年半さまざまな企業のコンサルに従事。2024年11月にオルビスに入社。社長室立上げメンバーとして、組織の垣根を超えたプロジェクト型の課題解決に取り組む。