新しい行動指針「オルビススタイル」が誕生。今、改めて“お客様視点”を明言する理由とは?
JOB&CULTURE
こんにちは。採用広報の仁尾です。2023年12月、オルビスは社員一人ひとりに求める新たな行動指針「オルビススタイル」を表明しました。
もともと社内には、2018年のリブランディング開始時から掲げてきた「オープンマインドで未来志向なカルチャー」を醸成するための行動指針「オルビスマネジャースタイル」が存在していました。
5年経ち、行動指針が浸透したと思われるタイミングで、なぜ刷新する必要があったのでしょうか。そこにはどんな狙いがあり、何を実現しようとしているのでしょうか。「オルビススタイル」の策定や運用方針の決定に深く関わってきた、HR統括部部長の岡田悠希さんに話を聞きました。
成果が出た今だから、行動を見直してさらなる進化を目指す
――なぜ「オルビスマネジャースタイル(以下、OMS)」をアップデートしようと考えたのか、背景を教えてください。
その前に、OMSが生まれた背景をお伝えさせてください。 そもそもOMSは、オルビスが構造改革に取り組む上で、社員の行動や組織のカルチャーを変えていくために誕生しました。
当時のオルビスは、いち早くデジタルマーケティングを取り入れたD2Cブランドとして、500億円規模の企業に成長していました。ただ、成長の反動か、蓄積してきたお客様の購買データをもとに「こうすれば高い反応が得られる」といった正解パターンがある程度決まっており、そのPDCAを効率よく、速く回すことが重視されるようになっていました。
言い方を変えれば「前例踏襲型」の働き方になっており、その弊害として「不確実な領域に踏み込むのは効率が悪い」と、前例のない挑戦には消極的になっていました。
――これからのオルビスをつくる上で、カルチャーや意識を変える必要があった、と。
そうです。そこでOMSでは「オープンマインドで未来志向なカルチャー」の醸成を軸としました。さらに経営層と社員の結節点となる“マネジャー層”に働きかける運用をすることで、広く社員に浸透していくことを狙いました。
――OMSの成果はどのような点だったと考えますか?
新しいアイデアや主体的に意見が出しやすくなったのではないかと思っています。特に、例えばニキビケアシリーズ「クリアフル」のリニューアルや男性向けシリーズ「オルビス ミスター」の誕生に代表される、入社5年前後の若手から経営に影響を与えるレベルの提案が出てきたことが大きな成果です。これは将来のマネジメント候補育成という目線で見ても喜ばしいことでした。
また、OMSで行動指針を打ち出したことによって、マネジャーの行動が指針に沿っているか・いないのかを評価できるようになったことも大きいですね。オルビスの求める行動を取っている人が評価・アサインメントされ、逆にそれを出来ていない人はマネジメントから降りてもらうこともありました。運用開始当初は反発も一部ありましたが、5年たった今では、社内サーベイの結果を見ても「オープンマインド・未来志向」なカルチャーの形成が進んできたと言えます。
――ここまでの話を聞くと、OMSの運用は上手くいっている印象ですが、なぜ今このタイミングで新しくしたのでしょうか。
構造改革の第一段階が終わり、現在のオルビスは、ベストコスメの獲得や限界利益率(売上の中からキャンペーン費用などの変動費を引いた割合)の向上など、ブランドの姿も進化してきました。経営陣はこうした状況を、リブランディング・組織改革の戦略に一定の成果が出ている、つまりは戦略方針は間違っていないと判断しています。
ですが今後、よりお客様に選ばれるブランドになること、そして他社優位性をつくっていくことを考えたとき、これまでと同じ行動を続けていればよいわけではありません。もう一度オルビスが社員に求める行動を見直して、新しい姿勢を打ち出していくタイミングではないかと、今回のアップデートに踏み切りました。
「だれもがすぐにできる」行動で、変化のスピードを上げる
――新しい行動指針「オルビススタイル」には、「未来志向」、「オープンマインド」というこれまでのキーワードに加えて、「お客様視点」が盛り込まれました。どのような意図があるのでしょう。
オルビスはリブランディング前から、外部評価において「顧客満足度1位」を受賞するようなブランドでした。多くの社員は「お客様視点に立っている」という自負を持ちながら働いています。
ですが今の時代は、お客様の価値観や生活の在り方ひとつとっても、ものすごく速いスピードで変化していますよね。私たちが考える「お客様視点」は本当に正しいのか、本当にその変化に追いついているものなのか、という疑問や視点を常に持ち続けなければいけません。より本質的なお客様視点と、それに値する提供価値を追求するため、あえて言及しました。
――他にはどのような点が変わったのでしょうか。
先述したように、OMSは社内改革を牽引する立場であるマネジメント層に対し、リーダーシップの変革を促すことで新しい社内カルチャーの形成を狙うものでした。一方、今回の「オルビススタイル」はカルチャー形成のスピードを加速させることに加えて、世の中の変化のスピードの速さを念頭に置き、戦術の「実行スピード」や「質と量」を引き上げることが目的。社員が一丸となって「顧客価値」を創出する組織になることを目指しています。戦略方針は間違っていない判断であれば、あとは戦術の質と量をどこまで引き上げられるかが重要です。そこで具体的には、以下を意識し変更しました。
①マネジャーだけではなく「社員全員」に向けたものに。
②個人の能力やスキルに左右されることなく意識すれば「だれもがすぐにできる」内容に。
③具体的にどういう行動をしてほしいのか、まで明文化する。
これらポイントは、すべて一人ひとりの行動変化を積層させてスピードを上げようという狙いに基づいています。
行動指針の評価と報酬を連動、その意図は?
――「オルビススタイル」は評価や報酬とも連動しています。その狙いも聞かせてください。
評価連動させるかどうかはとても悩みました。今回の行動指針が誰もが意識すれば行動できる内容にしたため、等級制度を取り入れている私たちの人事制度上、報酬連動する評価として機能するのかどうかなど、悩むポイントは多岐に渡りました。
「カルチャー形成を真ん中に持ってくる」という経営の強い意志にも背中を押してもらい、改めてカルチャー形成と一人ひとりの行動実践とその積層を実現したいことを中心に考えたときには、評価連動がもっともベストだという判断に至りました。自分の何をがんばれば評価されるのか?その「何が」が行動指針になっていることが行動指針の実践と浸透にはやはり重要です。
また、行動指針の実践と浸透を目的としていたため、推奨する行動ができていれば〇で、そうでなければ〇がつかない、というわかりやすい評価を導入しました。とことんシンプルな形にしたのは、継続していく上で運用コストを徹底的に下げるという視点もあります。
――ですが、それだと評価のグレード(差)がつけづらいですよね。その課題はどうクリアしたのでしょう。
「オルビススタイル」という行動評価と連動する先を基本給に設定し、成果評価と連動する先を賞与としました。成果重視の変動幅の大きい賞与と違い、オルビスの基本給は“生活給”という位置づけで、基本的には下がらず、少しずつ上がっていく性質のものです。
「オルビススタイル」の評価は大きな差がつけられないぶん、指針に則った行動を一生懸命発揮してくれている社員に対し、着実にプラスの還元をしていく方法がふさわしいと判断しました。社内からも「分かりやすくなった」という反応が戻ってきています。
多様化するニーズの間を丁寧に埋めていくのがHRのミッション
――今後もオルビスの組織改革は続いていきます。その中において、HR統括部がどういう在り方を大切にし、何を目指していくのか聞かせてください。
「スマートエイジング®」を掲げる企業として、従業員一人ひとりに対しても、持てる力が最大限引き出される働き方や環境を重視していきたいというのが、われわれHRのポリシーです。
例えば「オルビススタイル」のように、意識して取り組めばきちんと評価され、それが成功体験の積み重ねとなっていく。こうしたポジティブなコミュニケーションの仕組みを社内でつくっていくことは、これまでもこれからも変わらない部分です。
働く上での価値観や働き方のニーズはどんどん多様化しています。一方で会社側も、世の中の状況や競合他社の動向など環境変化に合わせて、従業員に求める働き方も変化してくるはずです。どちらも不可逆的な要素なので、変化の加速は避けられないでしょう。
そういう中で、HRは双方の視点を併せ持ちながら、そこに生まれるギャップを想定し丁寧に埋めていくことをより強く求められると考えています。簡単なミッションではありませんが、それが事業成長をする上で重要なタレントマネジメントやウェルビーイングにつながるという意識で、しっかりと取り組んでいきます。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
オルビスでは現在、一緒に働く仲間を募集しています。少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらからご連絡ください。
皆様のご応募、お待ちしております!
※本記事内容は、公開日(2024年5月14日)時点の情報に基づきます。
Profile
岡田悠希(Okada Yuki)
HR統括部部長。2008年ポーラ入社後、2018年からオルビスにて、リブランディングと両軸で戦略人事として採用ブランディング、組織開発、人事制度改革を立て続けに主導。オルビスが掲げる「スマートエイジング®」の提供価値のもと、一人ひとりが自分らしく働ける組織づくりを目指す。2024年より(株)リクルート リクルートワークス研究所発行「Works」の編集アドバイザリーボードを務める。