新代表・山口裕絵が語る、オルビスの今とこれから。一人ひとりの人生に寄り添うために、守ること、変えていくこと
JOB&CULTURE
こんにちは。採用広報の仁尾です。
2025年1月より、オルビスの代表取締役社長に山口裕絵が就任しました。ポーラ・オルビスグループの「ポーラ」からキャリアをスタートし、宣伝部や商品企画部を歴任。
「リンクルショット」シリーズのブランドマネージャーを経て、2021年に同グループの敏感肌の方向けスキンケアブランド「ディセンシア」の代表になり、停滞していた売上を3年で成長軌道に乗せています。
オルビスの舵取り役として新たなスタートを切ってから4ヶ月。これまで外側から見つめてきたオルビスの可能性について、また、中に入ったからこそ見えてきた価値、そして今後について聞きました。
お客様を「数字」ではなく「人」で語る
――山口さんが、社長就任前に抱いていたオルビスの印象を教えてください。
2018年からのリブランディング(構造改革)は、私にとっても印象深い出来事でした。オイルカットやニキビ肌など、これまでの若年層向けのイメージからエイジングケアを中心に据えた方向へ転換。今や「オルビスユー」「オルビス ユードット」などを通じて、エイジングケアに強みを持つブランドのイメージが浸透しました。シンプルにすごいブランドだなと思っています。その印象は内側に入っても変わりませんが、良い意味でのギャップもありました。
――どのような点でしょうか。
オルビスは通信販売からスタートした企業ですから、創業時からのお客様情報を基にした膨大な数値データを扱っています。それにも関わらず、社員がお客様を語るとき、数字ではなく「人」として語るんです。
就任後の部門長面談で、「オルビスのお客様はどういう方たちですか」と質問した際、データを踏まえると、例えば「30代~40代に顧客のピークがある」といった数値的な回答が予想されますよね。ですが、オルビスの部門長たちは「美容の流行は気になるけれど、すぐに飛びつくのではなくじっくり検討したい方」など、身近な人について話すような表現で答えてくれることに驚きました。
また、「お客様ではないのはどういう人か」と聞くと、真剣に悩みながら全員が「お客様ではない人はいないです」と答えました。ポーラは最先端のエイジングケアに興味がある方、ディセンシアは敏感肌の方向けと顧客像が明確です。一方、オルビスでは「スマートエイジング」というブランドの提供価値を基軸に、自分らしくありたいすべての人に寄り添おうとしている。年齢を問わず、幅広いお客様に寄り添おうとする真摯な姿勢や懐の広さを実感しました。
お客様との関係深化、鍵は「人生の節目」を見つめる視点
――新代表として、これまでを引き継ぐ部分、反対に変えたい部分はありますか?
社長交代というと、何かを大きく変えていくイメージがあるかもしれませんが、オルビスの場合はリブランディングを経て業績は2桁の増収・営業増益を2期継続して好調に推移しており、必ずしも大きな変革を目指す必要はありません。
小林前社長の時代から、「スマートエイジング」を体現すべく、幅広い価格帯の商品開発や、店舗、ドラッグストア、バラエティショップといったさまざまな販売チャネルの拡大という戦略に取り組んできました。それらは継続しながら、プロダクト面では自身の経験も活かしていきたいですね。
――具体的にどのように活かしたいとお考えですか?
オルビスは品質の高さに加えて、「人の心に寄り添う」という素晴らしい哲学を持っています。これからは、その哲学がさらに商品そのものに体現されるよう、お客様の人生の転機に寄り添った商品ラインの強化や、「使う人の不安や迷いに応える」という視点での処方開発など、ストーリーと機能が一体となった商品開発を推進していきたいです。
マーケティングでは、よく5歳、10歳刻みでお客様をセグメントしますが、オルビスの場合、東洋医学の考え方に基づいた「7歳周期」の視点が合っているのではないかと感じています。
例えば、女性は14歳頃からホルモンの変化による肌トラブルが起こりはじめ、35歳頃には出産や家計の変化に直面、49歳頃に更年期の変化を経験します。10代はもちろん、大人になっても新しい壁が待っている。肌や体の変化だけではなく、人生の節目にある不安や迷いに寄り添い、その方の「自分らしさ」や「ここちよい状態」を取り戻す手助けをすることが、“生涯ブランド”としてのオルビスの価値をさらに高めていくのではないか、と。これは、お客様をデータではなく「人」として捉えて向き合っている、オルビスだからできることです。
従来のマーケティングの考え方に、4P(製品、価格、販路、プロモーション)がありますが、オルビスの場合「パーソン(Person)」を加えた5Pという考え方を発展させていきたいです。先ほどの話は、まさにこの「パーソン」という視点の具体化で、オルビスのようにお客様を「生活者」として捉え、寄り添うブランドにとって、この視点は不可欠だと考えています。
――オルビスの強みである「お客様視点」をさらに進化させる、ということですね。
そうです。私たちが目指すのは、お客様に「オルビスと共に」と思っていただけること。お客様の生活の一部としてオルビスが自然に溶け込み、日々のケアの習慣が生活リズムや幸福感と結びついている状態をつくりたいですね。
「お客様視点」は、オルビスが創業以来大切にしてきた価値観であり、強みです。今後は、ロイヤルカスタマーの声を聞く姿勢は維持しつつ、「まだオルビスを選んでいない人」の声も積極的に取り入れ、新たな気づきを得てほしいと考えています。
「サイエンス」と「心」をつなぐ、クレンジングオイルに込めた思い
――今年5月、1987年の創業以来初となるクレンジングオイル「オルビス ザ クレンジングオイル」が発売となりますが、ここにもオルビスの強みが体現されていると聞いています。
オルビスはサイエンスを二つの目的で活用してきました。一つは製品の品質を高めるため、もう一つは人の心に寄り添うためです。
長年「オイルカット」のイメージが定着していたオルビスですが、オイルカットが誕生した1980年代当時、油に由来する事件や油焼けなどの肌トラブルが発生するなど、「油」に関する社会不安が広がっていました。
そうした中にあって、オルビスは社会や生活者の不安や機微を読み取り、オイルを使わない選択肢を提示しました。つまり、オイルカットはあくまで手段であり、本来の目的は一人ひとりの気持ちに寄り添い、肌の力を引き出すことにあります。今回のクレンジングオイルも、その目的を達成するためのアプローチのひとつなのです。
近年、クレンジングオイルはメイク落としの定番となり、クレンジング利用者の4割がオイルクレンジングを使用、過去の使用経験まで含めると約8割もの方がオイルクレンジングを使ったことがあるというデータもあります。
しかし同時に、使った後の乾燥が気になるという声も非常に多いんです。私自身も年齢を重ねて肌が敏感になってくると「潤いを取りすぎるのではないか?」という不安がありましたが、この新商品を使ってみて乾燥感がないのに驚き、抱いていた印象が変わりました。これまでにないオイルクレンジング体験を提供できると思います。
「すべての人に」に挑戦する、オルビスのこれから
――就任から4ヶ月、山口さん自身は今どのような気持ちですか?
ポーラ、ディセンシアと、ある種お客様が限定的なブランドから、オルビスというあらゆる方へ価値をお届けできるブランドの代表となり、自分自身も挑戦だなと感じています。
私がポーラで「リンクルショット」を手がけていた頃、印象的な出来事がありました。当時、「リンクルショット」は人気すぎて生産が追いつかず、工場は交代制で24時間稼働していました。お客様に商品を届けられているのは工場で働く方々のおかげなので、工場に赴きお祝い会をしたんです。そのときに、現場の方々から「ヒットはとても嬉しい。でも私たちには高価格でなかなか手が届かない」と言われたことがずっと引っかかっていました。当時、リンクルショットは1本15,000円ほど。ブランドの特性上、この価格帯はしょうがないのですが、心に“しこり”のように残っていました。オルビスの一員になり、「すべての方に」を本気で追求していける環境にあること、とても嬉しいですしワクワクしています。
――そんなオルビスで、山口さん自身も、挑戦の中にある、と。オルビスで働く最大の魅力はどこにありますか。
「人の心と科学をつなぐ」という価値創造に携われることだと思います。社長となりまだ日は浅いですが、冒頭でもお伝えしたとおり、オルビスのメンバーが数字だけでなく、その向こうにいる人の気持ちや生活を見つめる姿勢に感銘を受けました。
オルビスという組織の強みは、データに基づく左脳的な思考と、人の気持ちを理解する右脳的な思考の両方を大切にしていることです。私たちは数字だけを追うのではなく、またイメージだけで判断するのでもなく、この右脳と左脳を行き来しながら、数字から見えてくる顧客像を描き、その顧客像が実際のお客様やリアルな生活者の皆さんと整合するか検証しています。よく両者はトレードオフだと考える人もいますが、そうではありません。この両方のバランスを取ることで、お客様の本当のニーズを捉えた商品開発やサービスが実現できるのです。
両者のバランスを取るのは簡単なことではありませんし、ほとんどの企業はできていません。でも、だからこそ挑戦する価値があります。一時的な効率だけを追求しても持続的な成長は難しいですし、かといって理想だけを追いかけても市場での競争力は維持できません。両者をどう両立させるかが、これからの成長の鍵であり、やりがいでもあると思います。
ポーラ・オルビスグループが100年かけて磨いてきた高い技術を、できるだけ多くの方にお届けすること、それが私たちの仕事の意義であり、使命だと思っています。「お客様視点」と「組織力」を大切にしながら、仲間たちとこれからのオルビスをつくっていきたいです。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
オルビスでは現在、一緒に働く仲間を募集しています。少しでも興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらからご連絡ください。
皆様のご応募、お待ちしております!
※本記事内容は、公開日(2025年4月23日)時点の情報に基づきます。
Profile
山口 裕絵(Yamaguchi Hiroe)
1999年にポーラ化粧品本舗(現ポーラ)に新卒入社し、宣伝部や商品企画部を担当。日本初のシワ改善薬用化粧品「リンクルショット」の商品開発やブランドマネージャーなどを経て、2018年に執行役員、2021年にポーラ・オルビスグループの敏感肌の方向けのスキンケアブランド「DECENCIA」の代表取締役社長に。2025年1月からオルビス代表取締役社長に就任。